| 第7節 アンケート調査の結果について |
| 1.調査結果について 回収されたアンケート調査の結果は、一般(一部交通事故被害者も含む)が70通、交通事故による被害者が164通の合計243通であった。 調査方法による問題から、被害者側として弁護士と接触(相談ないし依頼)している方が多く、その面では、特殊な調査結果となってしまった。 個別的な問題点は、各論点別の記述の中で取り上げられているので、ここでは、調査結果をもとにして全般的な特徴を述べることとする。 2.結果から見えてくるもの (1)まず、第一に感じた点は、犯罪被害者が自分たちの意見や声を上げる場がなかったのではないか、という点である。それは、アンケートの「第\章その他」で、記述式の部分の記述が非常に多いところに端的に現れていると感じられる。アンケートの集約では、量的な制約から、同種の意見や長い記述については手を加えさせていただいたが、半分を超える方々がなにがしかの意見を書いていた。 一般的にはアンケートでは選択式の質問には良く答えてもらえるが、記述式の場合にはなかなか記載してもらえないのが通常である。 それにも関わらず、これだけたくさんの人たちが記述したという事実自体が、意見や不満を持ちながら、それを発言する機会があまりなかったこと、あるいはきちんと聞いてもらえなかったことの現れと考えられるのである。 このような小規模な調査ですらこれだけの意見が集まるのであるから、もっと大規模で、かつ、偏りのない形での調査を行い、また、単に調査者が必要と考える項目だけでなく、犯罪被害者自身が発言したいことを述べてもらう意見集約の機会が必要なのではないかと思われる。 日本において、犯罪被害者に対する支援が遅れていることが指摘されて久しいが、犯罪被害者の実情調査が色々な面で困難を伴うことから、どうしても後回しにされてきた面もある。また、ごくわずかな例を除けば、自分たちの意見を述べる機会を与えられることもなかった。 マスコミなどの取材はあっても、必ずしも自分たちの言いたいことが報道されるわけではなく、自分たちの意見が述べられている訳ではないことはアンケート結果にも表れている。 (2)第二に、犯罪被害者の多くが持つ最大の不満としては、被害者側のあらゆる面の被害実状が加害者側に理解されていないと感じていることである。更に、民事裁判を起こしてもそれは相手方に伝わらないとも感じているの点であり、また、加害者側だけではなく、捜査官や裁判官、依頼した弁護士などにも理解してもらいたいのに、理解されないと感じているの点である。 捜査官や弁護士などについては、問題の重要性を強調し、業務のやり方などについての工夫をすることによってある程度対処すること可能ではあろう。しかし、加害者に対して、被害の実状などを理解してもらうためには、現在のような刑事手続・民事手続の状況では困難さがある。 このような状況に対して、「修復的司法」ないし「回復的司法」という考え方が提唱されている。これは被害者の精神的被害の回復を図るために、司法制度を通じて加害者と向き合う機会を作る制度のことを言う。この点に関して、アンケートの中には批判と賛同の両方の声がわずかながら存在していた。 「回復的司法」というような手法が適当かどうかは別として、被害者が加害者に対して、被害の実状と声を投げかけることのできるようなシステムなどを考える必要はあるのではないだろうか。 (3)更に、被害者の声として大きいのは、「刑が軽い」ということである。特に交通事故の遺族などには、極めて強いものがある。また、「終身刑(現行法の無期懲役ではなく仮釈放のない絶対的な終身刑の意味と解される)を作ってほしい」との回答もあった。 ただ、この問題については、必ずしも解決策があるわけではない。あるアンケートの回答には、「どのような刑が下されても被害者は納得するわけではないでしょう」とあったが、単純に刑罰を重くしさえすれば被害者が満足するわけではな いということも事実であろう。 刑罰は単なる応報感情の結果ではない。様々な要素を考慮したうえで、決定されているものであり、被害者が納得しないから重くするというものではない。 従って、単純に、刑罰を重くせよと結論づけられるものではないが、犯罪被害者が刑罰に対する不満感が相当程度にあることについて、その原因の分析と何ら かの対処を考えていく必要があるのではないかと思われる。 (4)また、被害者が相談したり、悩みを話したりする窓口が少なく、わからないという声が多かった。ボランティア団体が少ないという声も多かった。欧米並にしてほしいという声もあった。 まさに、我が国において、被害者支援制度が遅れていることの端的な現れであり、弁護士・弁護士会を含めて、関係者は犯罪被害者が簡単に相談窓口を見つけられ、利用できる制度を作っていく必要性が強く訴えられていた。 犯罪被害者は、孤立させられている。多数の相談窓口、それも被害者のニーズに即した相談・支援窓口を設置するとともに、現場の警察官などからも紹介を受けられるようにし、被害者が求めるときにすぐに相談に行ける体制を作っていく必要があるのではなかろうか。 【参考文献】> 宮澤浩一ほか編『犯罪被害者の研究』(成文堂) 諸澤英道著『新版被害者学入門』(成文堂) 法務省法務総合研究所編『平成11年版犯罪白書−犯罪被害者と刑事司法−』宮澤浩一ほか編『講座被害者支援2犯罪被害者対策の現状』(東京法令出版) 松尾浩也ほか編『刑事訴訟法を学ぶ(新版)』(有斐閣) 松尾浩也ほか編『刑事訴訟法の争点(新版)』(有斐閣) 田宮裕著『刑事訴訟法(新版)』(有斐閣) 田口守一著『刑事訴訟法(二版)』(弘文堂) 松尾浩也著『刑事訴訟法 上(新版)』(弘文堂) 藤本哲也著『刑事政策概論(二版)』(青林書院) 守山正著『刑事政策講義ノート』(成文堂) 加藤久雄ほか編『刑事政策』(青林書院)野間礼二著『刑事訴訟における現代的課題』(判例タイムズ社) 警察庁編『警察白書』平成10年版九州弁護士会連合会/大分県弁護士会編『犯罪被害者の権利と救済』(現代人文社) 東京弁護士会法友全期会編『犯罪被害者のために〜法律相談・交渉の手引き』高橋則夫「被害者の財産的損害の回復」『ジュリスト』1163号72頁 太田達也「被害者に対する情報提供の現状と課題」同18頁川出敏裕「刑事手続における被害者の保護」同39頁 |