第3章 各種団体の支援活動

第1節 司法関係機関(警察・検察)における支援活動
1.警察における支援活動

(1)警察における、支援活動が初めて行われたのは、警察が1980年の犯罪被害者等給付金支給法の制定(翌年より施行)及びそれに続く1981年の財団法人犯罪被害救援基金の設立に主導的役割を果たしたときである。

  前者は、犯罪で不慮の死を遂げた被害者の遺族や障害等級4級以上の重度の障害を負った被害者本人の申請を受け、公安委員会の裁定に基づいて給付金を支給するというものである。制度発足以来1998年までの間に約4000人の遺族被害者などに対して、総額で約93億円が支給されており、昨年は265人の遺族被害者に計6億4000万円余が支給された(その活動の概要については、第3章第5節を参照)。

 後者は、被害者の子弟に対して奨学金等を支給することを目的とするもので、設立以来、奨学生延べ約1400人に対し、約12億円が支給された。

(2)次に、1996年2月1日警察における犯罪被害者支援指針として、警察庁に おいて被害者対策要綱(警察庁次長通達)が策定され、これが警察の被害者施策の基本となる。
 @要綱においては次の5点を、被害者対策推進上の基本的留意事項としている。
 ア.被害者ニーズへの対応
 イ.総合的な施策の推進………犯罪被害者対策室の設置
 ウ.重点的な施策の推進………実態調査結果等から、深刻な精神的被害を受けており、かつ、警察の捜査活動の中で二次的被害を受けている例が多く見られる身体犯、とりわけ女性の性犯罪被害者や殺人及び傷害致死被害者の遺族への対応に重点を置いた支援の推進。また、精神的に未熟な少年被害者の場 合も、心の傷が大きく、被害者が加害者に転じることが多いとの指摘もあり、被害少年の健全育成の観点から、同様重点対象に挙げられた。

 エ.他機関、民間団体等との連携………被害者支援連絡協議会の設立
 オ.各都道府県警察における独自施策の推進
 
A次に、要綱においては、個別分野施策の推進として、次の各項目が挙げられている。

ア.被害者の救援
 (a)被害者への情報の提供
  ・「被害者の手引」の作成配布
  ・被害者連絡担当係の設置
  ・被害者への訪問・連絡活動の推進
  ・ひき逃げ事件被害者に対する捜査状況の連絡のマニュアル化

 (b)被害者の精神的被害の回復への支援
  ・被害者カウンセリングなど連絡体制などの整備
  ・被害少年への支援体制の確立

 (c)被害の補償、被害品の回復
  ・被害回復センターの設置
  ・速やかな還付手続などの徹底
  ・犯罪被害者など給付金支給法の適切な運用
  ・暴力団被害者に対する援助措置などの充実

 イ.捜査過程における被害者の第二次的被害の防止、軽減
  ・告訴・告発、被害届などの適切な受理
  ・犯罪捜査における被害者への対応の組織的改善
  ・性犯罪捜査における婦人警察官による事情聴取の拡大など
  ・性犯罪捜査指導官の設置
  ・犯罪被害者への旅費の支給
 
 ウ.被害者などの安全の確保
  ・暴力団の被害者などの安全の確保
  ・女性警察職員による被害相談体制の整備
  ・家出、行方不明者対策の強化
  ・生活安全情報の提供、相談の強化
 
 エ.被害者対策推進体制などの整備
  ・被害者対策推進体制の整備
  ・被害者との対応に関する基本原則の組織全体への徹底と教養の実施
  ・犯罪被害者救援基金などとの連携の強化

(3)被害者対策要綱の内容及び実施状況
  被害者対策要綱の内容は概ね上記で述べたとおりであるが、具体的にどのように実施されているかについては、アンケート(資料3)を実施し、茨城県を除きご回答をいただいており、その集計については「犯罪被害者救済に関するアンケート結果まとめ」(資料4)のとおりであるが、これについて以下簡潔にみていくこととする。

 @被害者対策室の設置時期、設置場所、スタッフ人数、具体的活動について被害者対策室の設立時期は、1996年に警視庁に設立されている他概ね1999年以後である。
 被害者対策室の常勤スタッフの人数は、警視庁の19名を例外とすれば、概ね10人以下の体制であり、3名から5名という県警も4県あった。
 被害者対策室の設置場所は、警察本部とは別のビルに設置している埼玉県警を除いて、すべて警察本部内に設けている。

 具体的活動としては、管轄内の警察官の指導、関係団体における研修、被害者支援の現状調査などの外、実際の被害者との電話相談およびカウンセリングなどを実施している。

 なお、最近の特徴的な活動としては、医療機関などへの付添および送迎に加えて、加害者の刑事事件の法廷への付添および送迎を行うところも出てきている(被害者の遺族の証人尋問に限らず、単なる法廷傍聴の場合も含む)。
 
 A「被害者の手引」の作成配布
 関弁連管内すべての県警で実施、被害者本人用、遺族用、女性被害者用、交通事故被害者用に分けている県も見られた。

B被害者連絡制度
 殺人、強姦、強制わいせつ、傷害致死、全治二ヶ月以上の傷害事件などの身体犯の被害者、遺族のうち希望する人に、捜査状況、容疑者が逮捕された場合に名前や年齢、どこの検察庁に事件を送ったか。起訴、不起訴などの検察の処分結果、起訴した先の裁判所を知らせるものである。警察庁によれば、1997年後半、該当する被害者の9割、約1万4000人が連絡を希望しているとのことである。
 なお、対象がより広い県警もあり、群馬県、山梨県、長野県の各県警は、侵入盗などなども対象に加えているようである。

 C被害者カウンセリングなど連絡体制などの整備
 カウンセラーの人数は、専属(職員)のところは、概ね5名以内であり、1名しかいない県警も存在する。
 さらに、年齢構成もまちまちであり、特に若いカウンセラーしかいない場合は、年輩の被害者の信頼を得るのに慎重な配慮が望まれる。

 D被害少年への支援体制の確立
 被害少年向けのサポートセンターの設立時期は、1960年に設立している警視庁を例外とすれば、1998年以後に設立されている。
 常勤スタッフは、10名以上が多く、設置場所も被害者対策室と異なり、警察本部以外若しくはそれ以外にも設けられている都県が多い。
 具体的活動としては、被害者支援としてのカウンセリングなどの他、街頭補導のように犯罪抑止の見地からの活動もしている。

 E性犯罪捜査における被害者への対応の組織的改善
 性犯罪捜査の状況は、各都県で大きく異なるが、いわゆる痴漢被害などの件数の差を考えると、ある程度の差はやむを得ないものと思われる。
 各都県における具体的な活動としては、女性の性犯罪捜査員を数多く配置し、半数の都県で特別編成チームを結成するなど、性犯罪における特殊な被害者心理に対応した犯罪捜査を目指しているようである。

 女性警察官の常駐する交番も各都県で大きく異なるが、その必要性は地域差はないものと思われるので、整備の遅れている警察は検討を要するところであろう。
 なお、警察アンケート結果の「5、2次被害軽減策」に、診断書料、代替用着衣の支給制度が挙げられているが、性犯罪の被害者が事件後に婦人科で証拠 保全のための検査、診察および一定の応急的治療を受けた場合の費用は含まれておらず、これについても二次被害軽減の見地から、支給していくべきものと思われる。

 F被害者対策推進体制などの整備
 被害者支援連絡協議会については、それぞれの都県で分科会などの勉強会などを実施しているようであるが、未だに研究調査のレベルに留まるものが多く、被害者支援の具体的活動状況についての回答は殆ど見られなかった。

Gその他
 ア.犯罪被害者対策室以外の犯罪被害者支援を担当する警察官の設置未だになしと答える県が4県あり、配置の立ち後れが見られた。
 仮に配置しているとしても兼務とするところがあり、特に1000名体制を敷いている県などは具体的にどれ程の支援活動をしているのか、調査改善が必要と思われる。

 イ ・捜査過程における被害者の二次的被害の防止・軽減
  ・被害者からの事情聴取する部屋について
  被害者用の取調室とは別に設置。
  ・その他
 各警察が二次被害軽減を目指して犯罪被害者支援車輛の導入などを実施している。

(2)警察の被害者支援の今後の展望及び問題点
 当然のことながら、各警察本部単位での被害者支援体制のより一層の充実が必要である。
 ことに、現在は主に各警察本部単位で被害者支援の活動が為されているが、実際に被害者を直接に扱っているのは各警察署単位であるため、本来カウンセリングなどで支援されるべき被害者の相当数が支援されていない状況にあると推測される。そこで、各警察署単位でのカウンセラー、医師、弁護士その他のネットワークの確立が必要である。
 この点について、警察も、弁護士会など関係機関とのより緊密なネットワークの構築、当然のことながら必要予算の確保、及び、地区単位(各警察署)の犯罪支援ネットワークの構築などを挙げている。

2.検察における支援活動  

 検察庁において、犯罪被害者の支援という観点からの具体的な活動が行われるようになったのは、1999年2月9日に被害者など通知制度に関する通達を発し、同年4月1日からこれが実施されるようになってからのことと思われる。なお、同通知制度は1991年3月に福岡地検で初めて制度化され、徐々に他の検察庁にも拡大していったものを統一的な被害者など通知制度として実施することになったも のである(宮澤浩一ほか編『講座被害者支援2犯罪被害者対策の現状』東京法令出版219頁)。

(1)被害者など通知制度の内容
 ア.通知対象事件  受理したすべての事件
 イ.通知の対象者
 (a) 被害者、その親族又はこれに準ずるもの
  弁護士を代理人とした場合は弁護士に通知(委任状は必要)。
 (b) 目撃者その他の参考人
 ウ.通知の内容
 「事件の処理結果」、「公判期日」、「刑事裁判の結果」のほか「事件の処理結果」などに準ずる事項(たとえば、公訴事実の要旨、身柄の状況)も通知の内容となっている。

 エ.通知の実施方法
 (a) 通知希望の確認による通知
 被害者などには、取調の際などに通知を希望するか事前に確認し、希望する者に対して「事件の処理結果」、「公判期日」、「刑事裁判の結果」などを通知する。

 (b) 照会による通知
 被害者などやその代理人弁護士から照会があったときは、上記に同じ。

 (c) 「事件の処理結果」などに準ずる事項の通知
 被害者などから特に求めがある場合に通知される。

 (d) 通知希望の確認及び通知を行わない場合
  ・関係者の名誉その他の利益を不当に害するおそれがある場合
  ・関連事件の捜査又は公判の運営に支障を生ずるおそれがある場合
  ・将来における刑事事件の捜査又は公判の運営に悪影響を生ずるおそれがある場合
  ・犯人の改善及び更生を不当に妨害するおそれがある場合
  ・新たな紛争又は事件を誘発するおそれがある場合など

(2)被害者支援制度について
 犯罪被害者が犯罪による直接の被害だけではなく、その後の警察・検察庁での事情聴取や裁判所での証人尋問などにおいて、二次的な精神的被害を受けることがあるので、その支援などのために1999年10月より各地方検察庁で被害者支援員の導入を開始した。

 具体的な業務内容としては、犯罪被害者に対して、相談受付、検察庁への来庁時の応対、刑事手続の説明、公判廷への付添い、他の被害者支援機関の照会などである。
 相談件数もそれなりにあり(東京地検では、多い日だと1日20件以上)、どこでも概ね好評で、被害者がいかに渇望していたかが分かる。

 なお、関弁連管内の各地方検察庁について被害者支援員の設置状況を調査した結果は別紙「被害者支援員の設置状況」のとおりである。

(3)記録の閲覧  確定記録の閲覧は、刑事訴訟法53条及び刑事確定訴訟記録法により従来から原則として閲覧・謄写ができたが、不起訴記録については交通事故に限り、しかも主に実況見分調書に限って閲覧・謄写が許されていたところ、今後については、すべての事件について、犯罪被害者は実況見分調書、死体の鑑定書、検視調書、犯罪現場の写真撮影報告書など、現場保存のために作成された客観的証拠で当事者の努力によって代替することができないものは、民事訴訟で必要性がある場合は、開示が相当でない場合を除き閲覧、謄写ができることになった(資料5)。

 開示が相当でない場合は、捜査公判に支障を来す場合、関係者のプライバシーを侵害する場合がある。

(4) 問題点
 まず、現在の通知制度では、被疑者、被告人の住所は通知の対象外となっている。起訴されて確定した場合は、確定記録として被告人の住所を知ることができるが、起訴猶予になった場合は、被害者が被疑者の住所を知る機会はない。  起訴猶予で釈放された後、被害者が民事訴訟を起こす場合、被疑者の住所が分からないと訴訟提起が困難になるので、この点についても通知の対象とすべきではないか。

 次に、被害者支援員の設置状況を見ても分かるとおり、支援員はすべて男性で、かつ検察庁に務めていた関係者で占められているが、被害者に女性がいることを考えると、支援員の一人は女性にすべきと思われるし、また、カウンセラーの役割を果たす必要があることを考えるとそれに必要な資格を有するものを採用すべきであると思われる。

 最後に、警察、検察庁の捜査に対して不満を持っている犯罪被害者に対しては、警察の被害者ホットラインに回すとか、担当検察官に連絡してしかるべく対処してもらうことを考えているようであるが、果たして功を奏するであろうか。  むしろ、担当検察官が被害者から直接、じっくりとその不満を聞いた上で処分結果に反映させていく努力が要請されるのではないか。


              犯罪被害支援員の設置状況

※2000.7.28現在で判明しているもの