新潟県上越市から(平成11年度)
新潟県弁護士会  高橋 幸知

T 当地で弁護士になった経緯
 私は昭和29年に新潟県で生まれ、新潟県で育った。司法修習は第41期であり、現在、新潟県上越市で弁護士事務所を開業している。
 私は、昭和53年に大学を卒業後30歳まで東京で会社勤めをしていた。30歳で会社勤めを辞めた訳であるが、その一つの理由は、東京という大きな都会で暮らすことが自分には似合わないと思うようになったからであった。そこで、司法修習を終わると、地方都市で弁護士をしたいと思った。最初は長野県長野市で3年間弁護士事務所に勤務した。平成元年から平成3年のことであった。そして、平成4年に当地である新潟県上越市で独立して開業した。長野市で開業することも考えたが、長野市は弁護士の数が多くなってきており、上越市のほうが弁護士が少ないこと、上越市のほうが出身地に近いことなどから上越市で独立することにした。

U 上越市というところ
 新潟県上越市は旧高田市と旧直江津市が合併してできた市である。そこで、裁判所の名前は合併前の高田市にちなんで新潟地方裁判所高田支部となっている。
 上越市は、かつて上杉謙信が居城を構えていたことで有名であり、また、市の中心には徳川時代に築かれた城が残っている。
 私が上越市に弁護士事務所を開業することにしたのは、その暮らしやすさが大きな理由である。まずなんといっても、自然環境がいい。海もすぐそばにあるし、山も近い。車で30分も走れば、標高差約1,000メートルの本格的なスキー場にいける。すこし足を伸ばせば、志賀高原や北アルプスも近い。私はゴルフはやらないが、近くにゴルフ場も多い。そして、お米も魚もお酒もうまい。自宅と職場は近いし、裁判所も近い。都会のように通勤地獄もない。土地も安いから家や事務所を建てるにも都会のように高額のお金がかからない。
 このように上越市は非常に暮らしやすい。私のように都会が好きでない者にとっては最適の町である。しかし、上越市に住む場合には、一つだけ自然環境で目をつぶる必要がある。それは冬の雪である。上越市は昔から豪雪で有名である。最近は暖冬で雪も少なくなってきているが、それでも一冬に何回か雪掻きをする必要がある。しかし、最近は道路の除雪はほぼ完璧になされているので、暮らしていくのに困るということはない。
 私の思うには、地方で暮らしたいと考える人にとっては、上越市は非常に暮らしやすい町である。

V 上越市の弁護士事情
 上越市には新潟地方裁判所高田支部があり、その管轄は新潟県の南約三分の一である。西は富山県に接し、南は長野県に接している。裁判所は地裁と家裁の高田支部、高田簡易裁判所、糸魚川簡易裁判所がある。検察庁は高田支部がある。高田支部の管轄の人口は約30万人、上越市だけで約13万人である。
 このように高田支部の管轄は広く、人口も多い。しかし、このように広く人口の多い土地なのに、弁護士はわずか5人しかいない。そして、弁護士5人のうちおひとりはほぼ引退されており、実質的には4人の弁護士ということになる。通常、1万人に弁護士一人が適正という説があるが、高田支部は弁護士が典型的に少ないところである。
 このように弁護士が少ないので、弁護士業務は非常に忙しい。とにかく公的な仕事が多い。国選弁護は年間40件くらいあるし、公的な法律相談もーか月3回くらいは回ってくる。当番弁護士は上越市の弁護士だけではまかないきれず、新潟市や長岡市から応援を頼んでいる。また、破産管財事件も、当番弁護士と同じく、新潟市や長岡市から応援を頼んでいる。破産の申立などは、できるだけ管財人がつかないように、不動産がある場合には、それを処分してから破産を申し立てることもある。また、各種の公的な委員に推薦されることも多く、その公的職務に割り当てる時間も多い。
 私が上越市で開業することを選んだのは弁護士が少ないことも理由の一つであったが、いざ開業してみるとこのように弁護士の数が少なすぎるので、非常に困っているのが現状である。これは上越市の弁護士ならばだれでも思っていることである。このように公的な仕事が多いのに加えて、一般事件の依頼や相談も非常に多く、休む暇がない。ときには仕事がたまってしまい、一か月くらい新規の仕事は取らないこともある。上越市には弁護士が5人いるが、これが少なくとも10人程度になってほしいと思っている。

W 事件の内容
 どの地方都市でもそうだと思うが、地方で弁護士を開業すると、専門的に特定の事件だけをやるという訳にはいかない。民事から刑事まで幅広く対応しないとやっていけない。
 私が民事で現在担当している事件の種類は、貸金、不動産訴訟、離婚、破産等の一般的事件に加えて、先物取引や医療過誤、労働事件から行政訴訟まである。いろいろな事件を担当するので、事件を処理しながら勉強していくことが多い。民事では最近は破産関係が多く、任意の負債整理を入れると年間30件程度になる。また、離婚も多くなってきているという感じである。ただ、事件の難しさは、先物取引や医療過誤、労働事件や行政訴訟を除けば、そんなに複雑なものはないように感じている。
 刑事事件については、私の場合は、圧倒的に国選弁護が多い。私選は少ない。そして、刑事事件でも、複雑なものは少なく、一番多いのは酒気帯び運転が重なり裁判にかけられるというものである。都会と異なり、凶悪犯罪が少ないという傾向があり、否認事件はほとんどないといってもよい。ただ、最近は外国人の刑事事件が増加してきており、地方では通訳人の確保に困難をきたすことがある。特に、当番弁護士で外国人にあたると、通訳人の確保に困ってしまうことが多い。
 私は、都会で専門的に特定の事件を担当するのも一つの弁護士業務の方法であるが、地方都市で、いわば町医者のように弁護士業務を行うのも弁護士としてやりがいのあることであると思っている。

X 最後に
 とにかく上越市は暮らしやすい。住むにはいいところである。そして、弁護士の数が非常に少なく、弁護士の増加が望まれている。弁護士の仕事は余るほどある。ときには忙しすぎて、仕事を断ることも少なくない。上越市の弁護士としては、ぜひ新たな人が上越市で弁護士の仕事をしてくれることを期待している。