三条支部に弁護士法人支所を開設して(平成15年度)
新潟県弁護士会  古島  実

T 支所の開設
 私は,平成11年4月,新潟県弁護士会に登録して,新潟第一法律事務所という2名の弁護士が共同経営する事務所(現在は弁護士6名)に入所しました。同事務所は平成14年4月に法人化し,法人化の最大の特典である支所を新潟地方裁判所三条支部管内に設けることにしました。そして,私が支所の近くに引っ越した上で,平成15年2月から支所に常駐しています。
 支所はあえて裁判所の近くに設けず,裁判所から車で15分くらい離れた燕三条と呼ばれる地域に設けました。そこには,新幹線燕三条駅や北陸自動車道三条・燕インターがあり,幹線国道8号線と国道289号線の交わる交通に便利な場所です。
 三条支部管内には,金属製品の製造・卸業が盛んで日本一社長さんの多い街と呼ばれている三条市・燕市を含め3市4町村があり,人口は全体で約20万人です。弁護士は私を含めて5名です。
 三条支部管内に支所を設けた動機としては,当時身軽な独身者であった私の出身地が三条支部管内の燕市で人員的に無理をせず支所を設けることができたこと,既に三条支部管内に顧問先の企業が多く気軽に相談できる体制を整えたかったこと,どうしても公的な意味合いが強調され,みんなの負担で解決するといった方向で語られやすい弁護士過疎問題に対して法人として回答を出したかったこと等があります。

U 支所での業務内容
 支所で処理する事件の内容としては,従来の顧問先の相談もありますが,電話帳をみて電話をかけてくるいわゆる飛び込みの相談から始まったものがほとんどです。今まで支所に赴任して受任した事件としては,法人事件では売掛金回収,契約書の作成,取引のトラブル,個人事件ではクレサラ事件,貸金,境界紛争,離婚,遺産分割,建築紛争,土地建物明渡,私選刑事事件等極めて多種多様です。新潟市内で業務していた頃は,クレサラ事件がかなりの割合を占めていましたが,支所に移ってからは一般民事事件の割合がずっと増えました。
 当番弁護士は,接見依頼があると弁護士会事務局から事務所に連絡があり,事務所から弁護士が出動する体制をとっています。平成15年度は50回の当番日があります。しかし,管轄区域が狭いせいか11月までで,2回の出動しかありません。弁護士会が主催し,または,弁護士会が市役所などに弁護士を派遣して行う法律相談は,平成15年度は21回割り当てられています。国選刑事事件は,常時2から3件の手持ち事件があり,平成15年2月から11月現在までで12件を受任しています。このペースだと年間15件〜20件くらいになります。そのほか,個人再生委員,少額管財事件の管財人の依頼が三条支部ばかりでなく,本庁や隣の長岡支部からも来ます。
 法人の従来の依頼者や関係者からも紹介があり,また,事務所開設にあたって地元新聞やテレビに紹介され,しかも,弁護士が不足している地域でもあるので,支所開設後順調に事件が増え現在は手持ち事件の処理に追われている状態です。

V 支所の長所・短所
 法人として支所を出す長所としては,様々な面で事務所の開設が容易になるということです。財政的には,支所開設に必要な資金のすべては法人から支出されました。また,人員的にも経験のある事務員を支所に転勤させることができたので初日から本所にいるときと同じ業務をスタートできました。事務員としても法人の事務局の一員としての意識があるため,わからないときや困ったときはいつでも援助が得られるという安心感があります。さらに,経理や総務関係といった法律業務以外の事務についても,本所に集中しており特に支所開設にあたって準備は必要ありませんでした。依頼者と交わす委任契約書や封筒その他の書式もすべて法人のものをそのまま利用しています。
 支所の常駐弁護士が長期の休暇を取る場合も本所の弁護士がローテーションを組んで支所に一時駐在するといったことも行ってきました。今後,常駐弁護士自体の転勤と言うことも考えられます。
 これに対して,法人の支所であることからの短所もあります。本所,支店が,隣接する支部にあることから経済圏・生活圏が重なり,しかも,本所に5人も弁護士がいるので,法人内(本所支店間)で双方代理または利益相反の問題が生ずるおそれがあります。そこで,依頼者や相手方などの関係者の情報をパソコンでデーターベース化して,本支店間をLANで結んで共有し,相談前に法人内で双方代理にならないかをチェックしています。
 また,法人の支所として活動するために,法人全体の業務についての打ち合わせや本所の弁護士と共同で受任している事件の打ち合わせなどのために新潟市内に赴くことが多く,最近では週のうち半分は三条市と新潟市を往復する状態となっています。
 三条市と新潟市を往復すると車の運転だけで2時間程度の時間がとられ,運転の疲労が伴います。さらに,日程の組み方も非効率なものになってしまいます。本所支所間の移動の負担が最大の短所だと思います。本支店間をLANで結んでいるのでテレビ電話を利用して会議をするなど移動を減らす努力をしていますがなかなか機械で代用できないのが現実です。

W 支部にもっと弁護士を
 支部に弁護士が増えると言うことは,今まで法律サービスを受けられなかった方々が容易にサービスを受けられるようになるばかりでなく,他人を食い物にしたり,紛争当事者の間に入って筋の通らない解決を図る人たちが入り込む余地を減らし,大げさな言い方ですが,地域全体に法の支配を及ぼすという重要な意味があると思います。市役所の法律相談などで弁護士とアクセスできただけで本当に喜んでくれる方々が多いのを見ると支部では弁護士が不足しているのを実感します。
 現在,大都市から各県の本庁所在地,本庁所在地から支部へと弁護士人口の流れが起きていると思います。現に,新潟県内でも,本庁管内にいた若手弁護士が支部に事務所を開設するようになってきています。本庁管内の弁護士事務所でいわゆるイソ弁をして支部で独立をするという形の他に,法人が支部に支所を設けそこに弁護士(若手ばかりでなくベテランも含めて)が赴任するという方法も弁護士過疎対策の有力な方法の一つだと思います。