下妻支部での1年を振り返って(平成17年度)
茨城県弁護士会   百目鬼 明子

T はじめに
 私は,平成16年10月に,出身地のある茨城県下妻支部管内に登録換えをしました。それ以前は,栃木県宇都宮市で2年間勤務弁護士をしておりました。
 現在は,つくばね法律事務所に所属しておりますが,所長弁護士は,「ひまわり7号」に登場した門井節夫弁護士です。
 下妻支部所属の弁護士がこの「ひまわり」に掲載されるのは,私で4人目となりますが,それだけ下妻支部における弁護士偏在の問題が顕著であるということを物語っているといえます。

U 下妻支部について
 下妻支部は,筑波山を望む茨城県の県西地域にあり,栃木県や埼玉県,千葉県と隣接しています。
 かつて,長塚節の「土」という小説が鬼怒川のほとり近くの農村風景を描いておりましたが,今でも,冬になると,その名残をどこかに感じさせるような地域です。
 管内の人口は約57万人で,茨城県の人口約290万人のうちの約5分の1を占めます。
 裁判所としては,水戸地・家裁下妻支部,下妻簡裁があり,刑事事件については合議部もあります。また,この他に,管内には,2つの独立簡裁があります。
 これに対し,下妻支部に登録する弁護士は,平成17年10月に新規登録した弁護士を含め,現在8名にすぎず,弁護士数は絶対的に不足していると思われます。
 以下では,登録換え後のこの1年間を振り返りながら,私が感じた下妻支部の実情をご紹介したいと思います。

V この1年を振り返って
(1) 刑事事件について
 下妻支部にあって何よりもまず特徴的なのは,国選事件数の圧倒的な多さであり,この実情は是非ご理解頂きたいと思います。
 下妻支部登録換え後の平成16年10月から平成17年9月までの1年間に私が担当した国選事件の数は実に50件(内外国人事件13件)に上りました。宇都宮での2年間で受けた国選事件は32件でしたから,その差は歴然としています。これでも,最近は事件数自体の減少や弁護士の頭数が増えたことで,1人当たりの件数は減ってきているとのことで,かつては,1人で年間60〜70件を担当していたとのことでした。
 50件といっても,私が担当した事件は,殆どが覚せい剤や窃盗などの争いのない事件です。しかし,それでも,この1年の間には,合議事件も3件ほどまわってきました。
 また,50件のうち,35件が身柄事件でした。下妻支部管内には,現在,7つの警察署と拘置支所1つがありますが,身柄事件は,ほぼ事務所や自宅から近い警察が割り当てられているようです。そのため,1つの警察署に自分が担当する被告人が複数勾留されていることは珍しくなく,1度に複数人との接見をこなすこともしばしばでした。多いときには,1度に5人の被告人と接見したこともありました。また,事件数が立て込んでいたときには,5つの警察署と拘置支所の計6か所を掛け持ちしたこともあり,その際は,私自身の能率の悪さもあって,土日を含め週に4日,それぞれ別の警察署等に接見に出向かなければならないこともありました。
 こういう状態ですから,何より接見に出向く時間の確保が重要で,どうしても通勤の行き帰りを利用することになるため,朝や夜の接見が多くなってしまいます。
 今後,弁護士数の増加や司法制度改革の流れの中で,こうした事態も少しずつ改善されていくものと思われますが,時に記録読みに気持ちが沈んだり,接見に追われる毎日でありながらも,1年に50件もの国選事件を担当できたのは,とても貴重な経験となりました。
 なお,当番弁護士については,この1年で5件担当しました。特に割当日のようなものはないので,警察署の所在に配慮しつつ,すぐに対応できる者のところに担当がまわってきていたようでした。
(2) 民事事件について
 通常の民事事件等について申し上げるとすれば,特に印象的だったのは,相手方代理人となる先生方が隣接する他県や東京の先生方が思った以上に多かったということでした。
 法律相談センターなどに出向くと,相談者から「今日は水戸から来たんですか。」「弁護士はどこにいるんですか。」などと尋ねられることがあり,支部管内における弁護士の存在自体をより広く知らせていくことの必要性を強く感じました。
 事件の内容についていえば,破産や債務整理は勿論,様々な事件が後を絶ちません。個人的な関心もあって,特にこの1年は,いくつかの家事事件が印象的でした。都会であれ,地方であれ,人の生活するところに事件が起こるという,ごく当たり前のことを再確認したような気が致します。
(3) 裁判所からの依頼や法律相談について
 裁判所からの事件ということでは,この1年で依頼のあったものはありませんでしたが,1年を経過した今現在,破産管財人や成年後見人などの依頼が続けて来ております。
 また,弁護士会から割当てられる法律相談は,下妻法律相談センターや市の相談などが月に1,2件ありました。
(4) 弁護士会活動
 委員会活動については,弁護士会館のある水戸まで出向かなければならないため,月に1回程度,いずれかの委員会に参加するのがやっとという状態でした。事務所から水戸まで行こうとすると,高速道路を使っても車でおよそ1時間半かかってしまいます。
 また,支部にあっては,全会員が交替で法律扶助審査にあたっております。さらに,まだ経験はありませんが,支部長としての役割も,数年に1度,順番でまわってくるようです。
 その一方で,はじめは,下妻支部の弁護士同士は,人数が少ないだけに頻繁に会う機会もあるものと予想していたのですが,裁判所に来ても,すぐに隣の検察庁に記録読みに行ってしまうことなどが多く,落ち着いて話をする機会もあまりないというのが実情でした。
 なお,茨城県弁護士会では,年に1度,弁護士会内での旅行の企画があります。私は,ここ2回連続で参加させて頂いており,他の先生方と交流をはかる良い機会となりました。
(5) 車の走行距離
 最後にもうひとつ,この1年間で特徴的だったこととして紹介しておかなければならないのは,車の走行距離が格段に伸びたということです。下妻支部に登録換えする前の宇都宮では,月に1000q走るのがせいぜいでした。ところが,下妻支部に移ってからの1年間の走行距離は,通勤距離が伸びたこともあって,およそ2万7000kmに達しました。公の交通機関の発達していない当地にあって,車の運転は不可欠です。
 事務所から下妻の裁判所までは車で約15分ですが,隣の土浦支部は勿論,栃木県内の裁判所に出向くこともあります。また,よく接見に出向く警察にしても,事務所から車で30〜40分のところにあるため,頻繁に接見に行けば,走行距離もいつの間にか伸びていくことになります。
 上手下手はともかく,幸い,運転は嫌いではないので,長距離運転による腰痛や肩こりなどを少々気にしつつも,好きな音楽を聴きながら車で走ることは,仕事の合間の良い気分転換となっています。

W 最後に
 昨年8月,つくばエクスプレスが開業しました。これにより,秋葉原から下妻までの電車での所要時間は,関東鉄道常総線を乗り継いで最短で約75分となり,交通の便もよくなりました。これから,下妻支部管内の人の流れも少しずつ変わっていくものと思われます。
 他方,下妻支部での私の経験はまだまだ短いものですが,前述したとおり,弁護士が身近にいることを知らない人は決して少なくはないようです。それだけに,地域にあって身近に利用してもらえる弁護士としての役割を担っていけるよう,日々研鑽に励みたいと改めて感じたこの1年でもありました。