第3節 民間における支援活動
 関東地方において犯罪被害者支援活動をしている主な民間支援組織を取り上げ、その組織や活動内容を調査した。 なお、調査対象組織のほか、全国被害者支援ネットワーク参加組織を加えた支援組織の一覧表を最後に掲載したので、組織名・連絡先・相談日などはこの表を参照されたい。

1.東京医科歯科大学犯罪被害者相談室

(1)設立の沿革
 1991年10月、「犯罪被害給付制度発足10周年記念シンポジウム」において、東京医科歯科大学の山上皓教授(犯罪精神医学)がアメリカの充実した犯罪被害者援助活動を紹介し、日本における救助活動開始の必要を訴えたことが一つ の契機となり、翌1992年3月、後記財団法人犯罪被害救援基金の委託により、日本で初めての犯罪被害者のための相談室が東京医科歯科大学難治疾患研究所犯罪精神医学教室に開設された。

 この相談室は山上教授の研究の一環として開設されたもので、部屋と電話機を大学から提供を受け、資金面は上記財団から援助を受けて運営されてきた。

(2)組織の形態
  山上教授のほか、室長穴田富美子氏、スーパーバイザー江幡玲子氏、精神科医3名、心理カウンセラー4名、ボランティアからなっている。

(3)活動の実態
 犯罪被害者支援の研究と実践に関し、我が国の草分け的存在であるだけでなく、犯罪被害者支援問題の最先端を走り続けている。
 その活動は、相談室における電話相談や個人カウンセリングなどの具体的個別的支援はもとより、被害者援助の研究、被害者援助者の育成、他の支援組織の立ち上げ支援・同組織との連携・指導に至るまで全国的な規模で展開されている。


 @電話相談・個人カウンセリング(個人面接)
 相談は電話相談から始まる。最初から被害者が電話してくる場合と、より専門的な支援を求めて他の機関から紹介されて電話がくる場合とがある。
 相談者は日本全国にわたる。

 1回目の電話相談後の流れは、電話による継続相談、個人面接、他の専門機関の紹介に大きく分かれる。他の専門機関の紹介というのは、治療が必要な場合には信頼できる病院の紹介、刑事事件として捜査が必要な場合には警察への通報、法的解決が必要な場合には弁護士会の紹介などである。


 電話相談・個人面接の回数は年々増加し、1998年3月までに計1,246人から相談を受け、電話相談・個人面接などの回数は総計4,200回に上っている(表1参照)
 相談内容は、殺人、強姦その他性暴力、暴力犯罪、いじめ、交通事故など多岐にわたり、その被害者や遺族から相談を受けている(表2参照)。

表1.年度別「相談受理件数」の推移(1992年度〜1998年度)


表2.年度別「新受理事例」の被害類型別内訳(1992年度〜1998年度)・B(被害者の陳述に基づく類型)
 

 なお、2000年4月に後記(社)被害者支援都民センターが設立されたことに伴い、犯罪被害者相談室の協力者の多くが同センターに移って相談業務を行うこととなったため、犯罪被害者相談室の相談受理件数は減少することが予想されるが、同センターでは対処できない、専門的な知識経験を要する案件を中心に相談業務を継続している。

 A被害者の心理研究・援助方法の開発・援助者の育成
 上記相談室の最大の特色は、単なる支援実行組織ではなく、大学の研究室としての研究部門を兼ね備えていることである。

 山上教授は我が国における被害者心理の研究、被害者援助方法の開発及び被害者援助者の教育を行うことの必要性を強く認識し、これを提唱したところ、1996年4月、財団法人セコム科学技術振興財団の寄附を受け、3年期限で東京医科歯科大学難治疾患研究所に「被害行動学(セコム)研究部門」が開設されるに至った。同研究部門を統括したのは同大学小西聖子助教授(現武蔵野女子大学教授)と岡田幸之助手である。

 この研究部門は被害者相談室に蓄積された多くのデータの解析を基にして上記研究・開発・教育に大きな成果を挙げ、1999年3月に終了した。
 今後、後記全国被害者支援ネットワークが相談員の研修機関をも兼ねることを期待されるが、その研修のマニュアル作りは犯罪被害者研究室の研究結果も参考にしながら進められることであろう。

 B全国被害者支援ネットワークの構築
 1998年5月9日、全国の民間支援組織8団体からなる全国被害者支援ネットワークを設立。山上教授が会長に、穴田室長は理事にそれぞれ就任し、事務局を犯罪被害者相談室内に設置した。
 以後も、犯罪相談室のスタッフが他の支援組織の指導スタッフの研修を行ったり、新たな組織作りに協力し続けている。

 現在、ネットワーク参加組織は17団体に増え(具体的な組織名は後述)、合同研修などを行い、互いに連携しつつ活動の充実を図っている。特に、ボランティアの指導を重視し、その指導にあたるトレーナーやコーディネーターのための研修マニュアルづくりなどを行うともに、犯罪被害者基本法の制定を目指し、1999年5月15日、「犯罪被害者の権利宣言」(資料6)を発表するなどの活動も行っている。

【ネットワーク参加組織】
 犯罪被害者相談室、水戸被害者援助センター、大阪被害者相談室、石川被害者相談室、北海道被害者相談室、紀の国被害者支援センター、広島犯罪被害者・こころの支援センター、オホーツク被害者相談室、社団法人被害者サポートセンターあいち、徳島県警察犯罪被害者相談所、静岡犯罪被害者支援センター、社団法人京都犯罪被害者支援センター、長野犯罪被害者支援センター、砺波被害者相談室、社団法人被害者支援都民センター、福岡犯罪被害者支援センター、犯罪被害者支援センターみやぎ

 山上教授と穴田室長は、日本全国、いつでも、どこでも一定水準以上の支援を被害者が早期に自然な形で受けられる体制作りを目指しており、前記ネットワーク参加組織を全国に100箇所ほど網羅することを目指している。

 Cその他の活動    
 犯罪被害者相談室は、1996年から「犯罪被害者支援フォーラム」を財団
法人犯罪被害者救援基金、日本被害者学会と共同主催してきたが、全国被害者支援ネットワークが設立されたことにより、共同主催者の地位を同ネットワークに発展的に譲り渡した。1998年に開催された第3回前記フォーラムでは、アメリカとイギリスの民間支援組織のコーディネーターを招き、欧米先進国の実状との比較において、我が国の支援活動の課題を論じ合った。

 その実績から、全国の警察や弁護士会から依頼を受け講習や講演を頻繁に行っているほか、衆院法務委員会における先の犯罪被害者保護法案の審理において、山上教授が識者として意見陳述を行うなどした。

(4)同相談室発行の「犯罪被害者の心理と援助ー被害者援助に携わる人のためにー」という小冊子は、犯罪被害者援助の手引書として有用である。

2.武蔵野女子大学心理臨床センター

(1)沿革と設立目的
 1999年4月より本格的な活動を開始。同センター専任教員小西聖子教授は、東京医科歯科大学助教授時代から犯罪被害者に対する相談活動を行っており、その後武蔵野大学内に本格的な活動の場として同センターを設置した。

 同センターの設立目的
 @犯罪被害者、暴力被害者(DV・幼児虐待など)の精神的ケア
 A大学院生の臨床実習の場
 但し、実際の相談に当たるのは原則として3ないし4年以上の経験のある臨床心理士などである。事例の重症度によって適当なセラピストをあてている。

(2)組織の概要
 大学専任教員2名、非常勤相談員6名からなる。 2、3名が常駐し、電話相談及び面接相談を行っている。 活動拠点は武蔵野女子大学内にあり、被害者のアクセスは電話による。 運営資金は大学からの予算とボランティアで支えられている。

(3)活動の実態
 被害者からの電話による相談受付から始まる。その結果、事例により病院、警察、弁護士会に紹介することもあるが、それらは希で、多くは面接を行う(相談者が面接を希望する場合と、センター側で面接を必要と判断する場合とがある)。面接では、センター内で個別にカウンセリングや心理療法を行う。


 カウンセリングの多くは長期間に及ぶ。
 1999年6月から同年12月までの間で、電話相談が約400件、うち面接  に至ったのは約300件ある。多いときは一日に7,8件もあり、相談室が不足するほどである。今年に入り相談件数は増加の一途である。
 相談事例のなかには性的虐待、性的暴力、交通事故が多く、相談者の8割が女性である。犯罪被害者のほかにソーシャルワーカーや学校の教師からの相談もある。

(4)課題
 相談件数が多く、益々増加傾向にあるにもかかわらず、予算、相談室、人員すなわち人的・物的資源が不十分であるため、新規ケースに十分な対応ができない状況にあり、これが今後の課題の一つである。

3.東京犯罪被害者支援センター

(1)設立目的
 1997年6月開設。
 犯罪被害者を市民の立場から援助することを目的とする。

(2)組織の概要など
 会長は元日弁連会長土屋貢献氏。運営委員は弁護士、刑法学者、ジャーナリストらからなる。
 スタッフは約20名で、全員ボランティア。
 運営資金は約400名の賛助会員からの会費(一口3000円)でまかなっている。

(3)活動の実態
 @電話相談
 毎週火・木曜日午後6時から午後9時まで、土曜日は午後1時から午後6時まで実施。

 A犯罪被害被害者など給付金支給法の紹介、他の専門機関の紹介。
 心理カウンセリングの専門家はいないが、弁護士の支援を受け、実務的相談には即応できる。
 開設以来、相談件数は約400件。裁判などを支援しているのは4,5件。

4.社団法人被害者支援都民センター

(1)沿革
 2000年4月1日に設立。同月3日業務開始
 意識の高揚を図り、もって被害者の被害の回復や軽減を図ることを目的とする。その実践的基盤を東京医科歯科大学犯罪被害者相談室の相談実績に置く。

(2)組織の形態
 東京医科歯科大学山上教授を代表とする、各界の有力者31名の発起人により設立された社団法人。社員は約3600名。東京都からも資金援助を受けている。
 組織構成は以下のとおり。




 スーパバイザーは東京医科歯科大学相談室の関係者で、相談・支援担当者は同相談室でトレーニングを積んだ方達である。相談員は現在13名で、全員女性である。電話相談員は連日3名ずつ待機している。

(3)活動の実態
 @電話相談・面接相談
 精神科医、臨床心理士及び専門的な訓練を積んだ相談員が対応。専用電話が3台、面接相談室が2室用意されている。 電話相談は毎週月曜日から金曜日まで午前10時から午後4時まで、面接相談は必要に応じて実施している。
 相談者は全国に広がっている。
 本年5月末現在、電話相談件数は合計351件、面接相談件数は30件に上っている。事件内容は多岐にわたり、主なものは次表のとおりである。業務開 始後わずか2ヶ月足らずしての数字であることを考えると、かなりの件数であると言えよう。

                   

 A直接支援
 法廷や病院への付添、被害者方へ家庭訪問して身の回りの世話をしたり、各種支援制度に関する情報を提供することなど。
 本格的な実施は平成13年度からであるが、希望に応じて、法廷への付添、被害者方への訪問相談を既に行っている。直接支援は原則として都民に限っている。法廷付添は、今年5月までで既に10回ほどの実績がある。

 B被害者自助グループへの支援
 犯罪被害者遺族だけの交流会を月に1回開催。また、自助グループのリーダーを育成するための研修の実施。参加者は全国にわたっている。

 C関係機関・団体との連携
 全国被害者支援ネットワーク内の支援組織のほか各地の民間支援組織、裁判所・検察庁・警察などと連携しながら、被害者支援を行う。東京都犯罪被害者支援連絡協議会へも加入。
 警視庁との関係で言えば、警察官から支援センターの存在を被害者に教えてもらうこととなっている。
 刑事訴訟法の一部改正に伴い、性犯罪の被害者が証人として出廷する場合、東京地裁に事前に連絡すれば、証人待合室を特別に用意してくれるようになっている。

 D相談員・被害者支援ボランティアの養成と研修
 被害者支援ボランティアのセミナーを2000年7月に開催予定。全国から 希望者が殺到し、100名に絞った程の盛況である。

E被害者の実態などの調査研究

F被害者支援活動に関する広報啓発事業
 役所の機関誌やホームページ(アドレスhttp://www.shien-c.org)の利用

(4)課題
 活動を開始して間がないために、全般的に手探り状態の場面が多い。
 特に、他の連携機関へ紹介する際の選択がむずかしいとのこと。
 財政的基盤が不十分。
 直接支援を充実させることを重要課題としている。

5.財団法人犯罪被害救援基金

(1)設立の趣旨・目的
 1981年5月21日に設立された財団法人。
 犯罪被害者など給付金支給法による給付金の額や受給者の範囲などには限界があり、必ずしも犯罪被害者及びその遺族の救済として十分でない面があることを踏まえ、国庫とは別に国民から浄財を募り、これを基金として犯罪被害遺児などに対する学資の給付などを行い、犯罪被害者救済制度の一層の充実を図ろうとする。

(2)組織など
 役員、評議員及び職員から構成されており、業務運営は、理事会、評議員会、奨学生選考委員会及び障害見舞金給付委員会によって行われている。
 役員及び評議員は各界から選出されている。
 資金調達の中心は、基金の運用益及び一般からの寄附金。

(3)事業の概要
 @奨学金給与事業・生活指導相談事業
 生命身体に対する犯罪被害者の遺児への救援事業で、これまで1397名の奨学生に対し、12億4567万円の奨学金を給与している(1999年3月現在)。
 犯罪は強盗殺人、殺人、放火殺人、傷害致死、特異事件(三菱重工爆破殺人事件・京王バス放火殺人事件・オウム関連サリン事件)などの重大事件が大半を占める。
 奨学金給与の外、機関誌の発行、相談コーナーの設置、全国被害者支援ネットワークへの相談委託などの事業も行っている。

 A障害者見舞金給付事業
 生命身体に対する犯罪行為により重障害を受け、国から障害給付金の支給を受けた者に対する見舞金(30万ないし15万円)の給付。
 これまで、71名に対し2160万円を給付している(1999年3月現在)。

 Bその他に犯罪被害者の実態調査、犯罪被害者救援活動の調査研究などを行っている。
>  相談業務を直接行うのではなく、他機関にその業務を委託し、その資金的援助を行っている。

6.静岡犯罪被害者支援センター

(1)設立の目的など
 1998年5月18日設立。同月19日業務開始。
 犯罪被害に遭った人や遺族が負っている精神的経済的負担を軽減するために、ボランティア活動による電話相談、カウンセリング、法律相談活動を通じて支援することを目的とする。

(2)組織など
 法人格はない。会員は法人・個人併せて数十名。今後会員数を増やしていく予定。
 財政的には、日本財団補助事業として、設立から3年間の期限付きで補助金の交付を受けている。その後は、会員から年会費を徴収したり、広く寄附を募ることを検討中である。

(3)活動内容
@電話相談
 毎週3回(火・木・土)に午後3時から午後9時まで、「浜松いのちの電話」 の会員有志25名が対応している。
 1999年の相談件数は180件。内訳は以下の表のとおり。



【相談内容の例】
 ・ レイプ被害を受け、相手に慰謝料を請求したいが、どのようにしたらよいのか教えてほしい。
 ・ 痴漢に遭い、今でもそのことを思い出してしまい、何をするにも神経質になって生活がおぼつかない。
 ・ 強制わいせつ被害の届出をしたが、刑事手続きがどのように進められるのか教えてほしい。
 ・ 交通事故にあったが、相手の対応が今でも腹立たしくて、そのときのことを思い出してしまう。
 ・ 悪徳商法に引っかかってしまった。金を返してもらう方法はあるか。
 ・ 金融の広告を見て金を借りようとしたが、手数料を振り込まされただけで、金は貸してもらえなかった。契約を解除する手続きを教えてほしい。
 ・ 会社の人の話を信用して先物取引で損をした。会社に責任をとってもらう方法はないか。

 A面接相談
 「静岡県臨床心理士会」の会員有志7名で対応している。
 電話相談者の中でカウンセリングを希望する者に対して実施している。
 原則として1回目(2時間程度)に限り無料。カウンセリングは県中部にある県の建物にて実施。継続相談が必要な場合、しかるべき機関を紹介する(これまでのケースは1回のカウンセリングで終了している)。

 B法律相談
 静岡県弁護士会の犯罪被害者対策委員会の委員全員(14名:静岡支部6名、浜松支部4名、沼津支部4名)で対応している。
 電話相談者の中で法的手続をとる必要があると思われるものについて実施。
 1ヶ月に1回、各支部ごとに定例相談日を設け、その日は担当弁護士が事務所に待機して相談に応じている。面接相談については、定例相談日以外の日を設定して相談を受けることも多い。
 相談料は1回目は無料。2回目以降は原則有料。

(4)課題など
 @センターの存在と活動内容の周知
 静岡県では、いわゆる凶悪犯罪(犯罪被害者支援が必要と思われるもの)が年間300件以上発生していると言われているが、実際にセンターに相談があった件数はまだまだ少ない。この理由のひとつに、センターの存在と活動内容が県民に知れ渡っていないことがあるものと考えられる。
 現在、センターが行っている広報活動は、警察署などでのポスター貼り、リーフレットやカードの頒布、マスコミによる報道などである。

 マスコミ報道がなされると相談件数が増加するという現象が見られるが、逆に、報道から時間が経過すると相談件数が減少するという傾向がある。
 現在の限られた予算の中で県民に周知させていくことは難しいが、被害者が支援を希望するときに直ちに支援できる体制にするには、まず県民の誰もが知るような組織にすることが必要であり、そのために今後とも広報活動を充実させることが課題である。

 A相談員の増員及び質の向上
 今後、センターの存在が周知されるようになれば、相談件数が増加することは確実に予想されるので、相談員の増員と、研修を通じてその質の向上と維持を図らなければならない。

 B財政的基盤の確立
 上記のように、センターの財政は、現在、とりあえず日本財団の補助金に依存しており、今後、会費や寄附金により財政的基盤を確立していくことが緊急の課題となっている。

 C支援活動プログラムの増加
 これまでのセンターの支援活動は電話相談業務を柱にしている。今後は、相談業務だけでなく、直接支援を視野に入れた体制づくりが望まれる。

7.長野犯罪被害者支援センター

(1)設立の目的など
 1999年5月22日設立。同年6月22日業務開始。
 ボランティア活動による電話相談などを通じて、犯罪被害者・遺族などが抱える悩みの解決や心のケアを支援することを目的として設立。

(2)組織
 正会員:事業を行う個人(役員・相談員など)約40名
 賛助会員:事業を資金的に賛助する個人ないし団体

(3)事業内容
 @電話相談
 毎週2回(火・金)に午後3時から午後7時まで、正会員(長野いのちの電話・長野市社協相談員など)がボランティアで実施。相談担当者登録数16名
 (女性14名、男性2名)。
 これまでの相談内容は以下の表のとおりである(2000年1月末現在)。

 A面接相談
 心理カウンセリング・精神医療・法律相談の専門家による面接相談。随時実施。これまでの相談件数は2件で、いずれも性犯罪に関する法律相談である (2000年1月末現在)。

 B広報・啓発活動
 ポスター・リーフレットの制作と頒布など。

 C研修活動
 電話相談員の募集と、その養成のために1年余の期間にわたって全15回の事前研修を実施している。
 この他、電話相談員継続研修、電話相談員・専門委員(面接相談員)・運営委員による合同研修などを実施している。

 D新規事業として法廷同行を目標としている。

(5)課題
 相談件数がそれほど多くないのは、県民にセンターの存在が知られていないことが最大の理由と考えられる。したがって、今後、センターの存在と活動内容を県民に周知させるための広報活動を充実させる必要がある。

8.水戸被害者援助センター

(1)設立の沿革・目的
 1995年7月、現常磐大学学長である諸澤英道教授(刑事学・被害者学)の主導により、同大学内に、犯罪被害者に対する公的援助の不足をカバーする民間援助機関として設立された。

(2)組織
 会長(茨城新聞社会長)、副会長(諸澤氏)、顧問(4名)、評議員(8名)、運営委員(6名)、事務局、ボランティア養成講座修了者、会員及び賛助会員などから成る。
 運営資金は、会員・賛助員の会費、事業収入(ボランティア養成講座受講料)及び寄附金などでまかなわれている。

(3)事業内容
 @援助事業
ア.電話相談
 開設以来、毎週2回(水・木)実施してきたが、1999年11月より週3回(火・水・木)に増やした。臨床心理士、精神科医師、弁護士及び専門的な訓練を受けたボランティア相談員が対応。心理相談、法律相談、情報提供及び他機関の紹介などを行っている。
 初年度から1999年度までの相談件数は合計1173件で、年々増加している。年度毎の内訳は以下の表のとおりである。


 * 年度とは同年4月1日から翌年3月31日までのこと

 相談者は延べ405名で(同一人が複数回相談することがあるので、相談件数は、その約3倍となっている)、女性が277名、男性が128名である。このうち、茨城県内の相談者は248名、県外の相談者は133名、不明24名となっている。
 相談件数、相談者数ともかなり多く、しかも相談者の約33%が県外者であるという事実は、本センターの知名度の高さと果たしている役割の重さを物語っている。

イ.直接的援助
 1998年からケースにより専門家による面接相談、裁判所へのエスコートなどの直接的援助を実施している。
 殊に、1999年から実施している法廷付添サービスは「実施要領」を制 定し、常に同一水準のきめ細かなサービスを提供できるようにしている(資料7水戸被害者援助センター「法廷付き添いサービス」実施要領案参照)。
 法廷付添サービスは年に数件実施しており、犯罪の種類に限定はない。

 A被害者援助ボランティア養成
 被害者援助に携わるボランティアを養成するために「被害者援助ボランティア養成講座」を実施している。
 講座は、被害者援助に関する基礎知識を学ぶ「入門編」から始まり、初級編、中級編、上級編へと進む。それぞれ一定の時間と水準を満たすことが必要で、全てを修了した者が電話相談員や直接的援助活動員として認定され、現場の活動に携わる。

 修了者は、これまで100名を越えている。主な受講生は主婦、定年退職者、学生である。
 本センターの特徴は、この養成講座の整備・充実ぶりにあり、今後、民間支援団体におけるボランティア養成の手本の一つとなろう。

 Bその他の事業
 ア.後援会・シンポジウムなどの開催
 被害者の置かれている状況やその援助の必要性を多くの人に理解してもらうために行っている。

 イ.講師派遣
 警察庁、茨城県警察本部の警察官対象の研修会、各地の弁護士会などの関連機関・団体の研修会に講師を派遣している。

 ウ.他の機関との連携
 1997年12月設立の「茨城県被害者支援連絡協議会」や1998年5月設立の「全国被害者支援ネットワーク」などの相談機関と連携しながら援助活動を進めている。

(4)課題
 @資金不足

 A ボランティア養成には1,2年かかるが、直ちに活動したいと希望するボランティア希望者との間で、ズレが生じている。

(5)展望
 @面接相談をより充実していきたい。

 A法廷付添人は、現在水戸地裁本庁に限って実施しているが、今後は支部にも広げる予定である。

 B危機応答・危機介入、すなわち被害者が被害後の混乱状態のときに、被害者のもとに駆けつけて必要な支援をすることを将来的に実施する予定である。

9.千葉県における民間支援組織 ──千葉いのちの電話──

 千葉県内で組織的な活動を展開しているのは「社会福祉法人千葉いのちの電話」しかない。
 電話相談 043−227−3900
 事務局 043−222−4416(事務局長市川氏)

(1)設立の沿革・目的

 「日本いのち電話連盟」の加入団体(全国に46団体)のひとつで、1989年10月に開局され、1993年に社会福祉法人として認可されている。
 「誰にも話せず、一人困っている、誰か力になって欲しい、全ての望みを絶たれて途方に暮れている、生きていく自信がないなどの悩みを抱える人達に、電話で24時間対応し、その相談に乗り、危機に直面した人達の援助となれば」との目的で設立されたもので、支援対象者は犯罪被害者に限定されていない。

(2)組織など
 相談員は347名で、全員ボランティアである。
 運営資金は全て寄附金である。基金募金を目的として、1990年に後援会「千葉県いのちの電話協会」が結成された。年間活動費は約2200万円ほどである。

(3)活動の概要
 @電話相談
 1日5交代で24時間待機制を敷いている。相談件数は、年間24,000件、一日平均66件に上る。
 設立当初の目的は主に「自殺防止」にあったが、現在は、そのような危機的な状況での相談は全体の約5%にすぎない。その余の「こころの悩み」の相談の中に、犯罪被害にかかるものがわずかだが存在する。

 電話相談だけでは対応しきれないものについては、警察、弁護士会、県民相談などの提携機関を紹介している。1998年11月に設立された「千葉県犯罪被害者支援連絡協議会」に加入し、その一部局として2000年4月に設置された「電話相談ネットワーク」にも参加し、現在、参加諸機関と連携しながら犯罪被害者支援のための活動を展開している。

 A電話相談員の養成・研修
 ボランティアとはいえ、電話相談員は、約一年半の間、研修費用を自己負担し、養成研修を受けなければ相談業務を行えないこととなっている。

(4)課題
@電話相談を越えて面接相談ができる体制を整備できないか。

A紹介先をどのような基準で選択するかの基準作りと連携の充実化。

10.まとめ

 民間支援団体の課題は、諸団体を個別的に紹介したときに既述したように、
 1.財政的基盤の確立
 2.広報活動の充実
 3.支援活動員の育成
 4.支援内容の拡大
 である。
 組織の運営活動のための資金不足は民間団体の宿命である。この問題の解消策は、とりあえず、会員の増加策による納付会費の増額、募金活動の拡大である。だが、本来、犯罪被害者の支援は社会全体で負担すべきであるから、将来的には国・公共 団体の資金的援助が実現されるべきであろう。

 また、広報活動の充実は、支援を必要とする犯罪被害者に支援組織の存在を知らしめ、アクセスの仕方を教えるという目的と、被害者支援への意識を高め、これを賛助する会員とボランティアの増加、寄附金の増大を図るという目的と密接に関連する。民間支援団体の多くは歴史が浅く、そのため知名度が必ずしも高くない。これを市民に広く浸透させることが、被害者支援の充実・拡大に繋がり、資金難の解 消策ともなる。

 支援活動員のほとんどはボランティアであり、専門的な事前研修を長期間受ける必要がある。現在、特に歴史の浅い団体においては、支援活動員のボランティアの数が不足しており、研修制度の整備充実が急務となっている。これは、先行する団体や全国被害者支援ネットワークなどの指導・協力を得て解決していくことになるだろう。

 現在、支援活動の柱は電話相談と面接相談である。しかし、一部の団体では、直接支援、すなわち法廷付添、病院付添、家庭訪問などを既に実践しており、これを活動目標に据えている団体もある。今後、ボランティアによる支援は直接支援の充実という方向に進むのではないだろうか。