| 北海道岩見沢市より(平成11年度) |
| 札幌弁護士会 松村 亮哉 |
T はじめに 私が開業している北海道岩見沢市は、道央空知支庁の支庁所在市で、現在人口約8万5000人、札幌市から北東へJR(特急)で30分、旭川市へ50分と北海道内では比較的恵まれた位置にあります。岩見沢市が所在する空知支庁について少し概観しますと、北海道の中央部よりやや西方の内陸部に位置し、支庁管内全体の人口は約40万人、隣接市町村には美唄市、三笠市、北村等があり、管内9市、10町、2村により構成されています。 道内におけるロケーションはともかく、ここ空知地域が全国でも有数の豪雪地帯、寒冷地であることは紛れもない事実であり、当地に来られれば冬の降雪量や寒さに驚かれる方もいらっしゃるでしょう。ただ、私自身は道産子であり逆に冬に雪がない生活など想像もできません。住めば都とでもいうのでしょうか・・・。 当市での生活は今年8年目を迎えます。 U 刑事事件の傾向について 私の独立開業当時(平成5年4月)には、大先輩の弁護士(8期)がお一人で頑張っておられましたが、私が支部にきてから暫くの間、同先生から国選の刑事事件を分けて頂き、二人で分担して事件処理をしていました。 ところが、平成6年に同弁護士が急逝され、支部会員が私一人となったために、以後現在まで支部の国選刑事事件はほぼ私一人で担当しています。もちろん、受任できない特別の事情がある事件もありますので、その際には札幌の弁護士(国選事件支部派遣登録弁護士)に応援にきてもらっていますが。 平成7年から平成11年まで、私が受任した支部刑事事件の件数は毎年70〜90件くらいで、そのうち中空知の滝川支部(札幌地方裁判所滝川支部)の事件も年間数件受任しています。年度により若干ばらつきはありますが、国選の刑事事件だけでこの数であり、勢い事務所の事件処理も刑事事件関係に多くの時間を費やさざるを得ません。在宅の交通事件や争いのない自白事件が多いことは確かですが、中には完全黙秘、徹底否認事件ももちろんあり、否認事件が重なったりすると事務所はまさにてんてこ舞いの状態になります。 罪名別にみますと、窃盗・強盗等の盗犯事件、覚せい剤取締法違反事件、交通関係事件がそれぞれ30パーセントくらいずつの割合を占めており、かかる傾向は毎年さほど変化がありません。他の地域の実情についてはよく分かりませんが、当支部においては簡裁の窃盗事件が占める割合が大きいことが特徴の一つとしてあげられると思います。またお年寄りの被告人が多いと思われるかもしれませんが、20〜25歳の若年成人の被告事件の方が多く、高齢者より若年者のための弁護活動に苦心しています。ただ、70歳を超える被告人の弁護事件もかなりあり、年齢的には二極化傾向がみられるといえそうです。 私選刑事事件は、現在余りありません。 当番弁護活動については、実質的に常時待機制とでもいわざるを得ない状態ですが、毎年件数はさほど多くなく、何とか継続して担当しています。 V 法律相談業務について もと当地に居られた先生は、空知管内の弁護士過疎地域に足繁くでかけ、さまざまな地域住民の方々の法律相談を受けることをライフワークの一つとされていたそうですが、私も及ばずながら故人の遺志を受け継ぐ形で、地域の無料・有料の法律相談を積極的に担当させて貰っています。弁護士と地域の方々との直接的な接点は、各地で行われる法律相談業務から生まれることが圧倒的に多いと思いますので、冬の交通手段確保の難しさ等の難点は厭わず、夏冬通してあちこちと法律相談会場に足を運んでいます。車の運転でもできればよいのですが、せっかく実務修習中に苦労して取得した運転免許もペーパー化し、知人や親類の車に同乗させてもらったり、JR・バス等の公共交通機関に頼っている現状です。 とまれ、はりきって法律相談業務に勤しんでいる成果があがっているのでしょうか、特に岩見沢市役所における無料法律相談の来訪者数は年々増加しており、平成7年には年間193名だったのが、平成9年には年間234名の相談を受けました。時間的な制約もあり、どこの相談会場においても十分なアドバイスができていない憾みはありますが、これら法律相談を受けて喜んで下さっている方もきっと(多数?)居られると思いますので、やれ「雪の日は嫌だ、寒くて今日は休もうか。」などと泣き言を言わずに、これからも益々頑張ろうと決意を新たにしている次第です。 W 岩見沢市のまちづくりと今後の展望 ここ岩見沢市は、明治17年開基以来、交通(鉄道)の要衝として発展し、農業・鉱業(炭鉱)が盛んでしたが、ご承知のとおり、道内各炭鉱の相次ぐ閉山により、まちの産業、経済活動は近時停滞気味であることは否めません(地元企業の屋台骨を支え続けてきた拓銀も最近破綻してしまいました)。 しかし、最近になって自治体をあげて、市内の情報産業振興・マルチメディア化に取り組んでおり、かかる努力が実を結びつつあるようです。まず、平成9年に岩見沢駅横に市内の情報化推進の基地となる自治体ネットワークセンターが完成し、ここを拠点として市内のほぼ全部の学校・公共施設を結ぶ光ファイバーネットワークを敷設し、各施設をデジタル回線で結ぶことに成功しました。これによって、学校においては遠隔双方向学習システムが利用可能になり、企業に対して積極的に高速回線網を開放することにより、ベンチャービジネスが徐々に育ちつつあるとのことです。その他、市立図書館における端末利用による図書データ高速検索なども可能になりました。 私自身も地元のロータリークラブに入会してささやかながら活動していることもあり、このような情報産業化に向けた魅力的なまち作り構想の一端を垣間見ることができます。このように岩見沢市には、若い方もきっと強く惹かれるようなデジタル・シティ化の芽生えがあり、当市は今後新たな情報産業の全国的拠点として生まれ変わることも夢ではありません(期待を込めて・・・、なお私は決して市の広報担当者ではありません)。 X 私自身の今後 元来が何事にも無精で怠け癖のある性格であり、弁護士として本当に一本立ちできるのか自分自身でも不安を抱いての当地における船出でしたが、このまちと私との相性は悪くないようで、現在までは何とか順調に事務所を維持しています。地元における細やかな人間関係もできつつあり、これからも地域に根をはやした地道な活動をして行けそうです。今では、もう、大都会で弁護士業務をしている自分自身をイメージすることはできません。 ただ、地方で弁護士業務をしている今、勤務弁護士として札幌市で働いていた3年間の経験や札幌の先輩・仲間の弁護士から受けた種々のアドバイスをかみしめ、修習中に東京でみた弁護士像、研修所教官の姿などをいろいろと回想想起したりして、日々自らの戒めとするようにしています。地方に一人居て、独善や唯我独尊に陥らぬようにするのは、ことのほか容易ではないのかもしれませんが・・・。田舎弁護士であることに間違いはないのですが、田舎ならではの味わいある良い弁護士になりたいものです。 最後になりますが、所謂弁護士過疎地域の実情等について、私自身まだ多くを語れる経験がなく、本稿の紙面を借りる資格があるのか何とも心もとない限りです。ただ、今後の抱負として、このまま地道な弁護士活動を続け、遠い将来においてもこの地を選んで良かったと思えるような法曹人生を送りたいと考えています。 |