5年が経ちますが(平成9年度)
山梨県弁護士会  柴山 聡

1 はじめに
 山梨県弁護士会に所属し、弁護士5年目が過ぎようとしている私は、司法修習第45期で、現在も勤務弁護士です。山梨県には弁護士が49人いますが、4月には3名の入会が予定されており、これからも段々増えていくのではないかと思っています。
 私は、生れも育ちも東京で、当地は修習生になるまでは縁もゆかりもないところでした。第三希望で書いた当地に配属されたときには、よもや自分がここに根を下ろすことになるとは思ってもいませんでした。
 山梨県には、甲府地方・家庭裁判所、同都留支部(乙号)と、甲府・都留・鰍沢・富士吉田の4つの簡易裁判所があります。49名の弁護士のうち、都留支部の管内に事務所を置くのは1名だけであり、同支部の事件のうち半分くらいは東京の弁護士が受任しているという実情です。
 県全体で人口約80万人、うち県都甲府が20万人といった規模の中で、年間の地裁民事新受件数は、本庁で500件前後、都留支部で100件前後といったところでしょうか。

U 業務概要
 私としては、特に分野を選んでいるわけではないので、地方にいるごく一般的な弁護士だと思っています。大半を一般民事・家事事件が占め、国選を含め2、3件の刑事事件を常時抱え、公共の法律相談会に月1、2回程度出かけるといった具合です。破産管財人にも2件選任されています。強いていえば、保険会社の仕事をしているので、事故の示談交渉の件数がやや普通より多いかなという程度です。事務所は私とボスの2人体制ですが、まあ世間並みに事件数はあると思っています。
 私が弁護士になり立てのころは、まだ弁護士会館がなく、相談者が弁護士会に訪れると会の事務員さんが個別に事務所を当たって時間のとれる先生に相談をお願いするということをしていました。当時時間の余裕があった私のところへはかなりの人数が廻ってきたものでした。平成7年に会館ができてからは法律相談センターも設置され、毎日午後、名簿に従って弁護士1名が会館に待機しており、相談の担当をしています。相談者の人数に関わらず、担当弁護士には1回1万円の日当が支払われます。
 国選事件については、本庁・支部・簡裁合わせて年間20件くらいが廻ってきます。若手の先生は皆同じくらいやっているようです(国選の選任は、東京などと違い、裁判所からの電話による一本釣りが行われています)。

V 会務など
 会員数が少ないので、会務に費やす時間は大規模単位会と比べどうしても多くなります。所属委員会の数も4つや5つは当たり前といった具合です。現在私が所属しているのは、単位会のものとしては、刑事弁護センター、消費者問題対策、司法修習、広報、民暴センター、業務妨害対策の各委員会、それから関弁連の民暴委員会、日弁連の情報問題対策本部です。しかし所属は多くてもみんなで手分けして担当するので、特に負担感はありません。それに、委員会の機会に、他の事務所の先生から事件処理も含め色々なことを教えてもらえます。昨年は当地で民暴大会が開催されましたが、文字通り全員体制で開催にこぎつけました。また、修習生が毎年8人配属されますが、担当に任せっきりではなく、合同修習や修習旅行など全会員の協力で行われています。
 その他刑事当番弁護士が年間7、8回、法律相談担当(先に述べた会主催のものと公共の無料相談とを併せて)が月に1、2回廻ってきます。
 会費は、日弁連のものと併せて月額¥71,000と他会よりは高いと思いますが、まあ、月に国選1件やれば払える程度ですので。

W 私生活
 私の自宅は、事務所まで自転車で5分弱のところにあり、また裁判所は事務所の真ん前です。電車に揺られて通勤ということもなく、平日でも事務所と自宅の往復だけということはありません。
 弁護士になってから始めたゴルフの練習場が車で10分以内に3ケ所あり、また、自宅と事務所の間にはスナックが数百軒ノキを並べる繁華街があります。他の先生も、平日テニススクールやスポーツジム、パソコンや英会話の教室に通ったりと、時間を有意義に使っているようです(夏場早朝ゴルフで1ラウンドしてから、午前10時の弁論に来るという先生もいます)。東京の友達などで、片道一時間以上の通勤の上に、裁判所にも地下鉄で行くなどと聞くと、大変だなあと思います。

X 私、そして山梨県弁護士会の将来
 私が弁護士を目指したのは、中学3年のときでした。とある小説でカッコいい弁護士が主人公で、自分も将来こういった職に就きたいと思ったのです。いわゆる企業法務などよりも個人の相談者相手に町医者のように仕事をしていたく、今のところ自分の選択は間違っていなかったと思っています。今30歳ですが、これからは理屈だけでなくもっともっと説得力を持った弁護士になれたらと思います。うちのボスが、訴えを起こされた相談者の言い分を聞いた上で、「そうは言っても負ける可能性が高いから、最後まで譲れないのであれば受任できない。」と一言言うと、口角泡を飛ばしていた相談者が、「和解金額も含めてすべて先生にお任せしますから、是非お願いします」と頭を下げる場面を何度も眼にしました。他方でチンピラが別室で騒いでいたときに入ってきたボスが、開口一番「ここは俺の事務所だから、つべこべ言う前にまず騒いだことを謝れ」と言って、言い分を聞く前に詫びを入れさせたこともあります。自分のボスながら、カッコいいなと思います。
 さて、県弁護士会の会員数は冒頭記載したとおりですが、今後司法試験合格者の増加に伴い、会員数も徐々に増えてくると思います。しかし、法律相談センターでの相談者の状況などを見ると、まだまだ弁護士の需要はいくらでもあるな、というのが実感です。特に都留支部管内は、前述のような状況ですので、潜在的にはかなりの件数があると思います(場所のイメージが湧かない人がいるかもしれませんので、参考までに。新宿から特急に乗って30分で八王子、1時間で都留支部管内の大月、1時間半で県都甲府です)。
 本稿をお読みになって山梨で開業するのもいいかなと思われた方には、山梨県弁護士会では諸手を挙げて歓迎する用意のあることを付言して、筆を置くこととします。