関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

メルセデス・ベンツ日本株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営役員(CEO)
上野 金太郎さん

とき
平成29年11月20日
ところ
Mercedes me Tokyo(六本木)
インタビュアー
会報広報委員会委員長 井上昌幸,同委員 西岡毅

 今月号の「関弁連がゆく」では,企業訪問シリーズとして,メルセデス・ベンツ日本株式会社の代表取締役社長 兼 最高経営役員(CEO)の上野金太郎様にインタビューをさせていただきました。上野社長のご経歴から,メルセデス・ベンツに対して抱かれる「敷居の高さ*」の克服,自動運転に対するご意見等,様々なお話を伺いました。


*「敷居が高い」とは,元来「相手に不義理などをしてしまい,行きにくい」ことを指しますがここではあえて分かりやすさを優先するため,「高級過ぎたり,上品過ぎたりして,入りにくい」という意味で利用しました。

まずは,自動車にあまり馴染みのない方にもお分かりいただくため,メルセデス・ベンツ日本の業務の概略をご説明いただけますでしょうか。

上野さん 弊社はインポーター(輸入業者)です。海外から自動車を仕入れ,それを販売店に卸すというのが業務の概略です。

次に,上野社長のご経歴をお伺いしたいと思います。

上野さん 私は東京生まれ,東京育ちですが,父の判断で,小学校からインターナショナルスクールに通いました。そこでは,95%くらいの子が外国籍で,日本人は私を含め,クラスに1,2名程度でした。かなり自由な校風で,服装はTシャツにジーパン,リラックスした雰囲気で過ごしていました。

上野社長はインターナショナルスクール入学前から外国語(英語)が出来たのでしょうか。

上野さん いいえ,父母ともに日本人で,父親は若干英語を話すことはできましたが,家での会話は日本語でしたので,入学時にはほとんど英語はできなかったですね。実際,小学校2年生頃までは言葉についていけなかったです。その後は徐々に馴染むようになってきました。

その後,インターナショナルスクールを卒業なされたのでしょうか。

上野さん 私は,日本で日本人として暮らしていきたいと思っていたこともあり,日本の学校に対する憧れもありました。そこで,インターナショナルスクールに入学してから8年後,日本でいう中学2年生のときに,地元の公立中学校に転校し,その後,私立早稲田実業学校高等部に入学しました。

インターナショナルスクールから公立中学校,私立高校へ転校というのは,劇的な環境の変化ですね。

上野さん 自由な校風のインターナショナルスクールから,一気にドメスティックな世界に変化しましたね。ただ,私は小学校1年の時に英語の世界という全然違う世界に飛び込んだこともあったためか,環境の変化には抵抗がなかったです。

その後,早稲田大学を卒業され,メルセデス・ベンツ日本へ入社されたということですが,なぜメルセデス・ベンツ日本に入社されようと思ったのですか。

上野さん 私は,インターナショナルスクールにいたとき,周りの方からレーシングカートやオートバイなど原動機が付いたものに接する機会を頂いていたこともあり,小学6年生ころから,レーシングカートを始めました。その後,高校生になったとき,英語ができた私に「自動車雑誌の通訳のアルバイトをしないか」とお声がけいただき,自動車業界,モータースポーツの世界に触れていきました。それで,自動車業界に興味を持ち,就職活動をしました。

いくつもある自動車業界の中で,メルセデス・ベンツ日本を選ばれたのは,どうしてなのでしょうか。

上野さん 私が就職活動をしたのが1986年,入社が翌87年なのですが,メルセデス・ベンツ日本は私が就職活動をした年である86年の1月に出来たばかりで,まだ本格的な事業は始めていなかったんです。車関連の方からそのお話を伺い,興味を持ち,飛び込みで会社訪問をしました。そうしたらすぐに人事担当者,役員の方と面接ができて就職が決まりました。メルセデス・ベンツ日本の新入社員1期生で,同期は3人でした。

メルセデス・ベンツ日本に入社されてから,現在に至るまでどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

上野さん 入社後に営業職に就き,その後広報,ドイツ本社勤務,社長室長,副社長等を経て,2012年に社長職に就きました。

外資系会社と聞くと,海外出張が多いイメージなのですが,実際はどうですか。

上野さん 入社当初,営業職だったときは,当時の人事担当者が「新入社員は海外出張ではなく,まずは国内でしっかり働く。」という考えだったようで,ほとんど海外出張はしませんでしたね。初出張は,入社後1年半くらい経ってからだったと思います。しかしその後,広報に配属されたのですが,そうすると新車が発表される度に,数々の海外のモーターショーに出席したりと,頻繁に海外に行くようになりました。1泊3日の海外出張などもあります。今では,1年の三分の二は出張ですね。海外だけでなく,国内出張も頻繁です。

インターネットが発達した今でも,出張が減らないんですね。

上野さん むしろ増えたような気もします。スポンサリングやコラボレーションする機会も増えました。弊社に関わっていただくのですから,時間の許す限り社長である私が顔を出し,実際にお会いするようにしています。

社長自ら顔を出されるというのは,すごいですね。

上野さん 何年か前から,社長業と営業のマーケティングの担当を兼務していることもあり,私が顔を出す範囲も広がっています。

ところで,メルセデス・ベンツはここ近年の販売状況,特に日本国内の販売状況が好調ですが,その勝因はどのように考えられていますでしょうか。

上野さん メルセデス・ベンツは,ダイムラーという本体があって,ダイムラーは車を発明した会社です。その自負もあって,ダイムラー社は当初から一貫して,安全性を確固たるものとして確立させてきました。例えば,ダイムラー社は1980年に開発したエアバッグの特許を,「安全はすべてのメーカーが享受すべき」という信念のもと,当初より無償で公開しました。このように脈々と引き継がれた安全性というブランドイメージの浸透が理由の一つになっているかと思います。さらに加えて,近年は200万円台のAクラスからフラグシップモデルセダンのSクラスまで,様々な方のライフプランに合わせた商品を提供していることを広く知っていただいたことも大きいと思います。

“ベンツ”というと,良くも悪くも「高級車」というイメージがあり,一部の富裕層の方が乗る車であり,「敷居が高い」と感じられている方もそれなりにいると思いますが,インポーターとしてそのイメージに対し,何かお考えになっていることはあるのでしょうか。

上野さん 私も,お客様の中には「敷居の高さ」を感じられている方がそれなりにいらっしゃると思っております。「ベンツって最低でも1000万円はするんでしょう?」といったような話を聞いたこともありました。しかし,弊社のラインナップは,1000万円を超えるものばかりではなく,先ほども申し上げましたが200万円台のAクラスもあり,様々な価格帯のものがあります。お客様のライフプランに合わせた自動車を弊社がご提供できることを,もっとしっかり広報する必要があると感じております。

「敷居の高さ」を克服するため,何かされましたでしょうか。

上野さん 写真 いくつも企画しましたが,その一つに「売らないショールーム」を創ったことがあげられます。おそらく,「メルセデス・ベンツってどんなのだろう?」というお客様がいても,中には「販売店に行くと,売りつけられるんじゃないか。」と思い,躊躇してしまう方もいらっしゃると思います。そういった方でも,「売らないショールーム」であれば,売りつけられることもありませんので,ふらっとでも寄っていただき,少しでもメルセデスのことを知っていただけるかなと思い,「売らないショールーム」をまずは六本木に創りました。メルセデス・ベンツとお客様との繋がりの拠点にできればと思い,「メルセデス・ベンツ コネクション」と名付けました。メルセデス・ベンツ コネクションにはレストラン,カフェを併設し,リーズナブルな価格でお食事等を提供出来る場所も作りました。お寄りいただきましたお客様から,「ベンツって200万円台で乗ることも出来るんですね。」と購入の選択肢に入れていただいたこともありました。なお,この売らないショールームの「メルセデス・ベンツ コネクション」はドイツ本社でも評価され,海外でも同様のショールームが次々作られました。

貴社の取り組みが輸出されたということですね。

上野さん 弊社の取り組みが世界に広がるのはとても嬉しいですね。なお,海外の「売らないショールーム」の名称が「メルセデス ミー」として展開されたのに合わせ,「メルセデス・ベンツ コネクション」も2017年10月に「メルセデス ミー」に名称変更しました。

我々弁護士の業界も久しく「敷居が高い」と言われておりますが,上野社長から何かアドバイスを頂けますでしょうか。

上野さん やはり,業務内容を知っていただくことが重要ではないでしょうか。例えば,人はいつかは亡くなりますが,弁護士は,亡くなる前は遺言等で,亡くなった後は相続等でお力添えを頂ける,本来は身近な存在で,身近な存在でなければならないと思っています。こういったことを広く知っていただくのも,一つの方法なのではないでしょうか。

ありがとうございます。我々も貴社の取り組みを伺いヒントを頂き,皆様にとってより身近な存在として認識いただけるよう,努力してまいりたいと思いました。さて,話は変わりますが,最近,自動運転技術の凄まじい進歩がありますが,メーカー,インポーターとしてのお考えを伺いたいと思います。

上野さん メルセデス・ベンツも,安全性を第一とした将来の自動運転につながる技術を多数採用しており,年々進化させております。そこで感じることは,技術と法制度との調和です。いかに技術が進化しても,保険制度・保険会社を含めた法制度がしっかり整備されないと,実用的な技術にはなりません。また,その法制度は是非グローバルな視点で整備していただきたいと思います。というのも,仮に日本独自の法制度になってしまうと,せっかく有用な世界基準の自動運転技術が日本だけ利用できない,ということにもなりかねないからです。

本日はお忙しい中,貴重なお話を伺う機会を頂き本当にありがとうございました。このあと,せっかくなので「メルセデス ミー」に展示されているお車を色々拝見したいと思います。

上野さん こちらこそありがとうございました。是非,ゆっくりとご覧下さい。

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