東京から甲府へ(平成16年度)
山梨県弁護士会   中島 大督

T はじめに
 私は,司法修習56期で,平成16年10月で弁護士登録丸1年を迎えたまだまだ新米の弁護士です。特に私の場合,平成16年の7月から現在の事務所に勤務し始めたものですから,この原稿を書いている段階では山梨県弁護士会に登録換えしてからまだ5ヶ月程度しか経っていません。
 ですから故まだまだ弁護士業務を語れるほどの身分ではないのですが,当会の紹介をするとともに,現在自分が日々感じていることを書いてみたいと思います。

U 山梨県弁護士会及び管内の状況
 山梨県には甲府地方・家庭裁判所,同都留支部と,甲府,都留,鰍沢,富士吉田に簡易裁判所があります。
 なお,山梨県の人口は約89万人ですが,そのうち甲府地・家裁の管轄区域内の人口が約69万人,都留支部の管轄区域内の人口が約20万人といった規模です。
 本庁は民事・刑事それぞれ1部ずつで構成され,単独係は民事が4つ,刑事が3つであり,裁判官の人数は,所長を含めて9名となっています。
 都留支部も民事・刑事それぞれ1部ずつで構成されていますが,常置の裁判官は支部長1名であり,支部長がほぼ全ての事件を担当しています。
 新受件数は,甲府地方裁判所合計で平成15年度は民事訴訟事件が903件,刑事訴訟事件が691件であり,裁判官1名当たりの事件数は多い方であると思います。
 このような状況の下,山梨県弁護士会には,現在64名の弁護士が所属しており,うち62名の弁護士が甲府市内に事務所を構えています。
 このように書くと弁護士偏在という風に感じられるかも知れませんが,甲府市内から都留支部までは車で高速道路を使って移動すると1時間かからないこともあって,都留支部管内の弁護士だけでなく,甲府市内の弁護士も都留支部での事件をそれぞれ手掛けていますし,大月市や富士吉田市などで外部法律相談等も開催されていますので,都留支部管内も弁護士が不足しているという程ではないと思います。

V 業務内容
 業務内容については,民事・家事事件から刑事事件に至るまで多様な事件を扱っています。
 民事事件は訴額が数十万円のものから数億円のものまで幅広く,その内容も多種多様です。それぞれの弁護士がどのような業種の顧問先を抱えているかによって多少扱う事件に傾向は見られるかも知れませんが,基本的には全ての弁護士が民事・家事事件全般を広く手掛けています。
 刑事事件は,弁護士会から裁判所に提出した名簿の順番に従って国選弁護人が選任されており,ほとんどの会員が国選事件を担当しています。本庁・支部・簡裁を合わせれば一人当たり年間20件程度は担当することになると思います。

W 会務活動
 会務活動については,委員会活動は,ほとんどの会員がいくつかの委員を掛け持ちしており,新入会員の私も3つの委員を掛け持ちしています。
 また,当番弁護士や法律相談は,名簿順に振り分けられますが,それぞれほぼ全員が担当しています。
 当番弁護士は年7〜8回,法律相談は月1〜2回のペースで割り振られます。甲府から離れた警察署に被疑者が逮捕・勾留されている場合は,移動に結構時間がとられることもあります。
 法律相談は,弁護士会館内の法律相談センターで毎日午後弁護士2名が担当しているほか,県・市・民間団体主催の外部法律相談が甲府市内で定期的に開催され,その他の市町村でも,市町村が主催するものや弁護士会が主催するもの等多様な法律相談が開催されています。

X 新米弁護士の生活
 私は,平成15年10月に登録した当初は,東京のいわゆる渉外事務所に勤務していたのですが,今年の7月に東京から登録換えをして,弁護修習の際の修習先であった事務所で活動することになりました。
 私は山梨の出身だったわけではなく,山梨に縁やゆかりがあったわけではなかったのですが,一般民事に対する興味が心の中で膨らみつつあった時期,ちょうど修習先であった事務所も一人弁護士を増やそうとしていたところであり,これも何かのご縁ということで事務所を移ることを決めました。
 もともと弁護士を目指し始めた頃自分が弁護士という職業に望んでいたものは,弁護士活動において様々な人たちに出会うなかで,わずかながらでも手助けをしたいということはもちろんですが,単純な願望として様々な人たちの人間性に接して多くのことを感じたいということでした。
 もちろん渉外業務においても世界各国のクライアントや法律家と関わることができるのであって,様々な人間を見たいという願望も満たされるのでしょうが,私としては,もっと身近な市井に暮らす人たちを深く見てみたいと思っていたところ,弁護修習で見た山梨での弁護士の活動は扱う事件も多種多様であり様々な会務にも携われるものであり私には魅力的であったことから,また修習先であった事務所とのタイミングも一致したこともあり,山梨で活動することを選びました。
 このような事情から私の一般民事弁護士としてのキャリアは今年の7月から始まったのであり,今でもほとんどの事件はボスや兄弁と手掛けており,書面は起案した後でチェックを受けてから提出しています。チェックを受ける際,自分では気が付かなかった問題点やより説得力のある理由付けを指摘されることは多々ありますが,単純な知識の欠落を指摘されてしまうこともあり,自分の至らなさを痛感させられる毎日です。
 また法律相談を担当した際も司法試験や修習で得た知識では対応出来ない質問を受けることが多く,その場で六法や資料をめくり何とか回答する,あるいは事務所に帰り調べた上で回答することもしばしばです。
 しかしながら,刑事国選事件は当然一人で担当しており,民事訴訟事件でも何件かは最初から私一人で担当していて,自分の仕事が直接被告人や依頼者に大きな影響を与えることの責任の重大さにプレッシャーを感じながらも,やりがいを感じているところです。

Y おわりに
 先述のとおり,当会ではそれぞれの会員が多種多様な事件を手掛けるとともに様々な会務をこなしているわけですが,まだまだ法的手続による解決が必要な案件が潜在的には多数あると言われています。
 当会でもここ数年は,各期に少なくとも一人は会員がいるようになってきましたが,今後更に弁護士数が増加すれば現在でも弁護士が扱っているような案件の他,数多くの潜在的な事件も法的手続により処理することができますから,都留支部管内はもちろんのこと本庁管内においても弁護士需要は今後高まることでしょう。
 また,当会のような小規模会では,業務の多様性も魅力ですが,私の実感としては,弁護士会のまとまりが強く,委員会活動等を通して多くの先輩から学び研鑽を積むことができると思います。
 まだまだ経験の浅い私が拙い文章で当会の紹介と共に日々思うことを改めて文章にさせていただきましたが,本稿を読んで山梨県で弁護士業務を少しでも行うことに興味を持っていただけた方がいるなら幸いです。