東京パブリック法律事務所のご紹介(平成15年度)
東京弁護士会  石田 武臣

 2002年6月に発足した,東弁の第1号の都市型公設事務所・東京パブリック法律事務所のご紹介をします。

T 夜間相談・土曜日相談・法律扶助の無料相談
 大都市でも,市民の法的需要は,まだまだ沢山あります。
 2002年6月に5名の弁護士で発足した,わが東京パブリック法律事務所は,2004年3月現在,その3倍の15名の弁護士体制に拡充しています。それでも,全員が,毎日忙しく仕事を続けており,さらに人員の拡充をめざしています。
 一例を挙げると,1ヶ月に扶助相談が250件,弁護士会相談センターの分室の有料相談が200件,相談件数だけでも1ヶ月に合計450件・年間5500件以上にもなっており,これを,常勤弁護士15名の外に400人の協力弁護士が交代で相談にあたって,ようやく対応している,というのが実情です。
 わが事務所では,法律扶助協会の池袋分室(池袋法律援助センター)を事務所内に併設しているので,周辺の自治体の福祉事務所や社会福祉協議会などから,生活が困難な人たちの無料法律相談が紹介されてくることもあって,受付カウンターと待合いコーナーは,いつも相談者が待っている,という状態です。また,わが事務所では,2002年6月の発足の当初から,平日の夕方5時から夜8時までの夜間相談と土曜日の相談も行っており,少なからず「地域の住民の法的な駆け込み寺」の役割を果たしているだろうと思われます。

U 弁護士任官の裁判官を送り出す
 わが事務所は,2003年4月に,桑原義宣弁護士(29期)を東京地裁の判事として送り出しました。桑原弁護士は,東弁・日弁連の推薦を受けて弁護士任官することとなり,わが事務所に合流して事件を共同化した上で,約半年の間に事件の引継ぎを済ませて任官してゆきました。
 この経験を生かして,今後も,弁護士任官を希望する候補者をバックアップするベースキャンプ事務所として,役割をはたしていこうとしています。又,若手・新人を採用する際には,将来的に弁護士任官を考えている人を優先的に採用する,という方針をとっており,5年後・10年後には,毎年何人かの弁護士任官者の供給事務所にしていこうとしています。

V 過疎地に若手弁護士を送り出す
 2004年3月に,地方派遣の第1号として,吉田隆宏弁護士(55期)を島根県益田市につくられる益田ひまわり基金法律事務所に派遣しました。事務局職員も,約2ヶ月間ほど,わが事務所で研修した後に,吉田弁護士と共に島根に派遣いたしました。
 さらに2004年11月には,第2号として貞弘貴史弁護士(56期)を東北地方の過疎地に派遣する予定で,又,2005年3月には,第3号として葦名ゆき弁護士(56期)を北陸地方の過疎地に派遣すべく,日々の弁護士修行を続けています。
 現在司法修習中の57期生の採用内定者2名も,1年半〜2年間の鍛錬の後に,地方に派遣する候補生として採用が決まっています。
 地方に派遣した若手弁護士は,地方赴任後2年ないし3年で当事務所に戻す約束ですし,その後さらに数年間鍛えた後に,弁護士任官して欲しいと思っています。
 若者たちにとっては,なぜか,このような育成方針が好評で,毎年,10数名の入所希望者が来ています。

W 新しい需要の掘りおこしと,地域に根を張った活動の展開
 わが事務所は,地元及び周辺の自治体と緊密な協力関係を築いています。
 法律扶助の分室を併設している利点も生かして,地元地方自治体・周辺の地方自治体の福祉事務所や社会福祉協議会などからの生活困難な人たちの法的解決の援助要請,消費生活センターからの消費者被害の紹介案件などが持ち込まれ,また,中小・零細事業者の高利商工ローン問題や銀行の貸しはがし問題や倒産の法的な対処など,これまで比較的放置されてきた問題が次々と持ち込まれています。
 都市型公設法律事務所は,これまでは法的な救済に比較的に縁が遠かった人々にとって,身近に相談ができて,すぐにその場で弁護士を依頼することができる,という新しい需要を掘りおこす役割を果たし続けています。

X 都市型公設事務所の全国的な広がりと展開
 東京では,二弁の東京フロンティア基金法律事務所(新宿区新宿3丁目),一弁の渋谷シビック法律事務所(渋谷区渋谷3丁目)に続いて,2004年4月に東弁の北千住パブリック法律事務所(足立区北千住),2004年9月に東弁の國學院キャンパス内の渋谷パブリック法律事務所(渋谷区東4丁目)が開設されます。
 東京以外でも,地方単位弁護士会・ブロック会で取り組みが進められています。
 岡山弁護士会と中国弁連では,岡山市の協力を得て,2004年9月には都市型公設事務所が開設される予定です。札幌弁護士会・北海道弁連でも,本年度中に開設が予定されています。大阪では,民事を中心とする事務所と刑事を中心とする事務所の2つの事務所が計画されているようです。京都弁護士会,福岡県弁護士会・九州弁連,仙台・盛岡などでも検討が進んでいるようです。
 もし,これから1〜2年の間に,日本全国で10数力所の都市型公設法律事務所が開設されるならば,過疎地への弁護士の供給と,すぐれた弁護士を裁判官として任官してもらおうという動きに,継続的な大きな動きを作ることが出来るのではないか,と思っています。