関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

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ホッピービバレッジ株式会社社長
石渡 美奈さん

とき
平成28年10月
ところ
東京都港区赤坂
インタビュアー
会報広報委員会副委員長 小南あかり,同委員 丸野登紀子,西岡 毅

 今回はホッピービバレッジ株式会社社長の石渡美奈さんにインタビューしてまいりました。ホッピービバレッジ株式会社は焼酎の割材として有名な「ホッピー」の製造・販売をされている会社で,石渡さんの祖父が創業した会社です。石渡さんは,平成9年に同社に入社し,平成15年に副社長に就任した後,平成22年に二代目社長であった父親からバトンを受け取って三代目社長に就任されました。石渡さんには,経営や社員に対する思いなどを伺ってきました。

石渡さんが現在社長を務めるホッピービバレッジ株式会社に入社した経緯等について教えてください。

石渡さん 大学を卒業して,まずは別の会社に就職しました。その次に勤めた広告代理店で仕事の楽しさを知って,私の人生が変わりました。ちょうどその頃,父が地ビールの製造販売免許を取ったと聞いて,父がやっている仕事が面白そうだと思い,弊社を継ぎたいと思うようになりました。

初めから御社に入社することはお考えにならなかったんですか。

石渡さん 私が学生の頃は,男女雇用機会均等法が施行されたころで,当時女性が会社の社長になるということは全く考えられないような時代でした。だから私もまさか自分が社長になることは考えにくかったと感じます。でもその後,自分が仕事を好きということと,地ビールの製造販売免許を取ったことで父の仕事が面白そうと思ったことから継げるものなら継ぎたいと思うようになりました。

会社を継ごうと決めて,お父様は喜ばれましたか。

石渡さん 全然。大反対でした。

どうしてですか。

石渡さん はっきりとした理由は分からないんですが,おそらく女性には大変な世界だという想いがあったんじゃないでしょうか。

石渡さんは御社に入社後,経営について沢山勉強されたそうですが,どういう方法で勉強されたんですか。

石渡さん 株式会社武蔵野というところに小山昇さんという方がいらっしゃるんですが,その方が当時の私の師匠ですね。2年半くらいは骨をしゃぶり尽くす勢いで経営に関することなど教えていただきました。

お知り合いになられたきっかけは?

石渡さん 経営についていろいろな方にお話を伺っているときに,経営計画と経営品質が大事だということが分かってきて,そのときちょうど新聞広告で小山さんが経営計画と経営品質を教えているということを知って,講演を聴きに行きました。講演中,絶対この人から学びたいと思い,講演が終わった後は誰よりも一番に小山さんのところに行って名刺交換をして,そこで門下生にしてくださいとお願いしました。

すばらしい行動力ですね。その後は大学院でも学ばれたと聞きましたが。

石渡さん 早稲田のビジネススクールに通って,2014年より慶應大学にも通いました。また来年の春に慶應大学に戻って勉強したいと考えています。

それはやはり経営に関することを勉強されるんですか。

石渡さん 経営を勉強するっていうとちょっと違うかもしれません。経営って有機的で瑞々しいものなので,座学とは全然違うんですよ。やはり実際に仕事することが一番の経営の勉強になるというのが私の持論です。しかし,経営者には様々な学びがあるとも考えています。

では,実際に御社の経営について伺いますが,石渡さんが副社長に就任された後の平成17年10月に社内改革を開始されたと御社ホームページに紹介されていましたが,どのようなことをされたんですか。

石渡さん 経営計画書を作りました。祖父や父の代にはそういうものはなかったんです。祖父や父は当然に私とは全然違う時代背景でやっていて,彼らの時代はある意味造れば売れた時代でもあり,良いものを造るということを重視していたんだと思います。しかし私が三代目になることを意識したときは,良いものを造ることは当然として,大手ビールメーカーに囲まれるなか,どうやって差別化を図っていこうかという思いが漠然とありました。その中で「経営の可視化」が重要だと考えたんです。全社員が目指す方向が見えていれば,良い会社の枠組みが創れると思いました。

改革をして,古くからいらっしゃる社員の方々の反発はありませんでしたか。

石渡さん もちろんありましたよ!

御社ホームページの会社沿革には,「平成18年2月工場長加藤木の変」というとても興味深い記載がありますが,このことですか。

石渡さん そうです。工場長と工場で働いている社員全員が辞表を出してきたんですよ。

それは石渡さんにとって結構ショックな出来事だったんじゃないですか。

石渡さん そうですね。ああ,やっぱりきた,と思いました。友人の経営者で跡取りになった方がみんなこういうことを経験していたので,私にもあるんだろうなと予測はしていました。ただ,この件では誰も辞めずに,工場長も定年まで勤めました。

社員人財育成という視点での改革もされましたか。

石渡さん 大きい改革として新卒採用の着手です。小山さんから,良い会社を作りたければ社長が社員教育を怠ってはならないと教えられました。良い会社を作るということは,社会のことを何も知らない新卒の子たちを採用して,社長自ら教育することだと教えられたんです。それで平成18年から新卒採用を始めました。

石渡さんから見て,新卒ではどういう子が伸びますか。

石渡さん やっぱり明るく素直で単純な子がいいと思います。学歴よりも人柄が大事ですね。

御社特有の新人研修みたいなものはあるんですか。

石渡さん うちは全部独自のプログラムでやっていますね。まずは学生気分と社会人意識の違いを教えます。やっぱり私を信用して入ってくれた子たちだから,私が責任をもって教育しないと。研修会社に預けたりすることはできないですね。

今の時点で改革は成功したと思われますか。

石渡さん いえいえ,まだまだ改革中です。そもそも,弊社には成功と失敗ということはないんですよ。すべて現象なんです。つまり,計画したことを実行してそこに現象がある,その現象が計画と照らして上手くいったのかいっていないのか,ということをみるんです。成功と失敗という評価はしません。その理由として,弊社が最も恐れていることに「傲慢」ということがあるからです。成功したというと,人は傲慢になると思うんですよ。

なるほど。

石渡さん 私も含めて,社員にはとにかく傲慢にならないようにと教育しています。だから私は社員を褒めないんです。褒められ続けると人間って傲慢になって頑張らなくなるんです。人って,みんな可能性を持っていて,大人になってもまだまだできることがあるんです。私の社員に対する役割というのは,私を信頼して入ってくれた社員の可能性に一つでも多くアクセスして,花開かせてプロにすることなんです。それが私への信頼に対するお返しであって,約束でもあると考えています。それなのに,私が社員を褒めてしまうと,社員は満足して花開かなくなるうえに,鼻持ちならない人間になってしまう。だから絶対に褒めないですし,他の方にもうちの社員を褒めないようにお願いしています。ただね,実は社員がいない外では褒めてるんですよ(笑)。うちの社員はみんな本当に頑張る子たちで,自慢の社員なんです。

自慢の社員とおっしゃってることを記事にして大丈夫ですか。社員さんもご覧になると思いますが(笑)。

石渡さん 大丈夫です。記事読んで傲慢になってたらガツンとやりますんで(笑)。

社員の皆さんと懇親会をされたりするんですか。

石渡さん 行きますよ。飲み物は当然ホッピーです(笑)。

ホッピーは居酒屋でよく目にするんですが,正しい飲み方,飲み方のルールみたいなものはあるんですか。

石渡さん ホッピーは割って飲むことを前提にしていて,「あなた色に染めてください」という商品なので,基本的にルールはありません。ただ,おすすめはあります。そのままストレートで飲むか,凍らせたグラスに,1対5の割合で冷やした焼酎とホッピーを混ぜてください。氷は入れないほうがおすすめです。

わかりました!この後飲みに行くことにします(笑)。ところで,我々は関東弁護士会連合会の会報広報委員会から来ているんですが,御社の広報に対するお考えを聞かせていただけますか。

石渡さん 私は広報というのは,コミュニケーションのことをいうのかな,と思っています。商品だけをPRするのではなくて,商品に関するストーリーや想いをメッセージとして伝えて,それを受け取ってくださる方々にも協力していただいてホッピーを育てていっているという感じでしょうか。

なるほど。

石渡さん うちは大手の酒類メーカーのように多額の広告料金を使ってテレビCMしたりはできないので,コミュニケーションという弊社のやり方で取り組んでいますね。

御社の広報の一環と言えるのかなと思いますが,年に2,3回,赤坂の飲食店と協力して御社が主催されている「食べナイト飲まナイト」,通称「食べ飲ま」というイベントがありますよね(前売価格3,500円(5店舗分)のチケットを購入して加盟店に持参すれば,お酒とおつまみがセットになった食べ飲ま特別メニューと交換してもらえるイベント。)。私は普段赤坂で飲むことは少ないんですが,あのイベントでは4,5件ハシゴできるので,毎回楽しみにして参加させていただいています。「食べ飲ま」はどういうきっかけで始まったんですか。

石渡さん あれは東日本大震災がきっかけですね。震災の後,赤坂から人がいなくなってしまったので,赤坂に人を呼ぶために何かやって欲しいと言われて始めました。それまで赤坂でそういうイベントを行ったことがなかったんですが,当時は震災の影響でどのお店も人が来なくて困っていらしたので,やってみようかということになって。それが続いて次の11月開催でもう10回目になります。最初は30店舗ほどの参加でしたが,今では約60店舗が参加してくれています。あのイベントでとても赤坂が活気づきますし,これは地元企業と参加されるお客様による地域創生のモデルになると思います。特に次々回の11回目では・・・,あ,これはまだ内緒でした(笑)。

楽しみにしています(笑)。本日はありがとうございました。

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