| 神奈川県厚木市より(平成14年度) |
| 横浜弁護士会 小沢 靖志 |
T はじめに 従来「ひまわり」は弁護士過疎地域の実情を伝える冊子であるとの認識をもっていたため,当初原稿を依頼されたときには厚木市も過疎地と見られているのかと妙な感慨を持ちました。しかし,よくきいてみると関弁連管内各地の弁護士の仕事と日常を紹介する原稿の依頼であるとの説明を受けて,ペンを執っています。 U 自己紹介 私は,48期で,平成8年4月に弁護士登録をして以来6年10ケ月になります。この原稿を執筆している平成14年12月は独立3ケ月目です。 V 私が平成8年4月から厚木市で働いているのは,両親が厚木市の隣町の愛甲郡愛川町に分譲住宅を購入し居住していたことや厚木市が「田舎」に見えたことが理由の一つです。私は高校卒業まで神奈川県川崎市で育ち,その後,両親の転居に伴い2年間だけ愛甲郡愛川町に居住しましたが,それ以降は東京都内で下宿しており,厚木市には全く縁がありませんでした。 修習地は新潟で,その間,きれいな空・うまい空気・身近な自然・うまい食べ物・うまい酒に目覚めてしまい,さらに人が少ないこと=暮らしやすいこととの認識を持ちました。そこで,弁護士登録にあたり,弁護士志望修習生の多数派である大都市志向もしくは本庁志向は全くなく,むしろ修習地の新潟かまたは出身の神奈川県内の中でも「田舎」そうな弁護士の少ない地域や支部で仕事をしたいと考えていました。 丁度,厚木市小田急線本厚木駅隣にある法律事務所で採用していただけることとなり,平成14年9月までお世話になりました。 W ところが,実際厚木市で生活してみると,私が勝手に考えた「田舎」の条件を厚木市が必ずしも満たしていないことが分かりました。 特に,厚木市中心部はすいぶん人が多く,自動車の渋滞も有名です。ただ弁護士の少ない地域であることは間違いなく(厚木市の人口約22万人に対し,弁護士事務所数軒),登録当初,何人かの方々から「ようこそこの町にきてくださいました」と声をかけていただいたのは今でも印象に残っています。 X 事務所の環境について 事務所は本厚木駅から徒歩2分位のところにあり,移動や来訪には便利です。また,駅に近い割には家賃も安く(共益費込み坪8000円),同期の弁護士に聞いてみたところ横浜地裁本庁周辺の同等の法律事務所と比較しても6割〜8割程度の賃料で済んでいるようです。その分,約19坪の事務所を弁護士1名・事務職員3名で広々と使っています。 一番足繁く通うのは横浜地裁小田原支部ですが,相模原支部,横浜地裁本庁,東京地裁はては八王子支部等脚を延ばすこともあります。やはり厚木市で弁護士をするネックは各裁判所が遠いということかもしれません。上記いずれの裁判所に通うにも全て一時間以上みていますが,裁判所周辺事務所の弁護士には想像できないことでしょう。私も当初はかなり負担に思っていました。 ただ,裁判所への通勤時間のロスは,自宅と事務所への通勤時間を短縮することにより日常生活の中で充分元が取れます。私の知っている限りでも厚木市の弁護士の方の多くは徒歩通勤ですし,私も同様です。本庁周辺事務所の弁護士ですと,その近辺に自宅を確保するのはかなり難しいと思いますし,そもそもあまり一般住居がないかもしれません。その点,本厚木駅周辺では少し歩けばすぐ住宅街です。自宅から事務所は毎日行きますが,事務所から裁判所は毎日行くとは限らず,そう考えると,裁判所が多少遠かったとしても,自宅と事務所が近ければ,トータルの移動時間は本庁周辺の弁護士とあまり変わらないのではないでしょうか。 Y 事件について 独立する前は,仕事がほとんどないことを見越して,家族旅行でもしようかと計画を立てていたのですが,周辺の先輩弁護士の方々の見えざる御配慮のせいか,平均して毎日1件くらいは新規相談の電話がかかってきます。もちろん全て受け付けることはできませんが,独立当初は電話帳にも載せていなかったので,本当にありがたかったです。 国選事件は月1件の割合で,管財事件は年に2〜3件程度受任しています。前者は弁護士会の支部から,後者は裁判所の担当部署から声をかけていただいていますが,大変助かっています。実は声はもう少しかけていただいていますが,私の事務処理能力上こなしきれないので,上記件数程度にとどめているのが現状です。 その他,弁護士会・神奈川県・厚木市の各種法律相談にあわせて月3回位出かけていき,許されている場合には事件を受任することもあります。 当番弁護士は1ヶ月半に1回程度のローテーションですが,申し込みが集中した場合に臨時の当番弁護士の依頼が頻繁にあり,平均すると月1回位当番弁護士の接見に出かけています。 以上のような業務状況で,独立してから3ヶ月間のうち非常に少額な事件も含めると月3〜4件の新規受任がありました。 Z 法律業務以外の職務について 法律業務以外の職務を行うことは,他の弁護士や他業種の方々と交流して,孤独感・閉塞感を和らげ,見聞を広めるいい機会だと考えています。 支部は弁護士数が少なく,自然と会務も多く担わなくてはならなくなります。たとえば,平成14年秋から冬にかけて,横浜弁護士会では小田原支部・本部とも模擬裁判劇を開催したのですが,人数の少ない小田原支部主催の裁判劇ですと一人でシナリオ検討係兼会場設営係兼検察官役等何役もこなさなければなりません。本部主催の裁判員劇ではおそらくそのような兼業はなかったのではないかと思います。 ただ会務といってもなんでもかんでもというと消化不良になりますし,そもそも無報酬の業務ですから好きでないとやれません。私は,市民法律講座運営委員をここ数年やっています。これは各自治体と弁護士会が共催する一般市民向け法律教養講座の運営係ですが,各自治体の担当者の方々と市民のニーズをくみ上げながら毎年趣向を凝らして企画していく楽しい仕事です。また,運営のみならず,私自身も毎年講座のうち1コマを担当して,お話しさせてもらうのですが,50〜60名の地元の方を前にお話できるなんて「よそ者」の私にとっては格好の宣伝になると思っています。帰り際に受講者に「来年も楽しみにしてるよ」なんていわれ調子に乗って数年続けています。 弁護士会全体の会務としては,本庁周辺まで出かけていく時間的制約があり,非弁・民暴委員会のみ活動しています。 その他,地元警察署や社会福祉法人の協議会委員にも名を連ね,毎回なるべく弁護士らしい視点での意見を述べようと心がけています。このように地域団体から委員に請われることは弁護士としての職種の特殊性,弁護士数が少ないことから今後増えていくと思います。 [ おわりに 神奈川県厚木市で開業している6年目の弁護士の実態を綴ってきました。厚木市で業務を行う私なりの印象としては,選ばなければ仕事は豊富にあり,それは法律業務以外の業務も同様で,当初目論んだ「田舎」らしさを味わう余裕はほとんどありませんが,それなりに充実していると思います。 |