活気あふれる越谷支部(平成14年度)
埼玉弁護士会  菅沼 博文

T はじめに
 私は,最初第二東京弁護士会に登録して,東京の事務所で5年間イソ弁をした後,平成11年4月に越谷市で法律事務所を開設しました。私は栃木県出身であったため,越谷は全く縁のない土地でした。しかし,東京にも至近であることや,栃木に行くにも不便ではないことなどから,友人の弁護士に勧められるまま,若干の不安を感じつつも何とかなるだろうといういい加減な気持ちで開設を決めてしまいました。
 そのようなわけで,越谷のことは余り詳しくないため,執筆担当としては不適格かと思われますが,私の約4年間の越谷での感想を思いつくまま書かせていただきたいと思います。

U 越谷支部の状況
  1. 裁判所
     さいたま地裁越谷支部は,旧乙号支部であり,地家裁の裁判官7名(内1名填補),簡裁の裁判官3名体制で,埼玉県の東部地域(6市,3町)を管轄区域とし,管轄内人口は,約112万人を数えます。
     そして,同支部の平成12年における民事新受件数は9142件,同簡裁民事は1万2361件,家事調停件数は1029件となっています。ちなみに,平成14年における破産申立事件数は2000件弱となっており,平成12年の約2倍に急増しています。
     これらの大量の事件を上記人的体制で処理をしているのですから,裁判官はもちろん書記官も,本当に目の回るような忙しさであろうと思われます。そのように忙しい中でも,埼玉県内の他の各支部に先駆け,平成14年10月から中間管財(少額管財)を立ち上げるなど,先進的な取り組みをしている裁判所であるというのが私の感想です。
  2. 支部弁護士会
     対して,支部弁護士会ですが,私が越谷支部に登録した時点では(平成11年4月)支部登録会員数は私を含め30人でしたが,現在では(平成14年12月時点)41人(事務所数24)と大幅に人数を増やしています。そのうち,40期以降の弁護士が19名と約半数を占めており,若手の占める割合が急激に増加している状況です。
     支部弁護士会では,毎月1回,支部例会を開き,埼玉弁護士会本会で議論されている議題については当然,支部の運営事項,各種問題の議論や意見交換を行っています。また,各種委員会(法律相談センター運営委員会,企画委員会,研修委員会,総務委員会等々)を設け,支部独自の研修を行ったり,支部旅行の企画,法の日の法律相談その他様々な企画を建て,会員の相互の連絡,親睦,研鑽や社会的活動など,活発な支部弁護士会活動を展開しています。
     越谷支部が活発な弁護士会活動をしていることの一端として,支部独自に管内6市の無料法律相談に支部弁護士を派遣するとともに,支部独自の有料法律相談を週2回行っていることが挙げられます。
     さらに,弁護士が大幅に増えるであろうことは不可避となっていますが,これに伴い近い将来支部弁護士も急激に増加するであろうことを見据えて,これに耐え得るような支部体制を確立するための準備を進めています。
     第1には,弁護士会活動を支えるための施設として,支部会舘の設立。これは,平成15年4月に開設されることが確定しており,会館を使った法律相談の常設はもちろん,法律扶助の審査や市民講座の開設やその他各種企画の立案も含めて,準備が進んでいる状況です。
     第2に,支部会規の整備。これまでは,支部の活動は,支部会員相互の親睦的な側面が強かったため,支部会規もそれに応じた簡易なものでしたが,10年先まで対応可能な支部会規の制定を現在進めており,平成15年5月頃には制定となる見込みです。
     第3に,越谷支部において合議事件を取り扱えるよう,裁判所その他に対する働きかけなどの運動も進めております。
     第4に,地元の濁協大学がロースクールを設置する方向で準備をしていることに伴い,同ロースクールへの協力についても検討課題となっております。
     そして,越谷支部の大きな特徴といえるのが,東京とは異なり,法律事務所同士の横の繋がりが緊密で,事務所の事務局員同士はもちろん弁護士と他の事務所事務局員との関係も親密で,ある意味,越谷支部全体で一つの法律事務所といえるような家庭的な雰囲気があるという点です。2年に1回越谷支部所属弁護士,事務局,家族が参加する支部旅行が開かれているところを見ても,東京等の大都市との違いは明らかです。だからといって,事件の処理で馴れ合うようなことはなく(もっとも,相手方は東京の弁護士の場合が多いということもありますが),お互いに信頼関係を持ちながら事件処理ができるところが非常に大きな長所といえます。
V 業務状況
  1. 冒頭で書いたとおり,越谷にほとんど縁のなかった私は,開設してから数ヶ月間,それまで勤務していた事務所の事件を引き続き処理していた以外には,あまり仕事もなく,暇な1日を過ごしていました。私自身は,久しぶりに味わうのんびりとした時間でしたので,それほど苦痛ではありませんでしたが,唯一の事務局として働いていた妻は時間を持て余してかなり苦痛であったようです。
     また,開設してすぐの頃,埼玉弁護士会野球部の勧誘を受け,野球部の活動に参加するようになったのですが,元々野球が好きだったこともあり,今では,ほとんど毎週末野球に興じています。
     加えて,もともとの酒好きがどこで広まったのか,夕方になると飲みの誘いが絶えず,埼玉弁護士会の元会長(この人も自他共に認める飲み助)からは,「こいつはほんとにいい奴なんだよ。誘ったら断らないから。」とのお墨付きをもらったほどです。このように仕事もないのに夜遊びばかりしていたため,いつの間にか一部口の悪い友人弁護士からは「越谷の夜の帝王」などと言われてしまいました。
     このように社会勉強と人間関係の構築を地道にしていたおかげで,数ヶ月経つと,支部弁護士からの紹介や法律相談から依頼を受けたりするだけでなく,色々の繋がりから事件の紹介を受けるようになり,瞬く間に事件処理に追われる毎日になってしまいました。越谷は,まだまだ弁護士が足らないんだなと実感したものです。
  2. 次に事務所の環境等ですが,私の事務所は,東武伊勢崎線越谷駅から徒歩約3分,イトーヨーカドーと道路を挟んだ向かいに建つビルのワンフロア約36坪を賃借しています。弁護士は私ひとりで,事務局は3名(うち1名は,妻で主に経理を担当しています。)という構成です。越谷に最初に開いた事務所は,15坪に満たないスペースであったため,すぐに書籍や記録で埋まってしまい,平成14年1月に引っ越して現在の場所に落ち着きました。
     現在の事務所については,私自身非常に満足のいくものですが,これも,越谷駅近辺の事務所の賃料相場が1坪当たり共益費込みで9000円前後という好条件あってのことといえます。
  3.  仕事の内容は,種々雑多で,私が離婚事件(男女関係のトラブル一般)と少年事件を受けていないため,これらは除きますが,それら以外には,渉外事件や大会社の企業法務を除くほとんどの事件を扱っています。その内訳としては,刑事事件2割(ほとんどが国選),破産関係事件(破産管財,破産申立,任意整理)4割,その他の民事事件4割といった割合でしょうか。
     国選弁護事件は,裁判所から各弁護士に直接依頼があり,都合が合えば受任しますが,これが月に最低約2,3件あります。また,破産管財事件は,裁判所から支部弁護士会に推薦依頼があり,名簿搭載者から順次配点されますが,現在私が受任している事件は,通常管財事件7件,簡易管財事件4件ほどですが,簡易管財事件は,平成14年10月から開始されたばかりで,今後大幅に増加していくことが見込まれています。
     また,前述の通り,越谷支部では,管内6市の無料法律相談(日当3万円)と支部独自の有料法律相談(日当1万円)を行っていますが,これらの配点が年間約20回程度,当番弁護士が年間約10回程度あります。したがって,これらの業務だけでもかなりの量になっています。加えて,前述の通り,支部会館開設に伴い常設の法律相談を開始することになっていますので,法律相談の回数は更に増える状況です。
W 最後に
 以上の通り,何の地縁血縁がない弁護士であっても,裁判所からの事件や支部での法律相談等を真面目にこなすだけで,十分事務所を維持できるというのが,私が4年間暮らした越谷の感想です。読んでいただいて分かるとおり,越谷は非常に住みやすく,仕事のしやすい魅力的な地域です。その意味で沢山の人に越谷の魅力を知っていただき,越谷支部に登録してもらいたいと思っています(本音の部分では,あまり支部登録の弁護士が増えて競争相手が増えてしまっては,夜の越谷でのんびり酒を飲めなくなってしまうと心配していますが)。