| 熊谷支部に法律事務所を開設して(平成11年度) |
| 埼玉弁護士会 矢部 喜明 |
T 私は、修習45期で、平成5年4月、埼玉弁護士会に登録し、浦和地方裁判所熊谷支部管内で弁護士を始めました。 実務修習は前橋で受け、約1年4か月の問、埼玉の北端にある本庄市の自宅から、前橋(裁判、検察修習)、高崎(弁護修習)へ通勤していました。 前橋修習において、群馬弁護士会の多くの先生方から、丁寧な指導を受けることができ、また、ゴルフ、テニス、スキーとレジャーの面でも恵まれ、楽しく、かつ、充実した修習生活を送ることが出来ました。そのせいか、修習を始めた当初は、法曹三者の中から、弁護士を選ぶなら、都内で、始めようと考えていたものが、いつしか、地方で、依頼者の身近で活躍できる弁護士になりたいと思うようになっていました。 U 実務修習も終わりに近づき、勤務事務所を探し始めましたが、前橋修習であったこと、また、私の住む本庄児玉郡市は、経済活動圏としては、群馬に近かったこと(因みに、新聞の折り込み広告は、高崎市のデパートや、利根川を挟んで隣接する群馬県伊勢崎市のディスカウントショップのものが入っていても、熊谷市のものは殆どありません)から、当初、高崎、前橋を中心に就職活動をしておりました。ただ、本庄市を中心に、地図上に約20キロの円を描くと、裁判所としては、前橋地裁本庁、同高崎支部の外、浦和地裁熊谷支部もあったことから、熊谷支部での就職も考えるようになりました。 そして、研修を修了した後、平成5年4月から、埼玉弁護士会に登録し、浦和地裁熊谷支部管内にて、勤務弁護士として、弁護士を始めることになりました。 V 私が、平成5年4月埼玉弁護士会に登録したとき、熊谷支部の会員は、私を含め21名でした(秩父支部会員3名を含む。なお、埼玉弁護士会規則によれば、浦和地裁秩父支部管内に事務所をおく会員は、弁護士会秩父支部が設立されるまで、弁護士会熊谷支部に所属することが出来ることになっております)。しかも、熊谷支部会員で、私に一番近い期は、32期で、13期も離れておりました。しかし、その後、平成10年まで、毎年、1名ないし3名の支部会員の増加があり、現在では、熊谷支部会員は27名になっており、埼玉弁護士会員286名(平成11年7月1日現在)のうち、約10パーセントを熊谷支部会員で占めています。 また、浦和地方裁判所熊谷支部管内の人口は、約90万人であり、同秩父支部管内の人口は、約12万人となっております。そして、埼玉県全体の人口が、約690万人ですから、埼玉県全体に対する熊谷支部管内の人口比率は、約15パーセントと言うことになります。 従って、当会会員は、本庁、川越支部等に偏在しているということは否定できないものと言えます。 W 統計によると、平成9年の熊谷支部の訴訟事件数は、647件であり、破産事件件数は、285件でした。 また、先日、私が依頼を受けた国選刑事は、平成11年12月7日付で起訴された事件でしたが、平成11年(わ)第462号の事件番号が付されておりました。 そして、熊谷支部の裁判官は、支部長1名、判事(含む特例判事補、内1名は秩父支部長を兼任)4名、判事補2名、簡裁判事1名であり、ある裁判官は、年間500件近い刑事事件のうち、単独事件をすべて受け持ち、しかも、秩父支部長を転補し、週1・5回、秩父支部にて、一人で、民事、刑事、家事を処理しております。このような裁判官の忙しさを見るにつけ、浦和地裁熊谷支部は、多忙庁であることは間違いないと感じております。 また、熊谷支部の弁護士が多忙であることも間違いないと思います。例えば、当番弁護士は、熊谷支部において、県北を独立して担当しており、支部会員には、月1回の割合で、当番が回ってきます(ただ、当番日の派遣依頼そのものは少ないので助かっています。)また、弁護士会熊谷支部主催の有料法律相談は、現在週3コマ(火曜午前2コマ(2時間枠)、金曜午後1コマ(3時間枠))が設けられており、支部会員は、年6コマほど、担当しております。 なお、裁判所から、国選刑事事件や、管財事件も多数の依頼を受けますが、その大半を、若手会員が引き受けているという現状があります。即ち、若手会員には、国選刑事を年間20件以上引き受けているものも何名かおります。また、管財事件についても、若手会員のうち、多い人は、年間数件引き受けることもあり、熊谷支部の弁護士の忙しさには、若手会員とベテラン、中堅会員とでは、その忙しさの内容が少し違っているかも知れません。 また、民事訴訟の法廷においては、熊谷支部の会員より、埼玉県南、群馬、東京の弁護士の方の方が多いときもあります。これは、熊谷支部管轄地域の特性として、北は、群馬に近く、また、熊谷支部管内で最も大きな都市は、熊谷市ですが、ここを南に一歩下がれば(上れば?)浦和本庁管内の鴻巣市に入り、熊谷市自体、熊谷支部管内からみれば、南の端にあることから、管轄地域内での人の動き、取引に劣らず、都内、県南、群馬等の周辺地域との経済活動、人の動き、交流も活発であるということによると思われます。そして、つけ加えれば、依頼者である法人、事業者の本社、支社が管轄外の都内、県南に多いこと、個人としての依頼者の中にも、地元の弁護士より、県南、都内、高崎等の(熊谷に比べ、より)大都市の弁護士を望む傾向があることも影響しているものと推測されます。 このように熊谷支部は、会員数だけみれば、相対的には弁護士過疎の問題が皆無であるということはできないかも知れません。そして、地元の弁護士が地元市民に対してリーガルサービスを提供するというのが、本来の原則であることは間違いないことと思いますが、熊谷支部の場合、管轄外から来られる弁護士の活躍も盛んであることから、もし、熊谷支部に弁護士過疎問題があるとしても、他の地域に比べ深刻なものではないということができると思います。 X 私自身は、勤務弁護士を3年間経験した後、独立し、間もなく4年目を迎えようとしており、これまで、何とか事務所を維持してきました。また、熊谷支部の会員は、1年、2年の勤務弁護士経験を経て独立した方が大半であり、中には、修習後、直ちに独立した方もおり、都内の弁護士の方に比べ、独立し易さという点において、恵まれていると思います。 ただ、私自身は、国選刑事事件、管財事件、破産申立事件の割合が多く、経済的効率の悪く負担の重い(?)これらの事件によって、事務所経営が助けられていることは否定できません。今後は、経済的効率の比較的良い(?)一般民事も、開拓していかなければと思っております。そして、この点、一若手弁護士にとって、熊谷支部管内のベテラン、中堅会員、熊谷支部外の諸先生の間に割り込んでいくことは、なかなか大変なことでないかという思いもありますが、むしろ、私自身にも、弁護士が身近な存在と感じられるよう、努力していくことが不足しているかなと感じるところも多々あります。 Y この原稿を書きながらも、スキー場のオープン情報が入ってきており、熊谷支部、特に私の住む本庄市は、群馬県、長野県等のスキー場に近く、初スキーは、何時、何処にしようなどと考えております。また、群馬県に近いことから、ゴルフ場にも恵まれており、ドライブコースも豊富にあります。もちろん、おしゃれなレストラン、ショップを探したり、また、専門書等を入手するのは、都内に比べ苦労しますが、熊谷支部管内は、田舎過ぎず、都会過ぎず、その点で、日常生活の利便性を感じながらも、自然を近くに感じられるところであり、依頼者との関係においても身近な存在となることが可能であって、やりがいのある弁護士生活を送れるのでないかと思います。 |