関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

ヤフー株式会社(後編)
藤吉寛久さん(コーポレートグループ 法務本部 本部長)
柳由香里さん(コーポレートグループ 法務本部 法務1部 法務2 リーダー 弁護士)

とき
平成29年4月17日
ところ
東京都千代田区紀尾井町 ヤフー株式会社
インタビュアー
会報広報委員会副委員長 小南あかり
会報広報委員会委員   丸野登紀子,西岡毅

 今月号も,前号から引き続いてヤフー株式会社(「Yahoo! JAPAN」)で伺ったお話をお届けします。今月号では,法務本部長の藤吉さんとインハウスロイヤーの柳さんからお聞きしました法務部門についてのお話が中心となりますので,IT企業の企業法務や企業内弁護士にご興味のある方は特に必見です!

まず,法務の体制について教えてください。

藤吉さん 弊社では,いわゆる企業法務からガバナンス,コンプライアンス,知財,政策提言までを法務部門の職掌に含めていて,これらが2つの本部に分かれています。1つは法務本部で,私が所属する本部です。ここでは,ビジネスのサポート,契約のサポート,取締役会・株主総会の事務局など,いわゆる企業法務をしています。もう1つはコーポレートインテリジェンス本部政策企画部で,そちらでは政策提言とか,ロビー活動などをしています。2つの本部をあわせると,だいたい100名ほどの管理職・スタッフが法務の仕事に従事しています。会社全体で,インハウスロイヤーは27名です(※ 取材時点での人数です)。

政策企画部では,具体的にはどういった活動をされていますか。

藤吉さん 個人情報保護法の改正のときに働きかけをしたりとか,国会で委員会が立ち上がったときには,その中に入らせていただいたり,パブリックコメントが出たときに積極的に意見を出したり,などです。

訴訟案件は法務本部で対応されているのですか。

藤吉さん 契約に関する問題等,ビジネスから出てくる訴訟は法務本部で対応します。それとは別に,検索サービスで生じる名誉毀損の問題とか,発信者情報開示請求を受けて訴訟に発展したときなどは,政策企画部で対応します。案件によっては,外部の法律事務所に依頼することもあります。

社内での法務の役割というのは何でしょうか。

藤吉さん 内部の事情やビジネスをよく理解していますので,原則として,可能な限り内部で処理をしていこうと考えています。昔の話ですが,インターネット業界は先例の蓄積も少なかったので,名の通った法律事務所の弁護士の方にインターネットのことを聞いても,十分な回答を得られないこともありました。そういった経緯から,できるだけ内部で考えていくという姿勢が生まれ,根付いたのだと思います。

御社がインターネットビジネスという新しいビジネスをしている企業なので,外部の弁護士では対応しきれないということもあるんでしょうね。今はインハウスロイヤーを目指している弁護士も多いですし,法務部に入りたいというようなロースクール卒業生もいると思います。折角ですので,どういう人材に来てもらいたいかを教えてください。

藤吉さん スペックだけを言うと,法律を勉強していない方よりもしてきた方のほうが勿論良いです。ただ,入社時の能力は入社してからどれだけ頑張るかによってあっという間に変わってしまいます。仕事をするうえで,貪欲に頑張れる人というのは,より成長します。あとは,法律の世界だけに閉じこもらない方がいいですね。例えば,いろいろな経験を積んだうえで,もちろん勉強もして,資格もとってきました,というような方ですね。

写真

なるほど。弁護士について,社外の弁護士に望む役割と,社内の弁護士に望む役割というのは違いますか。

藤吉さん そうですね,社外の弁護士に依頼をする場合,一つには,社内にはない専門的,実務的な知識・知見を求めているということがあります。外部からリーガル・オピニオンをとる必要がある場合もあります。そこに社内の弁護士が,どううまく関わって,協力していくかだと思います。

社外弁護士に期待することは何ですか。

藤吉さん 弊社のことを十分に理解された上で,しっかり踏み込んだ判断をしていただきたいと思います。こちら側も一生懸命インプットするので,その状況事情に応じたソリューションを一緒に考えていけるといいなと思います。法的問題に提言をいただくときに,「ヤフーは,こういうことが目的でこういうビジネスをやりたいんだ。」ということを理解していただければ,多様なルートを一緒に考えていけると思います。また,スピードとクオリティの両立を期待しています。

社外弁護士の立場だと,結論だけを求められることがあって,そういうときにはつい否定的になりがちだと思います。やはり,情報・意識の共有が大事ですね。

藤吉さん 社外にいらっしゃると,インプットされる情報が必要十分かどうかも分からないですよね。ですから,コミュニケーションが大事だと思います。弊社では,法律事務所での勤務を経験した弁護士を何人か採用していますが,インハウスを志望した動機を聞くと,「事務所で依頼を受けるだけだと,情報の格差があって,都合のいいところだけ言ってもらって,アドバイス後にどうなっているのか分からないことが多い。最初から最後までちゃんとビジネスを見たい。」という方が多いですね。

これからインハウスの柳先生にお話を伺います。入社されたのはいつですか。

柳さん 私は,2014年の4月に入社しました。それまでは企業法務系の法律事務所にいました。

インハウスロイヤーになられたきっかけは何ですか。

柳さん 法律事務所にいたときに企業に出向するチャンスがありまして,そこでビジネスに近いところで仕事をする面白さを実体験しました。その頃,周りでインハウスロイヤーに転職する人も増えてきて,私も,インハウスロイヤーを身近に感じるようになったことがきっかけです。

御社を選ばれた理由はなんですか。

柳さん 2つあります。まず1つは,業務内容です。まだ弁護士の中でIT関連分野の専門家が少ない中で,ヤフーというITのフラッグシップ企業で企業法務経験を積めることは,大きなチャンスだと思いました。もう1つは,ヤフーでは,法務部門が事業部門と一緒にビジネススキームを考えるなど,会社のあらゆる事業活動と共にあり,法務部門が会社の中でプレゼンスを発揮している印象を受けたことです。

写真

先ほど,マネージャーとプレーヤーという話がありましたが(*前号に掲載),柳さんは今どのようなお立場ですか。

柳さん 去年の4月から,マネージャーとして私を含めて6名のチームを任せられています。それまでは自分1人がプレーヤーとして成果を出すことに注力していましたが,今はチームとして成果を出すことが求められています。

柳さんのチームの主な業務内容は何ですか。

柳さん 会社のサービスに関する法務支援や,契約書の作成・審査,訴訟などを担当しています。法律事務所にいたときよりもビジネスに近いポジションにいて,案件の最初から最後まで,当事者としてビジネスに関わっています。

今の勤務時間や休日はいかがですか。

柳さん フレックス制でして,朝10時から15時までがコアタイムです。私は,朝10時前から19時頃までを基本に働いています。休日出勤はめったにありません。

インハウスロイヤーの魅力は何ですか。

柳さん 2つあります。1つ目は,ビジネスの現場で仕事ができるのが魅力だと思っています。社外弁護士の場合,案件が盛り上がったときだけ関わることが多いと思いますが,インハウスの場合,ビジネスの最初から最後まで当事者として関われます。2つ目は,ワークライフバランスです。メリハリのついた生活が送れていると思いますし,特にヤフーではライフステージに応じた働き方をある程度選択できる制度になっていますので,働きやすいと思います。

前にいらっしゃった法律事務所と比べて,仕事量はどうですか。

柳さん 法律事務所にいたときは,依頼者のスケジュールに合わせて動いていたので,時間的に無理をすることもありました。今は相手が社内なので,調整することもできます。案件数だけで言うと,会社では大きな案件から小さな案件まであるので,数は増えていると思います。

インハウスロイヤーのメリット・デメリットはいかがでしょうか。

柳さん ビジネスの最前線で働きつつ,ワークライフバランスを両立させられるのがメリットです。デメリットは,法律事務所では複数のクライアントの案件に携わることができますが,インハウスの場合,クライアントが社内になりますので,業種・分野という意味では,携われる領域はある程度限られることです。もっとも,その分,会社のビジネスに精通することができるというメリットもありますので,必ずしもデメリットとは言えないかもしれません。

どのような方がインハウスロイヤーに向いていると思いますか。

柳さん 個人的な見解ですが,コミュニケーション能力やチームワーク力がある人が向いていると思います。法務部門は会社にとってアクセルにもブレーキにもなりますので,現場から信用してもらわないと,法務まで相談がこないことがあります。ですから,現場との距離感を縮めることが必要で,そのためにはコミュニケーション能力があるほうが望ましいと思います。様々な部署との連携・調整も必要となるので,チーム力も必要になります。

インハウスロイヤーになるにはビジネス経験は必要ですか。

柳さん 私自身,ビジネス経験はありませんでした。会社の中の法務として,自分の会社のビジネスに精通する必要はありますが,必ずしも自分でビジネスが出来ないといけないかというと,そうではないと思います。事業部門との役割分担だと思います。

最後に,インハウスロイヤーを目指す方にメッセージをお願いします。

柳さん 働く企業の選び方として,所属する業界や会社によってインハウスロイヤーの役割も業務内容も違ってきますので,そこをポイントにするのも良いと思いますが,まずは純粋に好きな会社・業種で選ぶというのも良いのではないかと思います。

とても参考になります。この度は貴重なお話をありがとうございました。

PAGE TOP