新米弁護士顛末記(平成11年度)
山梨県弁護士会  吉澤 宏治

T はじめに
 私は、司法修習第51期であり、平成11年4月1日付けで弁護士登録をした弁護士1年生である。今年は、司法修習生と弁護士という2つの身分を経験することができて(皆、経験するのであろうが)、弁護士業務の難しさと共に楽しみを充分に感じることができたと思う。
 そこで、まだまだ弁護士を語るには未熟であるが、当会管内の状況の紹介に加え、長そうで短かった私の1年間を振り返ってみたい。

U 当会管内の裁判所の状況
 当会管内の山梨県には、甲府地方・家庭裁判所と同裁判所都留支部に加え、甲府、都留、鰍沢、富士吉田それぞれに4つの簡易裁判所がある。
 ここで甲府地方裁判所の規模を紹介しておくと、本庁は民事・刑事各1部ずつの構成であり、単独係は民事で4つ、刑事で3つある。そして、甲府地方・家庭裁判所には所長を含め9名の裁判官がおり、各裁判官が民事・刑事に加え家庭裁判所の事件を掛け持ちしたり、複数の単独係を掛け持ちしながら裁判所が運営されている。
 また、都留支部も、民事・刑事各1部ずつの構成であるが、常置裁判官は支部長1名であり、支部長がほぼ全ての事件を担当している。
 一方、事件数であるが、平成11年1月から11月までの各部の新受件数の概略は、本庁民事部が約563件、同刑事部が約546件、都留支部民事部が約132件、同刑事部が約100件であり、裁判官数に比べれば多少多い程度の数である。

V 当会及び会員の状況〜業務編
 当会の会員数は現在51名であり、全員が実働を行っている。そのうち50名が甲府に本拠を構えており、都留支部管内に事務所を構える会員は1名のみである。甲府市の人口は県内在住者の約4分の1であり、どうしても中央偏在の感は否めないが、都留支部管内は東京から近いということもあり、東京の弁護士の進出によりどうにかやりくりができているといった状況である。今後は北部や南部の弁護士過疎をどう解消するかが課題であろう。
 会員の業務内容は、皆多種多様である。一般的な地方会と同じく、特に専門に分化しているということはない。やはり一般民事事件(訴額は10万円程度から数億円に至るまでバラエティーに富む)が中心となるが、企業法務的な仕事から、調停事件や家事事件まで皆広く手がけている。一方、刑事事件も国選が名簿順に廻ってくるため、ほとんどの会員が年に10件から20件程度の刑事事件を処理している。ただ、少年事件の受任件数はあまりないようである。
 また、当会では、半強制登録制の名簿順に当番弁護士や各種法律相談(会館における有料法律相談や公共の無料法律相談等)が割り振られるため、1番登録の早い弁護士から私まで平等に担当することとなっている。なお、最近は、当番弁護士が1日1件程度、法律相談が1日5件程度とその件数が著しい増加を辿っており、会館における相談時間の延長(従来の3時間から4時間へ)などの対処がなされた。

W 当会及び会員の状況〜会務編
 当会は会員数が少ないため、どうしても各会員にかかる会務負担は大きくなる。会務の中心となるのはやはり委員会活動であるが、当会の委員会に限っても、ほとんどの会員が4つ、5つといった委員会に所属している。ただ、皆平等に会務活動を行っているため、バランスのとれた委員会の運営になっていると思う。
 当番弁護士や法律相談の状況は先に述べたとおりである。
 その他、当会では定期的に裁判所との協議会・懇談会を開催している。現在中心的に動いているのは、民事実務協議会、執行実務協議会、そして破産実務協議会の3種類であり、毎回活発な意見交換が行われている。
 また、本年度は司法改革の動きが活発になると共に、弁護士の進出分野の増加に伴い、会内での勉強会も多数開催された。

X 新米弁護士の活動状況(本稿作成時現在)
 私は、地元山梨県にて、弁護士登録をすることとなった。私の所属する事務所を紹介させてもらうと、私を含めて3名の弁護士がおり、それを4名の事務スタッフが支えてくれている。事件処理をほとんど理解していない新米弁護士にとって、これほど心強い相談者はいなかった。嫌な顔を見せず、初歩から指導してもらえたことに非常に感謝している。
 事務所の話題が出たことなので、まず事務所における業務活動を紹介する。
 私も、他の会員と同様、一般民事事件を中心として、刑事事件、家事事件、調停事件、示談交渉など様々な分野を経験した。ただ、振り返ってみると、一般民事事件以外では、多重債務者の債務整理が10件弱と一番多かった印象である。
 事務所における仕事は、4月当初、起案を添削してもらい、ボスや兄弁と共に法廷に行くというのが一般的であったが、最近では徐々に仕事を任され、添削を経ない書面を提出したり、一人で法廷に行くことも多くなった。今後はより責任が増すと思われ、より自覚を持って仕事をする必要があることを痛感している。
 次に、事務所以外の業務活動状況を紹介する。
 まず、登録後間もない4月7日に、初めて法律相談を担当した。会館の有料法律相談であった。相談前に先輩の会員から「弁護過誤にならないように気をつけろ。」と厳しい激励をされ、極度に緊張して望んだ法律相談であったが、兄弁に電話で相談するなどしながら、間違いのないよう一言一言に気を付けて、どうにか無事に相談を終えることができた。他会では、1年目の弁護士は法律相談を担当しないところもあるようだが、今考えると弁護士として活動する上で貴重な経験を早い時期にできて良かったと思う。結局その後、法律相談会の担当を行ったのは、公共のものを含めると20回程度である。最近は、幸か不幸か、徐々に慣れてしまった気がしている。
 その直後の4月10日には、当番弁護士も初めて経験した。通訳人の都合で土曜日であったため、警察署側からのかなりの抵抗を予想していたが、意外にあっさりとOKが出て驚いてしまった。接見では、マニュアルに沿って、伝え忘れがないように気を付け、30分程度で接見を終了した。その後、当番弁護士として出動したのは、6件程度である。
 その他事務所以外の活動としては、国選弁護がある。私がこれを初めて経験したのは、5月10日前後で、事件は簡裁の窃盗事件であった。初めて一人で立つ法廷であることと、修習時代お世話になった裁判官の前であったことから必要以上に緊張してしまったが、何とかこなすことができ、裁判官からは及第点を頂けた。
 最後に、会務活動について紹介する。
 私は、本年度、広報委員会、消費者問題対策委員会及び刑事弁護センター委員会の3つの委員会に所属していた。これらの委員会はどれも、1か月に1度くらいの割合で活動をしている。ただ、1年目ということで、先輩にフォローしてもらったため、仕事はそれほど多くなく、あまり忙しかったという感覚はない。
 その他の会務活動やシンポジウム等にも、私はできる限り積極的に参加した。今後もこの姿勢は続けていきたいと思っている。
 以上が1年間の活動の概略である。やりがいのある仕事で、有意義な1年間を送れたと思う。ただ、東京で就職した同期に比べればそれほどではないのかもしれないが、いつも体調を崩しており、体力的には厳しかったことは否定できない。2年目以降、仕事は一段と忙しくなることが予想されるが、1年目と同様に丁寧に1つ1つの事件をこなしていきたいと思う。

Y おわりに
 司法改革が叫ばれ、地方会にとっても大きな変革の波が訪れようとしている。法曹人口の増加、法律事務所の法人化に伴う支店設置、法曹一元、弁護士業務の独占解消と、いずれも地方会の将来を左右しかねない重要な岐路に立たされている。これらの問題に対する私の意見はここでは置くとしても、法曹の世界に競争原理が持ち込まれることは否定できないであろう。
 それゆえ、どのような世界となっても対処できるよう、今後は自己研鑽を重ね、多くの知識や人脈といった将来の財産を少しでも多く獲得できるよう努力したいと思っている。
 ところで、平成11年に当会に入会した新会員は私を含め2名であった。(1名は配置換えの会員)今年は、修習期間の短縮により平成11年の2倍の弁護士が誕生するはずで、当会でも2名ほどの入会予定が決まっている。しかし、それでも東京とは異なり、未だ飽和状態とはいえない状況にある。大都市とは異なる魅力のある地方会に興味を持たれている方は、出身の有無を問わず、当会への入会を考えていただけると幸いである。