関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

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ヤフー株式会社(前編)
三浦尚也さん(広報室チームリーダー)

とき
平成29年4月17日
ところ
東京都千代田区紀尾井町 ヤフー株式会社
インタビュアー
会報広報委員会副委員長 小南あかり
会報広報委員会委員   丸野登紀子,西岡毅

 今回の「関弁連がゆく」は,皆様ご存知のヤフー株式会社(「Yahoo!JAPAN」)です。同社の本社がある紀尾井町オフィス18階にお邪魔してまいりました。
 今月号では,まず,広報室のチームリーダーである三浦さんからお聞きしたヤフー株式会社全体に対するお話を掲載します。社名の由来,社内の人事,労働環境まで,様々なお話をお聞きしてまいりました。
 なお,次月号では,法務本部の藤吉さんと柳さんから伺った法務部門についてのお話を中心に掲載します。2号続けてお楽しみください。

まず「ヤフー・ジャパン」という社名の由来について教えてください。

三浦さん 「Yahoo」は「Yet Another Hierarchical Officious Oracle」の略だとも言われているようですが,創業者の二人が自らを「ならず者」と思っていたというところから,「ならず者」という意味の「Yahoo」という名前を選んだそうです。

山頂で言う「やっほー!」とは全く関係ないんですね(笑)。「Yahoo! JAPAN」のロゴの「!」にはどういう意味があるんですか。

三浦さん ヤフー・ジャパンは,アメリカからブランドをお借りして事業をしているという位置付けでして,「!」の細かい意味合いなどについては細かく把握していません。ちなみに,ロゴの色は日本だと赤色ですが,アメリカだと紫色なんですよ。

本社とロゴの色が異なってもOKというのは興味深いですが,どうして日本では赤色にしたのですか。

三浦さん 前社長の井上が,日本だと紫をあまり使わないということから,元気,明るいというイメージのある赤に決めた,と聞いています。

今回お邪魔させていただいているオフィスは,内装もとても明るいですし,キッズルームのようなデザインのスペースもあって,楽しそうな雰囲気ですね。オフィスのコンセプトは何かありますか。

三浦さん コンセプトは「情報の交差点」で,従業員同士の社内と社内,社内と社外,あとは社外と社外,という3つをターゲットにしています。社内に関しては,全館フリーアドレス(*自身の固定席を設けないオフィス)で,どこのフロア,どこのデスクでも働けますし,かつ机をジグザグに配列してあえて歩きにくい空間にしています。普段接しない色々な人と交わることで,情報の交差点を生み出して欲しい,という意味ですね。社外に関しては,このビルの17階にコワーキングスペース「LODGE」を設置しており,そこでは社員が働いてもいいですし,社外の方も利用できます。一人ひとりがゼロからイチの発明をするというのはすごく難しいので,情報の交差点を造って,足し算,掛け算をすることで,最終的にはイノベーションを生み出したいという思いがあります。

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いわゆるノマドワーカーや我々弁護士がちょっと気分を変えてそのコワーキングスペースで仕事をすることができるんですか。

三浦さん はい,そうです。弊社が入っているビルの2階のオープンゲートを通っていただいて,18階でお名前の記入と身分証明書の提示をいただければ,自由にコワーキングスペースをご利用いただけます。2017年10月末までは無料です(*ただし,11月以降は未定)。

では折角ですから,我々もこの後そこで仕事をしてから帰りますね(笑)。

三浦さん 是非どうぞ。あと,全館フリーアドレスとは別に,弊社には「どこでもオフィス」という制度があります。従業員は月に5回まで,自宅でも近所のカフェでも,自分の生産性が上がるような場所を選んで仕事ができます。例えば,その日はずっと箱根の旅館で業務をするとか,空気のきれいな高尾山の頂上で業務をするとかいうことでも,その方が生産性が上がるというのであれば問題ありません。連絡がつけばどこでも業務していいという制度です。あとはイノベーションにつながるように,人と会うとかセミナーに参加することに使ってもよいです。

とは言え,例えば,実際に高尾山に行ってしまったら,「さすがにそれはどうかな…」とならないですか。

三浦さん 人事では自由と責任はセットと言っていますし,最終的には会社の右肩の成長と本人の成長・パフォーマンスが上がっていけば問題ないとしています。

あくまでも自己管理ということなんですね。では,社内でのコミュニケーションはどのように図られているのでしょうか。従業員の育て方,従業員同士の関わり方を教えてください。

三浦さん 人事コンセプトとして,「従業員の才能と情熱を解き放つ」というのがあります。そのために,マネージャー(管理職)はプレーイングマネジャーとして活動するのではなく,あくまでマネージャー業に専念してもらいます。社内では,役職は配役と言っており,役職手当もありません。社内のグレードの高いプレーヤーについてはプロフェッショナル職というのを用意しまして,「自分はマネージャーではなく,プレイヤーで頑張りたい」という方には,プロフェッショナル職で活躍いただくということになっています。マネージャーの使命は,自身のチームメンバーそれぞれの才能と情熱を解き放つことで,週に1回,上長とメンバーは30分ほど1on1という対話(ミーティング)をしてください,と決められています。マネージャーによっては,その1on1に1日を費やしている人もいます。あとは会社としてES(従業員満足度)調査を年2回しておりまして,経営・人事・組織の現状について従業員からフィードバックを受け,制度作りにも活用しています。

人材の育成や成長に力点を置かれているんですね。ワークライフバランスについての取り組みはいかがでしょうか。

三浦さん サービス残業は認めていません。また,なるべく残業0で帰ろうという空気作りをしていて,去年の10月から,マネージャーとプロフェッショナル職以外の一般の社員にはあらかじめ月25時間分の残業代を給与にプラスしています。残業0だとまるまる25時間分の残業代がもらえ,勤務時間に対する給与が増えるという仕組みになっています。あとは,従業員の心と体の健康という部分では,去年の9月に健康増進に取り組む役職を作りまして,社長の宮坂がチーフ・コンディショニング・オフィサーに就任し,社長自らコミットをする組織となりました。今は社員食堂で朝食,昼食,夕食を提供して社員の健康増進を図っていて,朝食は無料です。

素晴らしいですね。では,次は事業についてお聞きします。ヤフー・ジャパンがビジネスモデルとして中心に置いていらっしゃるのは,インターネットの広告収入ということでよろしいんでしょうか。

三浦さん はい,やはり一番収益を上げているところは広告事業ですね。それ以外に今強化しているところは,eコマース事業や,フィンテック(FinTech)といわれている決済金融事業などです。

事業ごとに部署が分かれているんですか。

三浦さん 事業は,大きく2つのグループに分けられます。インターネット広告などのマーケテイングソリューションと「ヤフー・ニュース」や「ヤフー・ジャパン トップページ」などを束ねる「メディアグループ」と,ヤフオク!やショッピング,決済金融,パーソナルサービスという会員制サービスを束ねる「コマースグループ」の2つです。

今出てきたヤフー・ニュースなんですが,弁護士会のイベントをヤフー・ニュースで取り上げていただいたときに反響が大きくて,その影響力の大きさを痛感しています。この影響力というのは,戦略的に何かお考えになった結果なのか,それとも,たまたま皆がPCのトップページをヤフー・ジャパンにしていたためにニュースも知られるようになったという偶然の結果なのか,どちらでしょうか。

三浦さん 1996年4月のサービス開始当初はヤフー・ニュースはなかったんですが,ポータルサイトとして,ヤフー・ニュースなどのコンテンツを拡充していった結果,お客様にアクセスしていただけるサービスになっていったという流れになります。

ヤフー・ニュースに掲載されるコツというか,選ばれる基準とはどういったものでしょうか。

三浦さん こうすれば載るという基準はないんですよ。約25名のヤフー・ニュース トピックス編集部が日々配信されるニュースの中から,その日その日で掲載するものを考えています。スポーツやエンタメのように比較的アクセスされるものだけではなくて,ユーザーさんにとって興味関心は低いかもしれないが,あえて知って頂きたいニュースを掲載するなどバランスも意識しています。具体的には,「ヤフー・ニュース トピックス」では8本の記事が掲載されていますが,上の方に政治,経済,国際などの硬派な記事を,6~8本目にスポーツ,芸能関連の記事を掲載するという構成になっています。

基準があれば弁護士会の広報に活用したいと思ったのですが…残念です(笑)。日本では,いくつかある検索サイトの中でもヤフーが一番利用されているのではないかと思いますが,日本一になれた理由とは何だとお考えですか。

三浦さん 弊社はアメリカからブランドをお借りしてビジネスをするという位置付けですので,1996年のサービス開始から,日本のお客様のためになるサービスをどう作るのかということを考えて,機能を改善したりデザインを修正したりしてきました。ひたすら日本に向かってビジネスをしていたことが20年続けられた要因だと思っています。

日本に特化した日本人のためのウェブサイトを作ってきたということが,日本で成功した理由なんですね。

三浦さん 弊社は米国ヤフーとソフトバンクとの合弁会社として設立されたので,日本に特化するということに集中できました。米国ヤフーがグローバルに展開している国や地域の中でもこれは珍しいと思います。米国ヤフーがグローバル展開をするときには,例えば,アメリカ本社の管理で各国に拠点を作るというケースが多く,日本のようなケースは他にオーストラリアなど数えるくらいだったかと思います。

先ほど設立から20年というお話がありましたが,まだ20年しか経っていないのか,という感じがしますね。その間インターネット利用環境は大きく変化しました。

三浦さん 会社ができた1996年の日本のインターネット利用率は,4.4%でした。ところが今ではスマートフォンというデバイスを通じてインターネットを利用するのが当たり前になっています。いわゆるスーパーコンピューターが皆さんの手の中に2台,3台あるような世界というのは想像していませんでした。

インターネット環境について今後の展開の読みはありますか。

三浦さん スマートフォン時代がこのままずっと続くとは思っていません。スマートフォンもPC時代から想定していなかったものですし,このままスマートフォン時代が続くと思っていると次のビジネスに乗り遅れてしまうなと思っています。今後具体的に何が出てくるかということまでは分かりませんが,インターネットの世界でどうビジネスをしていくかという会社ですので,世の中の状況を見ながら,チャンスがあれば色々な取り組みをしていきたいです。

今後,御社の目指す姿はどういったものですか。

三浦さん 1つは,グローバルな海外企業と日本市場で戦っていかなければならないので,ヤフー・ジャパンが提供する100以上のサービスから溜まるビッグデータを活用して戦っていきます。2つ目は,日本全体で充分にインターネットが活用されているかというと,まだそういう状況ではありません。例えば,日本の小売市場におけるEC化率はまだ5%位です。ヤフー・ショッピングという無料で出店していただけるサービスを提供していますので,これを利用していただければ,例えば北海道のとある地域でしか買えない海産物を沖縄の人が買えたりと,インターネットを通じて日本をより良くしていくことがまだまだできると思っています。20周年を機に「アップデート・ジャパン」という企業ビジョンを掲げました。今後も,情報技術を通じて,日本をアップデートしていきたいと思っています。

なるほど,我々の生活にも大きく関わってきそうですね。今後の発展が楽しみです。 (次号へ続く)

(※ 前代表取締役社長の井上雅博氏は本年4月26日に逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。)

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