関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

中央葡萄酒株式会社代表取締役社長
三澤茂計さん

とき
平成21年5月3日
ところ
中央葡萄酒本社2階サロン
インタビュアー
東條正人 会報広報委員会委員長

 今回のわたしは,日本のワイナリーのトップを走る中央葡萄酒株式会社の三澤社長さんを訪ねました。

中央葡萄酒,グレイスワインの名称の由来を伺えますか。

三澤さん 昭和28年に3代目の父が中央葡萄酒とつけたようです。グレイスの由来は,ギリシャ神話に出てくる三美神(The Three Graces)からつけられたそうです。ゼウスの娘たちで,愛,慎み,美などの女神だそうです。

日本のワインというと甲州種による白ワインが有名ですね。

三澤さん そうです。日本の重要な固有品種である甲州種が最近のDNA鑑定で,シャルドネやピノノール,カベルネ・ソーヴィニョンなどと同様のワイン用品種(ヴィティス・ヴィニフェラ種)であることがわかりました。弊社ではこの貴重な甲州種でどのようにおいしいワインを造っていけるかということに主眼を置いています。

勝沼を車窓から見ていると棚仕立て(地面から高いところに棚を作ってぶどうを仕立てる)が一般ですが,甲州種を垣根仕立て(地面から近いところに梢を1~3本ほど取る方式,ヨーロッパでは一般的)で造るということはできないのですか。

三澤さん 日本で棚つくりが主流なのは,ヨーロッパと比べて降水量が多すぎることに由来しています。地面の湿気や水捌けの問題もあり,地面とは遠いところに房をつけさせるというわけです。しかし,棚つくりでは1本の木に500房ものぶどうの実をつけさせる(大木にして枝をいくつも伸ばして房をつける)ため,どうしても凝縮味のあるぶどうができなかった。そこで甲州種についても垣根式栽培が導入されつつあります。垣根式では1本の樹に精々15房程度しかつけないので凝縮したぶどうの実が収穫できるのです。

甲州種に垣根式の栽培をしているところは多いのですか。

三澤さん いえ,まだ数えるほどだと思います。実はわが社でも過去に甲州種の垣根栽培を始めた経験があるのですが,甲州種は垣根にすると,ぶどうの枝の徒長がはげしく,実がなりにくく,収穫量が取れないということで,一旦は断念したのです。
 それからというもの,わが社は徒長しにくいとかワイン用ぶどうの特徴である実の小さい甲州種ぶどうを探すためにも,種から植えるという実生栽培試験を始めたのです。
 これは果粒に通常2個の種が入っていますが,その種は親のぶどうとは違う遺伝子なのです。毎年500粒ほどを取り出し,小さいビニールポットに植えて,芽が出たら土に植え替えると違った形状を見せるぶどうがたまにでてきます。それらを残していくのです。遺伝子を一度リセットし,先祖返りを試みているのです。そのようにしてワインに最も適した新しい甲州種が生まれる可能性は,数万分の一くらいの確率と言われています。たぶん100年はかかりそうですので,孫やひ孫の代に託すしかありません。
 それで私の代ではそれは難しそうなので,2005年に既存の甲州種の苗木で垣根造りを再度始めたのです。これまで他の欧州系品種での垣根栽培での経験による自信もありましたし,ドイツで垣根の甲州種を作ったところ成功したというニュースもありました。
 私も還暦をすぎ,残りの人生も限られてきていますので,実生栽培もですが,垣根式甲州種を成功させ一般化させることを大きな目標としたいと思っています。

さて,近時,甲州種ワインを輸出する試みがなされているそうですが。

三澤さん 現在全世界的にすごい和食ブームで大都市にはいくつもの和食レストランができています。和食は素材を生かした料理が多いのですが,そういった中で繊細,透き通る,控えめであるが凛とする,爽やかなどの特質を持つ甲州種ワインが合うのです。業界としてもJAPANブランドとして海外での輸出に勢力をあげているところです。
 弊社でもイギリスに輸出した経験がありますが,その際,2004年にボルドー大学のデュニ・デュブルデュ教授から教えを受けまして,果汁搾汁,ワイン貯蔵段階でなるべく酸化させないという課題を与えられたのです。
 そのため,弊社では,ドライアイスを使い,炭酸ガスを発生させ,酸素に触れさせない方法を取ったのです。翌年,日本でこの初めての試みがNHKで放映されたところ,税務署からお叱りを受けました。というのも日本の酒税法は掲名法すなわち名前が登録されていないものは使ってはいけないという法律で,炭酸ガスは掲名されていないというのです。だから果実酒ではなくて雑酒だというのです。外国の法律は逆で使ってはいけないものがリストアップされており,ニューワールドで顕著ですがフランスでもドライアイスの使用はよくあることです。
 それで,国税庁に赴きまして,私のワインが雑酒となるのは止むを得ないが,しかし,外国から輸入している白ワインの約70%が雑酒の分類になると反論したのです。そうしたところがきっかけになったのか3ヶ月後に法律が変わり,炭酸ガスの使用が許可になりました。今年も同じ方法でワインを造れる。喜びが突き上げてきました。

さて,最近中国で,「山梨勝沼」という商標登録がなされたという話題がありました。

三澤さん たぶん中国でワインを造って,山梨勝沼とつけて売り出すという考えだと推測しておりますが,登録が認定されてしまうと,勝沼産のワインを中国に輸出したり売り出したりができなります。当然,そのようなことがあってはならないと考えておりますので,山梨県と甲州市,山梨県のワイナリー業界等が共同して,中国商標局に異議の申立てをすることにしました。かつて青森のりんごを狙って,中国の果実業者が「青森」という商標登録がした際には異議が通りまして,青森は使えなくなったのですが,ところが,今度は「青淼」と水が三つの字で商標登録をしたということで,まだ争いが続いているようです。

三澤社長さんは調停委員をされていたことがあるそうですね。裁判員裁判も5月にはスタートしますが,どのような感想をお持ちですか。

三澤さん 調停委員をやっていたときの経験では事件を担当したとき多少の法的知識を持っていたほうがよいと思いました。今の刑事裁判でも1審と控訴審とで結論がわかれる事件があるほどなので,一般人はもっと揺れ動くと思います。基礎知識がなくても大丈夫ということですが,あったほうが判断がより容易になるように思います。総合的には一般人が常識にのっとって中立的な判断をするというのはよいことだと思います。

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