関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

(株)ドリームインキュベータ代表取締役社長
  堀紘一さん

とき
平成14年8月28日(水)
ところ
株式会社ドリームインキュベータ
 (目黒区上目黒・中目黒GTタワー)
インタビュアー
内海英博会報広報委員会委員

 シリーズ第31回目は,(株)ドリームインキュベータ 代表取締役社長 CEOの堀紘一さんです。
 堀さんは,東京大学法学部卒業後,(株)読売新聞,三菱商事(株)に勤務し,ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)を取得され,その後,(株)ボストンコンサルティンググループ社長を務められました。
 ボストンコンサルティンググループ時代には,金融,ハイテク,消費財,レジャー,アミューズメントをはじめ数多くの業界に対し,マーケティング・営業戦略,Eコマース,中期戦略など数多くの戦略策定及び実行を支援されました。
 その後,日本経済の活性化には,しっかりしたベンチャー企業の成長が欠かせないという思いから,また,日本にかつてのソニーやホンダのような国際競争力のあるベンチャー企業をどんどん出すという夢を実現するために,(株)ドリームインキュベータを設立され,短期間で同社の東証マザーズへの上場も果たされました。
 現在,(株)ドリームインキュベータはベンチャー企業に対する支援や投資のほか,新規事業を中心とする大企業へのコンサルティングなどを手がけられています。
 堀さんの主な著書に,「強い会社はこうしてつくれ」(PHP研究所),「どんな「壁」でも突破できる!」(三笠書房),「人と違うことをやれ!」(三笠書房)等があります。

日本の弁護士とアメリカの弁護士の違いについてどう思われますか。アメリカの弁護士は日本の弁護士よりも積極的に提案することができ,Business Mindを持っていると言われることがあります。その点に関してどう思われますか。

堀さん まず弁護士の数が違いますよね。アメリカは日本に比べると司法試験(Bar Exam)に合格しやすいため,Market Needsに比べて供給過多になっています。つまり弁護士という看板だけではやっていくことができないので,そこに工夫が生まれるわけです。
 日本は,Law Schoolができたり,弁護士の数を増やすという流れはいいと思うんですが,まだまだ供給者論理が強いのではないでしょうか。
 日本独特の,供給を絞るという論理ですね。ですが,これからはもう少しUser Orientedな弁護士事務所が出てくることは十分ありえると思います。

弁護士の数は増えますが,弁護士になっただけで満足してしまう人も増える懸念があります。実際は,いい弁護士になるには一生自分を磨いていく必要があると思うのですが。

堀さん 資格というのは「何かをしてもよろしい」という証明書であって,「何かができる」という証明書ではない,というのが僕の持論です。ですから,司法研修所を出たからといって,一人前になったとかこれから安泰だなどと思うのは,とんでもない了見違いであって,今日から弁護士をやっていいですよという許可証を頂いたにすぎないのです。
 有能な弁護士になるためには,一生をかけて勉強し続けなければならないと思うんですね。
 経営コンサルタントとしての経験からいうと,最後は,教科書から学ぶのでもなく,先輩から学ぶのでもなく,顧客から学びます。自分の無知や思慮の浅さを,顧客から感じて学んでいくのです。
 弁護士の世界も同じなのではないでしょうか。顧客にはそれぞれのニーズがありますよね。その顧客のニーズを真摯に聞くと,今までの司法的な解釈では,経済合理性も無ければ,社会正義も達成できないというケースが現場には無数に転がっているということがわかってくるはずです。
 ですから,真の弁護士活動というのは,新しい枠組みで考えて答えを出していくことではないでしょうか。少なくとも僕はそう思っています。
 やはり判例にも限度があると思うんですね。判例というのは,その時代の環境においてそれが正しいという判断にすぎないのであって,時代は変わるわけです。ということは環境もまた変わるわけです。生物が進化するがごとく,法も進化しなくてはならないし法解釈も進化しなければならないし,弁護士も進化しなければならないと思うのです。
 僕は,物事や世の中を変える人は時間軸が長い人だと思っています。人間にとって一番重要なのは,志を持つということであり,それを達成するためには時間をかけても必ずゴールまで行くという人が世の中を変える人だと信じているのです。
 優秀であるかどうかは二の次だと思うのですが,それを全てだと思う人が多いですね。人間の価値を1本のものさしで計っていいのかと思います。それは日本の弱さのような気がします。
 ですから,弁護士には,できるだけ幅の広さと時間軸の長さというものを心がけて頂きたいと思うのです。
 僕は,21世紀は,軍艦で国を守るのではなくて,Legalで国を守る時代になると思っています。ですから弁護士の社会的意義というものは21世紀には飛躍的に上昇していくに違いありません。21世紀の防人はまさに弁護士です。
 日本の弁護士が進化して,アメリカの弁護士に打ち勝つくらいの実力をつけることは,国民的な悲願だと言ってもいい。
 日本人が健康で文化的な生活をしていくために一番重要なことは,リーガル面,情報面でアメリカに遅れないということだと思います。また私のような経営コンサルティングも弁護士と一緒に防人にならなくてはならないと思います。
 私はそういう意味で弁護士という職業に対するサポーターであると思っています。

弁護士は遠い将来をみすえる長期的視野を持つことが重要だと思いますが,近視眼的に目先の金銭にのみとらわれて,不祥事を犯してしまう弁護士もいるようですね。

堀さん お金というのはあとからついてくるものというのが僕の哲学です。だから僕自身はお金を求めたことは一度もありません。
 いい仕事をすればお金は必ず後からついてきます。僕の人生がまさにそうなのです。客のニーズを自分の経験で生かすには何をすればいいのかということを常に必死で考えてきました。そういったある種の危機意識が自分を品質劣化させない原動力になってくれていると思うのです。
 だから私は引退の日まで,グレードアップ,品質向上を考え続けていきたいと思っています。それができなくなったときは,やめるときです。
 日本人は,本当に位とか肩書きにしがみつきますね。それは止めたほうがいい。社会のほうもまた自由人であることの価値を認めないと,本当の民主主義は不可能だと僕は思います。

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