我が町相模原(平成17年度)
横浜弁護士会   齋藤 佐知子

T 地域の特徴
 横浜弁護士会相模原支部は,横浜地方裁判所・同家庭裁判所が平成6年4月に開庁して間もない同年6月に発足した新しい支部です。行革に伴う裁判所支部の統廃合が進められる中,新たに支部が設置されたのが,全国で苫小牧と相模原の2支部でした。
 管内は,相模原市・座間市・津久井郡(城山町・津久井町・相模湖町・藤野町)の2市4町で構成されており,地理的には,神奈川県北東部に位置しております。地域東側は,東京都町田市と八王子市に,西側は丹沢岳に,北側は東京都八王子市・山梨県上野原町・秋山村・道志村に,南側は宮が瀬湖から厚木市・綾瀬市・大和市・綾瀬市にそれぞれ接しており,約347平方キロメートルの面積を擁しています。
 近年支部が設置されていることからもわかるように,人口急増地域で,支部管内の人口は,平成17年9月で82万人を超えており,支部が設置された以降の10年間でも17万人増加しています。
 「相模原?」といっても神奈川県民以外の方にはなじみがあまりないかもしれません。少し前に警察の不祥事で「相模原南警察署」がニュースをにぎわせていましたが,地域の特色としては,相模原市・座間市は,東京・横浜のベッドタウンとして発展し,一方,県民の水瓶である相模湖・津久井湖・宮が瀬湖を抱える津久井郡は豊かな自然に恵まれた地域です。なお,当地域には,ジェンキンス氏の軍事法廷が行われたキャンプ座間と相模原補給廠の2つの米軍基地があり,米軍再編にあたり,現在市町村でも活発な議論が展開されているところです。
 相模原市・座間市は,東京・横浜のベッドタウンですので,住民には,東京や横浜で開業している弁護士も数多くおります。私も平成10年に登録換えをするまでは,中学校を含めると25年間東京に通勤・通学しておりました。小田急線や横浜線・京王線沿線の住民には,このような神奈川都民が多く,地域のつながりもどちらかというと稀薄です。早朝から深夜まで東京で生活しているので,選挙のときも立候補者がよくわかりません。一方,相模川沿岸地域や相模原市西部は,昔からの古い住民が多く,地域共同体の関係が密接と言われています。

U 我が町の弁護士の業務の実情
 当地域には,在住法曹は多いのですが,支部管内に事務所がある弁護士は,現在34名で,そのうち33名が相模原市内に事務所がある会員です。平成6年の支部開設時には17名でしたから2倍に増えたとはいえ,中には裁判官・検察官を退任した会員や学識経験者など法曹在職歴が長い重鎮も数多く,昨今の法曹人口の著しい増加に照らすと,その増加率は決して高くはないのではないかと思います。
 管内には,前述のように横浜地方裁判所・家庭裁判所相模原支部,相模原簡易裁判所がありますが,人口の増加に比例し,事件数も増加が著しく,平成12年度の家事調停事件が785件だったのに対し,平成16年度では913件,破産事件は平成12年度の833件に対し,平成16年度では1,041件となっています。もっとも破産事件・家事事件も平成15年度に比べると漸減しており,民事事件は,平成14年度をピークに減少しています。当地域には,東京のように大企業の本店が多数集中していませんので,報道されるようなM&Aや企業関係の大きな事件はほとんどありません。ただ,住民は多いので,破産・離婚などの事件はとても多く内容も深刻で,報道されているように景気が上向きであるとの実感はあまりありません。東京で勤務弁護士として仕事をしていた間に自分で担当した離婚事件は5件程度だったと思うのですが,支部で独立してから離婚事件の相談に接することが特に多く,常時5件程度,ふと気がつくと10件くらい離婚事件が係属していることがあります。
 かように横浜地方裁判所相模原支部の事件は多いのですが,合議体の審理が実施されていません。テレビで報道されるような重大刑事事件や保釈却下決定に対する準抗告は横浜地方裁判所本庁で審理されます。当支部では,平成14年に,支部会員,市民・自治体・地域の諸団体と連携して,地域司法改革懇話会を設立し,継続的に合議制実施を呼びかける運動を展開しています。
 また,本人訴訟が多いのも,当支部の特徴です。横浜地方裁判所相模原支部の訴訟事件中,弁護士が訴訟代理人として関与している割合は5割弱でした。電車で1時間足らずの東京地方裁判所では9割が代理人訴訟であることに照らすと,深刻です。訴訟進行や争点整理に大きな支障をきたすこともありますし,裁判所がかなり本人訴訟においては当事者に配慮しているとはいえ,最終的に当事者の権利が十分に守られない可能性もあります。住民の意識と支部の質的・量的拡大という両面から今後改善されなければならない問題です。
 離婚事件とともに,私の人生を圧迫するのは,各自治体などの無料法律相談です。会員の数が限られている一方,相模原市では北市民相談室で原則毎週水曜日に2名,本庁で毎週火曜日に3名,南市民相談室で毎週金曜日に3名の無料相談が実施されているほか,津久井県民相談,商工会議所,男女平等推進センター,座間市法律相談,津久井各町の相談などに会員を派遣しており,その他に,横浜弁護士会の法律相談センターなども支部会員が多く担当しています。その他に,自治体の各委員などの外部の公的職務の委嘱もありますので,いわゆる働き盛りの会員の負担は大きいものがあります。
 加えて,支部管内の国選事件・当番弁護士も支部会員が中心となって分担しています。刑事事件の件数が激増しており,支部管内の警察署は,相模原・相模原南・座間・津久井の4署でしたが,事件の増加を受けて相模原北警察署が新たに設置される予定です。最近国選事件で単独犯で余罪もないのに遠隔地の警察署に勾留されたまま公判直前まで相模原拘置所に移管されないケースが多いのですが,少しはこのような事態も解消されるかも,と内心期待しています。なお,国選事件は,裁判所から直接個別に依頼がなされますが,平成17年中に審理まで進んだ国選事件で私が担当した件数は,改めて数えたら15件になっていました。当番弁護士も2ヶ月に3回程度の割合で担当がまわってきます。1日に2件,津久井と座間だったりすると,キャラバンのような状態になります。
 支部の会務は活発です。支部長の身としては,活発過ぎるのではないかとも思いますが (!),会員が弁護士会と地域の司法サービスの向上に大きな意欲を持っていることは大変有意義なことです。活動も,相模原相談センターでの夜間相談の実施,平成18年度からのクレサラ相談の開始,管内警察署長との懇談会,法曹三者の懇談会,無料法律相談,神奈川弁護士会への会名変更運動,地域前述の司法改革懇話会,隣接業種との定期的な研修・懇親など,盛りだくさんです。さらに,現在,法テラスの支部・出張所の設置を要望しており,課題は山積みです。

V 我が町の弁護士の日常
 当番弁護士で警察に派遣されることも多く,当支部では車の運転は必須です。多くの会員が移動に車を利用しています。私も支部で独立してから運転免許を取得しましたが,車で移動するようになると途端に増えるのがガソリン代などの経費と体重です。そうはいっても,地域内の電車の便が悪く,なかなか車に頼らない生活は難しいのです。ただ,相模原市内に限っていえば,比較的平坦な地形のため,自転車が非常に多く利用されており,通勤・通学時間帯は一昔前の「北京の朝」の様相を呈しております。会員の弁護士が自転車を華麗に操り市内を疾走している姿も時折目撃することができます。
 また,相模原市を南北にディスカウント街道といわれる国道16号線が貫通しており,沿線には,大型スーパー,ホームセンター,園芸センター,ファミリーレストランが軒を連ねています。近隣で生活するには,かなり住み良い環境です。スーパー銭湯も数多く,仕事帰りや仕事の合間にリラックスするのに最適です。ただ,職住接近の悲しさで,生まれたままの姿でサウナでくつろいでいたときに依頼者とばったり出くわしたことがありました。車を運転して少し走れば,キャンプ場・ます釣り場などで自然を満喫して英気を養うこともできます。
 比較的賃料も安いので,開業はしやすい環境といえます。地域も開放的なので,全く相模原と関わりがないまま相模原で独立した会員も多く,多いに活躍しています。
 仕事が依頼されるきっかけは,紹介・飛込みの相談・法律相談センターなどを通じた受任の他,当支部では前述のように隣接士業の団体と定期的に研修をして相互の懇親を図ってきましたので,司法書士などから,仕事を依頼されることが多々あります。
 また,職住接近なので,休日の勤務も負担が少なく,また,仕事の合間に家事のために自宅に一旦戻り,また,事務所に戻るなどフレキシブルに時間が使えるのもメリットです。ただ,DVの相手方など危険を伴う事件については,身辺に気を使う必要があります。
 いいことばかりではありませんが,独立して,地域とより密接なつながりをもち,自分が住んでいる地域のために,仕事をできる,というのは大きな励みです。