第3節 訪問調査の実施
1.訪問調査記

(1)茨城県弁護士会訪問記
 @概要
 2000年6月2日午後4時20分から午後5時30分にかけて、茨城県弁護士会館を訪問し、茨城県弁護士会副会長安江祐弁護士、荒川誠司弁護士(水戸被害者援助センター)、渡邊明弁護士より、同会の実状を聴取した(荒川弁護士、渡邊弁護士からは主に以下のAイ、Bの一部、Cを、安江副会長からはその他の部分を、それぞれ聴取した)。

 A会内の現状
 ア.会の対応状況
 被害者問題に対応する委員会などは設置されていない。民間の「水戸被害者援助センター」(以下「センター」という)が1995年7月に設立されるに際して会に対し協力要請があり、その重要性は認識していたものの、会員である弁護士が個人的に参加するに留まった。その後、センターからの協力要請はなく、会としても対応の必要がなかった。

 イ.会員の対応状況
 会員3名がセンター設立時から専門の相談員(専門員)として電話相談業務を担当している(センターの活動としては、「電話相談」「面接相談」「法廷付添」の「援助事業」、「被害者援助ボランティア養成講座」「講演会・シンポジウムなどの開催」「講師派遣」などを行っている)。弁護士による電話相談は月2、3回程度の割合で、他の相談員が法律問題として回した相談を担当する。ただ、形式上は法律問題であっても、心理的な問題と判断される場合には、別の相談員に担当してもらう。

 電話相談は専らアドバイスをすることとし、代理人の必要な場合などは弁護士会を紹介している。センターで、弁護士が被害者より直接受任することはしていない。なお、相談に際して相談員が相談者に自己の名前を教えることはしない、とのことである。

その他、荒川弁護士は、センターの運営委員(センターには、ほかに「理事」(名目的な役職)と「評議員」(活動の中心的役職)とがある)に就任しており、センターの運営にも関与している。

 B阻止要因
 現時点で会として被害者問題に対応できていない要因としては、会員数がないこと、国選事件、当番弁護士、一般の法律相談で会員の負担が過重となっていること、更に、センターという民間の被害者支援組織が活発に活動しており(例えば、センターでは、研修を行い、その後試験をし、試験に合格したものを相談員とする方法で、多くの適格性を有しているボランティアの相談員を確保している。その人数は医師などの専門員を含めると100名程度になる)、会として独自に問題解決にあたらなければならない必要性がなかったという点も指摘できるのではないかと思われる。

 C会外の機関との連携
 センターとの関係は前記Aアのとおりであり、必ずしも連携していない。会員がセンターで専門員として相談に応じ弁護士による援助が必要と思われるときには弁護士会の法律相談を紹介しているが、会がその紹介によった相談者がどの程度いるのかは把握していない。因みに、センターの相談にあっても相談者の氏名を聞くことはない。

 D今後の課題
 最近の被害者問題に対する関心の高まり、被疑者国選弁護人をめぐる議論とのバランスなどから、既存の人権擁護委員会又は別に検討委員会を設け、会としての方向性を検討する予定になっている。

 会として被害者問題の活動をする場合には、センターの活動が充実していることもあり、センターとの連携を取りながら活動することを検討することになるのではないか。また、被害者のメンタルケアの部分も含め、会員に対する研修も必要になるのではないかと思っている。

(2)東京弁護士会訪問記
 @2000年6月21日、東京弁護士会(以下「東弁」と略す)を訪れ、同会の犯罪被害者に関する特別委員会委員長(合田勝義弁護士)、副委員長(伊藤芳朗弁護士、村田智子弁護士)から、活動状況をうかがった。

 A設立の経緯
 1995年、刑事弁護委員会内から被害者問題検討の動きが始まり、1997年12月、「犯罪被害者救済に関する協議会」が活動を開始、会内の合意を経て1999年には「犯罪被害者に関する特別委員会」(以下「委員会」という)が作られ、同年12月、「犯罪被害者支援センター」(以下「センター」という)を発足させた(運営は「委員会」が担当)。


 B活動内容
 ア.概要
 (a) まず電話相談を受け、当番の相談担当弁護士1名が会館内で週1回午前10時から正午と午後1時から4時に交替で待機する。相談担当登録者(研修が義務づけられている)は50名以上おり、当番は6か月に1回程度。
 電話相談の結果、必要があれば面接相談を実施する。
 電話相談及びそれに続く初回の面接相談は、無料とする。

 相談件数は、これまでのところ1日平均約1件、受任件数は4件である。相談内容としては、精神的問題(カウンセリングが必要なもの)も多く見受けられる(174件中38件)。逆に特定相談(被害妄想と思われる相談など)は、予想より少ないとのことである。

 (b) なお、(依頼があった場合)受任は、相談担当者の義務(原則)であるが、それが不可能な場合には、別に他の弁護士を斡旋する手続もある。
 受任内容は、事情聴取への立ち会い、公判期日への立ち会い、告訴、犯罪被害者など給付金支給の申請、報道被害への対応など。

 実際に受任した弁護士の話では、法廷への同行一つとっても、被害者はかなり細かい点まで聞いてくるので、被害者側の要望に応えるためには、事前に勉強などする必要があり、結局その負担は一般民事事件を受任した場合とそれほど変わらないとのことである。

 (c) センターの運営は、委員会が行い、相談担当者からの報告を1か月単位でチェックしている。

 イ.センターの特徴
 (a)「犯罪被害者」の範囲を定義し(委員会規則第2条)、既存の各種委員会の窓口で対応できる事項については、その窓口に担当してもらう。この点は、センター設立の際に会内での合意が図られている。

 (b) 弁護士(登録し研修を受けた者)が直接電話を受ける。
 事務局による対応が適当でない問題もあると考えているからである(例えば性被害の相談は、直接弁護士が受けた方がよいし、特定相談者の対応を事務局にさせるのは負担が大きすぎる)。

 (c)相談担当弁護士が、一人で相談を抱え込み悩まないようにするため、他の委員(正副委員長が担当)からアドバイスをもらうなどのサポート体制をとっている。

 (d)委員会としては、(弁護士が直接電話相談を受ける関係から)弁護士による二次被害を防止するためにも、カウンセリング的要素を重視する傾向にある。
このため、マニュアル作成の他、研修を重視しており、これまでに2度(1999年12月と2000年2月)専門家を講師に招いて研修を実施し、さらに7月には実践(ロールプレイング)形式の研修を行う予定である。

 ウ.相談担当弁護士への日当など
 (a)電話相談と初回の面接相談は無料であり、担当弁護士に対しては、「法律相談センター」から日当が支給される。
2回目以降の相談料については、「法律相談センター」の基準に従い相談者の負担となる。

 (b)受任の際の着手金などについては、報酬規定による。但し、報酬については、その請求額の当否につき委員会での審査が義務づけられている。この審査は、個々の弁護士がどういう基準で料金を請求したらよいのか迷う場合も考えられることから設けられたものである。

 C他の機関との連携
 ア.民間団体との連携
センターとして他の民間組織との正式な連携は、現在のところ存しない(「東京医科歯科大学犯罪被害者相談室」との事実上の連携はある)。

 イ.警察関連組織としては、「社団法人被害者支援都民センター」や「警視庁犯罪被害者対策室」からの紹介が行われている。
その他、2000年9月から「東京都犯罪被害者連絡協議会」に加盟することとなった。

 ウ.他の機関と事実上連携しつつも、弁護士会として被害者相談の窓口を設けることについて、村田弁護士によると、現段階で他の機関が、心理問題と法律問題の振り分けをきちんとできているとは必ずしも言えず、弁護士会も含め第一次的相談窓口が多い方が被害者支援にとってプラスのはずであると考えているとのことである。

 D今後の課題
 ア.センターの運営は、基本的には順調にいっている。将来相談数が増加した場合には、相談日を増やすなどの措置をとりたい。
 イ.研修の充実を図りたい。
 ウ.東京三会間も含め他の機関との連携を図りたい。
 エ.広報活動(パンフの配布先の拡大)や啓発活動(小中高校での講演など)についても、検討したい。

 オ.制度論となるが、合田弁護士から、次のような話を伺った。
 (a)犯罪被害者問題について法律専門家たる弁護士の活動が必要である以上、この問題に取り組む弁護士のボランティア化を防止するため、弁護士業務として成り立つような制度を作る必要がある。東弁では、1999年12月、財団法人法律扶助協会に対し犯罪被害者の支援活動についても、被害者が弁護士費用(15〜20万円程度)を扶助申請できる制度を作るよう申入れを行った。

 (b)また、「犯罪被害者など給付金支給法」の支給基準(同法2条1、2項)が厳しく、国からの救済を受けられる被害者がかなり限定されてしまう(後遺障害4級相当まで)というような立法上の被害者救済制度の立ち遅れについて、弁護士会として改善していく方向で積極的に検討していく必要がある。

(3)第一東京弁護士会訪問記
 2000年6月14日、第一東京弁護士会(以下「一弁」と略す)を訪問し、同会犯罪被害者保護に関する委員会委員長高井康行弁護士から同委員会の活動状 況などについて聞いた内容を報告する。

 @設立の経緯
 一弁では、1997年秋頃から、犯罪被害者支援問題に関する検討が行われ、1999年7月に「第一東京弁護士会犯罪被害者保護に関する委員会」(以下「委員会」と略す)を設置、同年9月に一弁の被害者支援センターとして「犯罪被害者のための弁護士ネットワークSOS(以下「SOS」と略す)」を設立した。

 A活動内容
 ア.電話相談と面接相談が基本で、それぞれ初回は無料としている。
 相談担当の登録会員は、委員を含め60〜70人(弁護士への相談料は出ない)であり、SOS発足からの実績は2000年4月末現在で受付件数721件、うち担当弁護士による法律相談件数は86件である。

 イ(a)SOSでは、受付窓口として一弁の事務局(事務員)が、まず相談依頼者に対応し、法律相談以外の心理相談(カウンセリングの必要なもの)については、連携している民間団体へ、法律相談であっても既存の委員会(消費者問題委員会、民暴委員会など)領域に関する相談は該当の委員会窓口へというように振り分けを行い、残った法律相談を、その日の担当弁護士に回付する形をとっている。窓口業務を行う事務員への研修は、今のところ行っていない(対応能力のある者にさせている)。

 高井委員長の話では、今被害者に最も必要なことは、ケースごとに最も適切な所にスムーズにアクセスできることであり、被害者相談の窓口を設ける弁護士会としては、他の機関に回せるものはそちらに振り分けるという交通整理を的確に行うことが被害者救済の点からみて現実的かつ合理的であるということである。要するに心理相談と法律相談を厳格に区別し、前者をできるだけ弁護士会の業務として持ち込まないということである。 この点が、SOSの他の単位会と比較したときの大きな特長である。

 (b)担当弁護士は、事務所待機を基本としつつ、(携帯などで)連絡が取れればよいものとして、拘束をできるだけ避けている(登録会員の担当は、2ヵ月に1回程度とのこと)。

 (c)担当会員は、現在のところカウンセリングなどの特別の研修を受けておらず、ただ二次被害を防止する意味で既存のマニュアル(東京医科歯科大学犯罪被害者相談室のもの)を用いて対応している。

 (d)SOSのシステムのメリットとして、以下の点を挙げることができる。
 @.弁護士がカウンセリングについての悩みを持たずに済むこと(弁護士がカウンセリングに関わることの限界)。
 A.会の事務局の活用と担当弁護士の無償奉仕によっているため、SOSの財源問題に悩まずに済むこと。
 B.(無償奉仕をする)担当弁護士の負担が比較的軽くて済むこと。

 (e)SOSのシステムの問題(となりうる)点としては、窓口(事務局)での振り分けが適正になされているか否かの検証をする必要があるということではないか。
 B他の機関との連携
 ア.一弁では、心理相談については、「東京医科歯科大学犯罪被害者相談室」と連携をとり、相談を回している。
 イ.逆に民間団体・警察機関からSOSに法律相談の依頼が回ってくることもあり、内容がふさわしければ担当弁護士に回付しているが、この関係はいわば自然にできているもので、現段階では特に意識的に連携をしているわけではない。
 C今後の課題
 ア.広報活動を充実させる(パンフレットの設置場所を警察署以外の機関にも広げるなど)。
 イ.弁護士による二次被害防止を目的とした相談担当弁護士の研修を行う(今年度中に行う予定)。
 ウ.SOSの重要な役割として、他の機関への振り分け(相談依頼者にふさわしい機関の紹介)を位置づけている関係から、紹介機関の詳細なリストを作成する(今年度中に作成の予定)。

(4)第二東京弁護士会訪問記
 @2000年6月6日、第二東京弁護士会(以下「二弁」と略す)を訪れ、同会の犯罪被害者支援センター運営委員会委員長(岩田洋明弁護士)、副委員長(番敦子弁護士、山田秀雄弁護士)及び委員(黒岩海映弁護士、関弁連シンポ委員)から、活動状況をうかがった。

 A設立の経緯
 約3年前、民暴委員会に「犯罪被害者救済部会」を設け、会として被害者問題の検討を始め、1998年12月、「犯罪被害者救済制度など検討委員会」を設置、その後1999年11月、犯罪被害者支援組織設立の答申を行い、同12年3月、「犯罪被害者支援センター」(以下「センター」という)を発足させた。
 運営はセンター運営委員会(委員数30名)が担当するが、同委員会は、1)相談部会、2)研修部会、3)研究部会に分かれており、既存の委員会と連携をとりつつ活動している。

 B活動内容
 ア.電話相談が基本で、当番の相談担当弁護士1名が会館内で週2回午前10時から午後1時まで待機する。相談担当登録者(実働数)は約20名、相談件数は1日平均で約3件。
 相談内容には、心のケアを求めるもの(カウンセリングが必要なもの)も多いが、必要最小限の注意事項(禁句など)を前提とし、とにかく相談者の話を聞く姿勢が大切と考えている。

 イ.センターの特長として以下の点を挙げることができる。
 (a)「被害者」の範囲に制限を設けない(相談者が犯罪被害者と考えている限り何でも受ける)。
 (b)電話相談に(1人当たりの)時間の制限を設けない。
 (c)弁護士(登録し研修を受けた者)が直接電話を受ける。
 (d)午前10時〜午後1時まで継続して相談を受ける。

 ウ.電話相談と初回の面接相談は無料であり、担当弁護士に対しては、「法律相談センター」から日当が支給される。
 2回目以降の相談料などについては、「法律相談センター」の基準に従い相談者の負担となる。

 エ.被害者は精神的のみならず経済的にも追い込まれている場合が多いため、会としては、センターの活動が弁護士の市場開拓につながる(ペイする)という発想は持っておらず、現段階では、あくまでもボランティア的活動と考えている。
 C他の機関との連携
 ア.民間団体との連携
 (a)東京には、民間の被害者支援団体が複数あり、会としては、今後これらの団体の活動状況を調査した上で、どのような形で連携できるかを検討していく予定である。

 一例として山田弁護士が監事をしている「社団法人被害者支援都民センター」には、今年の4月、5月で約300件の相談が寄せられているが、そのうち民事訴訟などで被害者の経済面での救済を図れる可能性が十分あるケース(法律問題に馴染むもの)について弁護士の支援(連携)を求めているということである。
 (b)なお民間団体との関係について、岩田弁護士は、弁護士という職種が本当に犯罪被害者の相談を行うことができるのかとの疑問から、個人的には民間団体に第一次の相談窓口になってもらい、法律問題に関して弁護士会(センター)が二次的相談を担当する形が理想的だと考えているが、会内では少数意見だそうである。

 イ.東京三会間の連携
 東京の場合、多くの場面で、三会協議会が設けられ連携が図られており、被害者問題についても当然検討されることになるものと思われる。
 ウ.その他
 (a)医療機関との連携は、今のところない。
 (b)カウンセラーとの連携については、民間団体に所属している人以外にもアクセスできる余地が十分ある。
 (c)警察関連組織との連携についても会として特に異論は出ていない(活動内容などにおいて他の民間団体と異ならない)。

 D今後の課題
 ア.相談担当弁護士を増員すること。
 今夏以降に講師を招きカウンセリングなどの講義・実践を行うなど研修を進める計画である(7月12日に「東京医科歯科大学犯罪被害者相談室」の穴田富美子氏の講演を実施することに決定。穴田氏には今後も研修講師を継続的にお願いすることで内諾を得ている)。

 この研修は、弁護士にカウンセラーとしての能力をつけさせるということではなく、弁護士による二次被害だけは防止しようとの観点から行うものである。会としては、弁護士にカウンセラーの役割を要求することはしない。

 但し、ボランティア的な活動のため、活動範囲を広げることに伴う相談担当登録者数の確保(研修が義務付けられるため急増を期待できない)、財源の確保をどうするかといった問題を今後解決していかなければならない(この点は、程度の違いはあれ多くの単位会が抱えている悩みである)。

 イ.相談マニュアルの作成
弁護士による二次被害を防止するために必要と考えている。

 ウ.活動内容の検討
法廷への付添、刑事手続などの説明等、弁護士として行うことのできる活動をどこまで広げていくか。

 エ.社会に対する啓発活動(特に小中高の生徒への講演)についても、検討したい。

(5)静岡県弁護士会訪問記
 @概要
2000年6月11日の午後1時ころから午後3時40分ころにかけて、静岡県弁護士会犯罪被害者支援対策委員会委員長である白井孝一弁護士を訪問し、同弁護士所属事務所にて下記のとおり活動状況を伺った。
 A右委員会の設立の経緯
 ア.犯罪被害者支援センターの発足
 (a)1995年度関弁連シンポジウム(浜松大会、テーマ「死刑を考える」)に白井委員長が参加した折に、初めて犯罪被害者学の存在を知り、さっそく、常磐大学の諸澤学長と連携を図り、活動意義の理解を踏まえて、水戸被害者援助センターでの研修も受講するなどして準備を進めていた。

 (b)そうしたところ、1997年夏に静岡県警察との協議の機会があり、犯罪被害者問題について議題としたところ、同県警ではちょうど既存の犯罪被害者連絡協議会を母体として、被害者に対する支援を実践するための犯罪被害者支援センターを設立しようとしている状況にあり、さっそく同協議会及び同センターに弁護士会としても参画することとなった。
 右センターは1998年5月に設立された。

 (c)右センターにおける弁護士の活動の内容は後記(Bのア)のとおりであるが、運営面に関しては右協議会の事務局体制をそのまま活用することとなって、弁護士会としては特段の負担をせずに済ますことができた。
また、同センターには、「いのちの電話」の構成員、精神科医などのボランティアや専門家が参加しており、それらのメンバーとの連携を実現することもできることとなった。

 (d)なお、既存の警察関係の組織に便乗し、またそれを受け皿として活用していくことについては、既にそれまでにいわゆる民暴事件を通じて共同して事案を処理してきていた実績が反映して、弁護士会内において特に拒否反応は見受けられなかった。
 また、財政面については、日本財団からの拠出金、警察の資金、そして浄財で賄われているとともに、ボランティアの労力の提供が大である。

 イ.静岡県弁護士会犯罪被害者支援対策委員会の設立
右センターにおける活動の隆盛を踏まえ、1999年4月には、静岡県弁護士会内の自前の組織として、静岡県弁護士会犯罪被害者支援対策委員会が設立されて活動を始め、後記Dのように、2001年4月における弁護士会内の被害者支援センターの設立に向けて準備を進めている。

 B活動内容 
 ア.既に実施している活動内容
 (a)前記犯罪被害者支援センターにおける弁護士の活動内容は、基本的に相談業務ということになる。
 もちろん、右センターに参画する段階から、いわゆる危機介入、ひいては派遣制度、あるいは法廷へのエスコートの問題などが脳裏に浮かんではいたが、それらについて詳細に検討する余裕も無く、取り敢えず現実に為し得る相談業務をセンターに加わった少数の弁護士で実際に担当して、その需要も確認すべく、開始することとなった。

 このような視点でのスタートであったため、当初は、法律相談委員会の活動の一部として開始された。
 また、問題の性質から、第1回目の相談は無料とすることとした。 

 なお、弁護士による法律相談に至るプロセスとしては、まずは右犯罪被害者支援センターが窓口となって、申込者から事情聴取をし、法律問題にかかわるものと思われる場合に、初めて弁護士に話が持ち込まれるシステムとなっている。従って、実際の相談業務は他会の例と比して、ある程度法律問題に純化される形となっている。

 ちなみに、年間の相談件数の概要であるが、右犯罪被害者支援センターが約130件程度受け付けたうちで、弁護士が相談に乗るものは30数件というのがおおよその数である。

 (b)また、実際に弁護士が相談業務を行ったうえで、弁護士以外の相談員にも担当してもらったほうがよいと思われる事案については、その相談結果を踏まえて、再度、他の相談員に配転されることも行われているので、弁護士としては自分の相談のみで自己完結するという処理ばかりでよいということではないことに留意しながら相談に当たっている。

 (c)なお、資料としては、相談に当たる心構えのマニュアルは作成して弁護士に配布しているが、それ以上、具体的なノウハウをまとめた資料については、既に存在している他の弁護士会のものを活用させてもらっている。

 イ.今後実施すべく検討している活動内容
 前記のとおり、1999年4月に静岡県弁護士会犯罪被害者支援対策委員会が設立されて、2001年4月に自前の被害者支援センターの設立を目指しているが、そこにおける活動としては、既に言葉の出た「危機介入」ひいては「派遣制度」、加えて「法廷へのエスコート」などの事項についても活動内容として取り入れていきたいと考えている。

 C他の機関との連携
 前述のように静岡県弁護士会のケースは、既存の動きにタイミング良く参加できたという好例であり、システム上から相談内容が基本的に法律問題に絞り込まれるというメリットが個々の弁護士の負担を軽減させているという点などで大いに参考となるものであり、その特殊性からして他の機関との連携が最初からの活動内容となっているものである。

 D今後の課題
 ア.弁護士会内の被害者支援センターの設立に向けての研修の実施と新規人員の確保
 イ.右のための資金の確保、財政計画の立案
 ウ.前記のとおりの「危機介入」「派遣制度」「法廷へのエスコート」などの実践  エ.料金体系、ボランティア活動との線引き、無償の事件処理を認めるのか   オ.前二者を踏まえ、広報のためのパンフレット作りをいかなる内容にするのか
(6) 大阪弁護士会訪問記
 @訪問月日  
 2000年5月31日、大阪弁護士会を訪れ、同会の犯罪被害者支援運営協議会の委員長米田宏己弁護士、副委員長瀬戸則夫弁護士、大川哲次弁護士から、活動状況を伺った。

 A設立の経緯
 ア.大阪弁護士会では、1997年9月、被害者支援問題と刑事事件などに関する人権擁護活動との調整を図りつつ、電話相談などを実施するという目的で、「犯罪被害者支援対策プロジェクトチーム」が設置された。

 イ.その後、1998年7月には「少年犯罪被害者当事者の会」の会員から意見をきくなど、調査検討を重ね、1999年4月会内に「犯罪被害者支援運営協議会」を設置した。そして同年6月から電話及び面接相談を開始した。

 B活動内容
 ア.相談活動について
 (a)電話相談と面接相談を行っているが、原則として、まず電話を受けて、希望があれば面接相談に移行している。

 (b)電話相談の名称は「犯罪被害者弁護ライン」。毎週火曜日の午後3時から6時まで(2000年6月から、従前午後5時までだったのを1時間延長している)。

 (c)相談担当弁護士は、117名。うち、女性は3分の1程度である。

 (d)相談内容について
 相談件数は、1999年6月1日から2000年5月31日までの1年間で390件であった(相談は49回実施)。
 a.総相談件数のうち、犯罪被害に関する相談は約3分の2、それ以外の相談は約3分の1である。
 b.面接相談に移行したものは34件。犯罪被害に関する相談の30%を占める。受任したものは6件だが、近日中に数件増える可能性あり。
 c.暴行傷害事件が多い。態様としては軽いものも多いが、「警察などが何もやってくれない」という相談も多い。
 d.最近、強姦・性被害についての相談が多い。性犯罪の相談は深刻度も高いが、弁護士としてできることも多い。

 (e)相談活動の他、緊急派遣制度、相談者派遣制度なども検討している。

イ.大阪弁護士会の特色
 (a)大阪弁護士会は、いちはやく弁護士会で独自の相談窓口を設けた先駆的な会である。犯罪被害者のために何ができるのか、検討に検討を重ねて相談窓口を設け、1年間相談活動を行ってきた。また、マニュアル作成や、まず電話相談から受けつけるという相談のシステム、面接相談についても初回は無料にするというシステムを作り上げた。

 (b) 犯罪被害者問題に対する基本的なスタンスは「弁護士の前に登場する犯罪被害者の直面する課題は多様であり、賠償の問題は有力な課題ではあっても、その一つにしか過ぎません」「裁判などの法的な手段を被害者が求めることも、被害者が、不可逆的である被害そのものの回復ではなく喪失したものの価値を取り戻す行為―簡単に失われたものをかけがえのない貴重なものに転換する行為―となるときに、初めて被害者にとって裁判が癒しの機能を持つとも言われています」という言葉に代表されている(同会のマニュアルより)。

 (c) 相談について、できるだけ継続相談に移行しよう、積極的に受任しようというという姿勢が強い。

 C他機関との連携
 ア.1999年4月以降、4回に亘って、他機関から講師を呼んで研修を行っている。具体的には、大阪犯罪被害者相談室の担当者を招いて相談の心得について研修したり、カウンセラーを講師に迎えてPTSDについての勉強をした。
 イ.大阪府被害者支援会議にも参加している。警察、検察とも懇談した。
 ウ.民間支援機関との連携は、会としては特にしていない。

 D今後の課題
 ア.相談活動の経済的基盤をどう作るのか、ということ
現在、相談担当弁護士に対しては、電話相談及び1回目の無料の面接相談においても日当は一切支払っていない。

 会内では、犯罪被害者のための特別基金を作るなどを考えなければならないという話も出ている。弁護士会だけで使う基金ではなく、他の犯罪被害者支援機関も使える基金を作っていく必要があると思われる。
 犯罪被害者弁護活動には、非定型的な弁護活動もあるが、そのような場合にも法律扶助が使えるようにする必要がある。

 イ.民間支援団体との連携について
特に、性犯罪の被害者が負う精神的な傷は深刻である。カウンセリングが必須である場合も多い。

 ウ.広報の充実
 1日の相談件数が6件程度になるようにする。

 エ.継続面接相談の実施
 相談者からの希望がある場合に、できるだけ面接相談に移行できるように体制を整備する。

 オ.受任制度の活用
 継続相談のうち、30%以上は何らかの形で受任できるようにする。

 カ.弁護士派遣制度の検討
 早急に派遣制度についての案を検討、作成する。

(7)岡山弁護士会訪問記
 @訪問の概要
 2000年6月1日、岡山弁護士会を訪れ、同会の高原勝哉弁護士、川崎政宏弁護士から岡山での被害者問題に関する取組についてうかがった。

 A会内の現状
 ア.被害者問題に関する会としての取組状況
弁護士会として被害者問題に対応する委員会はまだ設置されていない。被害者支援活動は、財団法人リーガルエイド岡山(以下「LA」と略す)の独自活動として実施している。

 岡山弁護士会(会員数168名)は、会員全体の合意が得られないものについてはLAの活動として弁護士の中から登録弁護士を募って独自に実施してきた伝統がある。たとえば、巡回法律相談・土日の相談、精神障害者・身体障害者に対する出張相談、高齢者援護などもLAが独自事業として実施している。

 被害者問題について、最近は弁護士会全体としての取組が必要との認識が高まってきている。1998年11月には岡山いのちの電話協会との共催で「犯罪被害者110番」を実施したこと、1999年の中国地方弁護士会連合会の定期大会シンポジウムで被害者問題をとりあげ「弁護士は何ができるのか──犯罪被害者の支援を考える──」を実施したこと、LAでの取組が認知され評価されたことなどの影響が大きい。

 イ.LAの活動への個々の弁護士の参加
 被害者支援活動は個々の弁護士がLAに被害者支援弁護士として登録し、その活動に参加するという形で実施されている。

 BLAによる被害者支援活動内容
 ア.LAの組織概要
 LAは、全国に先駆けて1956年10月1日に設立された財団法人岡山法律扶助協会を前身とする団体である。1995年8月、名称も財団法人リーガルエイド岡山と改め、社会的または経済的理由により法律的援助を必要とするものの権利を擁護し司法福祉の増進を図るための諸活動を実施してきた。経済的弱者から社会的に援助を必要とする人にまで援護の対象を拡大したのが特徴である。

 財源としては、贖罪寄付、弁護士会からの補助金、県市からの補助金、会員からの香典返しなどがある。1988年にはLAの活動のためのひまわり基金が設置されている。

 イ.被害者支援弁護士制度(相談活動)
 LAの被害者支援弁護士制度は1999年9月1日から実施された。
同制度では面接法律相談を実施する。担当弁護士は、犯罪被害者支援弁護士名簿に登録された約40人の弁護士の中から選ばれる。

 ただし受け付ける法律相談は、当面県警が中心となって組織した「おかやま被害者支援・相談ネットワーク」から紹介のあったものと会員からの持ち込み事件に限っている。一般から受け付ける場合の体制が十分に整っていないからである。
 相談件数は、1998年11月に実施した電話相談が29件、1999年9月から2000年5月末までの面接相談が6〜7件である。

 ウ.ひまわり基金による被害者支援弁護士への費用支出
前記面接法律相談後被害者から事件処理の依頼があった場合、原則として面接相談担当弁護士が受任し、事件処理に要する費用をひまわり基金が立て替える。

 その立て替え制度においては、調停・訴訟を提起する場合などのほか、犯給制度の利用、マスコミ取材対応への助力の要請、事件情報の入手、捜査・刑事裁判過程での対応の助力、岡山仲裁センターへの申立など、被害者の希望に従った非定型的援助活動に対しても費用の援助ができるようにした。

 エ.被害者の期待する支援の内容
 これまでの制度の利用実績などから言えることは、被害者が希望する支援の内容は、従来の弁護士の業務では区分けのできない非定型的業務となることが多いということである。

 たとえば、法廷傍聴への付添である。性被害の被害者、殺人・交通事故被害者の遺族などは、裁判所に傍聴に行くことですら躊躇することが多い。こうしたときに支援弁護士が被害者に付き添って傍聴し、または被害者の代わりに傍聴し、その後手続の説明・裁判の内容の説明をするなどして被害者を支援する意味は大きい。

 このほかにも検察官の証人テストの立会とか証人の付添、刑事示談についての助言・交渉などの活動もあった。
 こうした支援活動は、現在の法律扶助制度では費用立て替えの対象にならない。LAのひまわり基金だからこそ費用の援助が可能になる。被害者の気持の中に、弁護士がボランティアで支援した場合、支援の希望がまだあって正当な報酬が立て替えられるのであれば希望したものでも、ボランティアで あるために希望を控えるという声がある。

 C関係機関との連携
 ア.警察との連携
 「おかやま被害者支援・相談ネットワーク」からの紹介事件への対応が連携の中心である。LAが面接相談にあたるなど、相談活動の面で警察との連携を図ってきた。
 また協議会への弁護士の参加、双方で実施する研究会に講師を互いに呼び合うといった連携もなされた。

 イ.各関係機関との連携、民間の支援センターのネットワーク化
被害者支援にかかわるそれぞれの機関がネットワーク化を図って、それぞれの持ち味を生かしながら支援活動をすることが理想である。その意味では静岡県弁護士会のやり方が参考になる。