第2節 イギリスにおける犯罪被害者支援
 イギリスでは、被害者憲章が定められており、犯罪被害者に対し手厚い保護が図られている。
なお、被害者支援の制度や組織に関連するイギリスの刑事制度については、資料に掲載したので、資料を参照されたい。

1.被害者支援体制

(1)警察による支援
 @警察は犯罪通報があると迅速に犯罪捜査に着手するとともに、以後の犯罪防止の助言を行う。被害者が希望すれば「犯罪防止実践ガイド」を交付する。

 A盗品等を発見した場合には可能な限り早期に被害者に返還し、返還が遅延する場合には、その理由と返還可能な時期を被害者に通知する。

 B警察署は、被害者に対する情報提供の窓口として支援する。相談窓口が支援できない場合でも、支援担当警察官を指定する。

 C性犯罪の場合には、シャペローンと称される性犯罪被害者支援専門要員を派遣する。シャペローンは、被害者の被害確認などの捜査に立ち会うだけでなく、被害直後の精神的支援も行う。

 D殺人の場合、事件に対し1名のファミリー・リエゾン・オフィサーと称される遺族担当警察官が配置され、被害者支援に当たる。

 E児童虐待の場合、その通報の多くは被害少年の友人の親・学校関係者・病院などからであるが、通報があると、捜査担当のエビデンスチームとソーシャル・サービスに連絡され、捜査チームは、家族などからの聞き込みや専門医の診察・被害少年からの聞き取り(メモランダムルームでのビデオを使った聞き取り。ソーシャル・ワーカー立会による1時間以内の聞き取り)により、証拠を確保する。
 捜査チームはすぐに逮捕することはなく、親が協力しない場合には一時的なキープアウトの処置をとることができる(72時間)。

 F事件が裁判となった場合には、裁判所ごとに、法廷の期日や法廷の場所などを連絡する担当の警察官(リエゾン・オフィサー)がおり、リエゾン・オフィサーは、証人並びに法廷などについてウィットネスサービス(証人サービス)に連絡する(なお、イギリスでは、警察が起訴を行っているので、公判期日の予定も警察が把握しており、このようなリエゾン・オフィサーが必要になっている。)。

(2)イズリントン警察署訪問記
 前日に訪問して話を聞いたイズリントンのヴィクティム・サポートの紹介により、警察署の訪問が実現した。
 突然の申出にもかかわらず、訪問が許可されたことひとつとっても、警察署とローカルヴィクティム・サポートの信頼関係の深さを伺うことができる。
 まず、私たちは、警察署の主だった部署を案内され、そのあと警察署の一室で、実際にシャペローンをしている女性職員の話を聞かせていただいた。以下は、シャペローンをしている職員から聞いたことをまとめたものである。
 シャペローンとは、性犯罪や家庭内暴力事件を専門に担当する警察官のことである。

 子供が他人から虐待された場合、シャペローンは、ソーシャル・サービスと相談の上、子供の安全のために最大限の配慮を行う(例えば、子供を虐待した父親に対し、家から退去するよう命ずることもできる。また、両親が非協力的な場合、子供を別の場所に移す権限が認められている。)。また、シャペローンが子供を小児科医のところへ連れて行ったり、性犯罪被害者の場合、FMAという性被害者に関する専門医のところに連れて行き、証拠を確保することもある。

 子供から被害について事情聴取するのは、特別な部屋が用意されており、そこで行う。また、警察官だけでなくソーシャル・ワーカーとともに事情聴取し、1時間以内で事情聴取が終了するように配慮している。
 性犯罪の被害者の場合、シャペローンは、被害者を病院に連れて行ったり、個人的な相談にのったり、子供の相談やカウンセリングを行ったり、場合によっては裁判所に連れて行ったりして被害者と密接な関わりをもっている。
ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)の取り扱いについては、ポジティブアレスト(必要的逮捕事件)と被害者の協力を得た捜査という2つの方法が行われている。

 ポジティブアレストを選択する場合、警察官は加害者を逮捕すべきものとして運用しており、逮捕しない場合、逮捕しない理由についてリポートを提出しなければならないものとされている。
 通報により、警察官が現場に行くと、すぐにカメラで現場を撮影し、証拠収集を行う。被害者自身が加害者である夫や父親の逮捕を望まない場合や1度出した被害届を取り下げようとする場合があるので、証拠写真の収集は極めて重要であり、場合によっては、被害者に証拠写真を見せて警察に協力するように説得することもある。

 なお、数年前に法律が制定され、DVについて、警察は被害者の意思に関わらず送検できることになったが、被害者の意思に関わらず送検するということはほとんど行われていないのが現実であるとのことであった。

 ファミリー・リエゾン・オフィサーとは、殺人及び傷害致死事件について、
 ア.捜査の進行状況を被害者の家族に知らせたり、
 イ.家族から事件に関する情報を得たり、
 ウ.捜査方法を知らせたりする
 職務を担当する警察官をいう。
 被害者が少数民族の場合、ファミリー・リエゾン・オフィサーが上記職務を遂行し、遺族と密接に連絡を取り合い、信頼関係を築くことにより捜査の手がかりが得られることもあり、極めて重要な職務であるとの話であった。

(3)ヴィクティム・サポート本部 (victim support)
 @VSは、1974年、ボランティア団体として被害者支援活動を始めた。犯罪者更正保護協会で活動していたメンバーが、新聞に出た事件の被害者宅を訪問したことがきっかけであった。市警にも協力を求め8人のボランティアにより事件直後の被害者を訪問する活動から始められた。

 Aかかる活動がテレビ報道されたことをきっかけとして、各地に同様の団体ができ、79年には全国協会が設立され、80年にはロンドンの現在の場所に本部が置かれ、87年からイングランドとウェールズ・北アイルランドの全州に設置され、1999年現在で374の地方組織が活動している。また、89年からは証人サービスが開始され、96年には全ての刑事裁判所(刑事法院 但し、軽微な刑事事件を除く)86カ所にて活動を行っている。

 VSは、各支部にて、有給の職員2名程とボランティア30名程にて活動を行っている。その活動資金は、年額2500万ポンドにおよび、その80%に相当する2000万ポンドが内務省(ホームオフィス)から財政援助を受け、その余をこのような活動を支援する法人や個人の寄付金でまかなっている。スタッフは、マネージメントやコーディネートを担当する1000人の有給職員と実際の援助活動を行う1万5000人のボランティアで構成されている。

 補助金は、活動方針を毎年ホームオフィスに届け出て、補助金額の交渉を行ったうえ、契約を締結し、その契約に基づき支給される。かかる活動方針により行われていることから、ひも付きとなるようなことはなく(イギリスの常識)、ホームオフィスが活動に関与することもない。

 補助金はファンディングパネルというVSの内部組織(本部財政部門)で各活動に振り分けられる。ファンディングパネルも、各界経験者(警察OB・銀行OB・弁護士・検察官など)によるボランティアで構成されている。

 BVSのボランティアは、特別なトレーニング(50時間)を受け見習期間を経た上で正式採用されており、交通費などの実費が支給されるだけの慈善団体である。

 C支援活動  
 ア.本部の活動
 本部事務所は直接の援助活動ではなくVS全体の活動を統括する役割を果たしている。主な業務は、全体の活動方針の決定、年1回の総会、セミナー・各種イベントの開催、募金活動などを行い、基本理念である「実践倫理規範」をスタッフ、ボランティアなど関係者に徹底することでVS全体の水準を保つことを第一義としている。
 その他、被害者支援関連機関との連携や協力・援助活動、社会への啓蒙活動を行っている。

 法律制定などに対する提言なども行っており、最近、被害者の権利に関する法律が制定され、被告人の国選弁護を必要的弁護制度へと改めた(従前は、被告人が弁護人を希望しない場合には、自ら弁護活動を行うこともでき、かかる場合には被告人=加害者が被害者証人を直接尋問することができた。これでは被害者証人にとってあまりに酷であることから、必要的弁護事件として被告人=加害者が被害者に対し直接尋問できないようにした)。
 本部は、フィールドサービス部門、広報部門、財務部門の3部門に分かれ、約87名の有給職員で構成されている。

 (a)フィールドサービス部門
 地方組織や証人サービス(WS)の把握や指導、スタッフのトレーニング、 ボランティアの養成・教育のためのマニュアル作成などを行い、全国の組織の水準確保を行い、また、警察・交通警察との連携も担当している。

 (b)広報部門
 広報や啓蒙活動を中心に行い、政府との連絡窓口ともなっている。また、被害者支援活動を行う他の機関にも積極的に支援をおこない「ヨーロッパ被害者サービスフォーラム」(the European Forum for Victim Services)の中心となっている。被害者関連の図書・資料が充実した図書室も備え、公開している。

 (c)財政・経営部門  
 財政、資金調達、人事、運営を担当している。ファンディングパネルと称されるいわゆる理事会スタッフは各界経験者のボランティアで構成されている。

 (d)VS全体の組織
 本部のもと、地方支部(ローカルVS)、証人サービス(WS)、電話相談(ナショナルテレフォンヘルプライン)の3部門に分かれて活動を行っている。



 (e)地方支部  
 ローカルVSは草の根活動から発生したものであり、本部の指導により生まれてきたものではないが、サービスの均一化(最低限の保障)を求めボランティア養成マニュアルなどを作成し統括を行っている。但し、各地域の特色を生かした独自の活動を否定するものではない。現在は、刑事管轄などに合わせた組織の統合を検討している。

 (f)WS(証人サービス)
 詳細は、ウイットネス・サービスに譲る。
 但し、現状はクラウンコート(刑事法院)での証人サービスであるが、現在、その下の日本の簡裁と称すべき裁判所(マジェストコート)への設置を検討し、試験運用も開始されている。かかる検討費用の特別予算として、本年度はホームオフィスより全体の補助額とは別に600万ポンドの特別補助を受けている。

 (g)電話相談  
 最近設立されたサービスであり、14時間のフリーダイヤルサービスである。これは本部に設置され毎日4名の専属職員が対応している。主に問合せなどに対し、ローカルVSなどその他機関の紹介を行っている。なお、被害者が電話を切るまでは切らないようにしているとのことである。

 イ.地方組織の活動  
 地方組織は直接的な援助活動を担当する。
 警察は、犯罪を覚知すると、その種類により自動的(自動付託制度、覚知後2日以内に通知)にまたは被害者の同意を得て(不法目的住居侵入、暴行罪、強盗罪、自動車盗、車上狙い、家庭内暴力などは同意が必要)VSに被害者情報(犯罪の種類、被害者名、連絡先など)を提供する。犯罪情報の提供は各地方組織により若干異なり、VSのスタッフが警察に赴きリストアップしたり、警察からリストを渡してもらったり、faxでリストが送られてくるなど様々である。

 VSは、犯罪通知後4日以内に(土日祝日を除く)文書を被害者宅に送付し、架電もしくはボランティアの訪問を手配する。
 派遣されるボランティアは身分証明書(本部発行で警察による認定付き)を提示し、支援活動を行う。
 実際には、犯罪直後の被害者に付き添い、精神的安定を図るための活動や保険や犯罪被害者補償制度の申請、特殊な問題につき支援可能な他の組織の情報提供といった活動を行う。
 援助は1・2回で終わることが多く、ボランティアの負担は週3時間で3件程度である。月1回のミーティングなどで継続的な訓練が行われる。

(4)イズリントンのローカルヴィクティム・サポート
 @地区の特徴  
 イズリントンはロンドン郊外の住宅地区であり、英語を母国語としない多くの住民を抱え、どちらかというと犯罪多発地区に当たる。特に人種によるハラスメントも多く認められる地区である。

 A設立・活動の概要
 1978年、ある女性が自宅の一室を犯罪被害者支援のために提供することから始められた。
 現在では有給職員3名、ボランティア25名により運営されている。尚、ボランティアも人種・年齢が幅広く、地区の特色に即した状況である。
警察との関係は大変良好であり、毎朝、警察よりfaxで被害者リストが送られてくる。これには、前日おきた犯罪の被害者の氏名・住所・被害の内容などが記載されている。かかるリストに基づきどのような方法でコンタクトを取るかのミーティングが行われ、リスト掲載者に対し基本形の手紙を出す。

 中にはお年寄や重いショックを受けている被害者がいるが、かかる被害者に対してはボランティアから直接電話することもある。電話により被害者の様子をチェックし、必要な場合には訪問や事務所に来所してもらうなどの対応をする。
 年間約8000人の被害者に対し支援活動を行っているが、多くの被害者は、基本形の手紙を出すだけで支援が終わることが多い。これは自分をサポートしてくれる団体が存在するということを認識することにより励まされ自立できるようになるためと思われる。

 中には重いショックを受けた被害者がいるが、かかる場合には訪問や来所による面接などを通じて時間をかけて支援を行う。また、状況に応じて金銭面についても一時的な支援や被害者補償制度の申請手続の補助など行うことがある。
 特に空き巣などによる被害の場合、緊急な対策として鍵の交換などが必要となるが、これらについては宝くじからの金銭的補助を受け実施している。
なお、自動車盗の被害については、あまりに数が多くVSでは対応していないとのことである。

 B地域の特色  
 この地域は多くの人種が居住することから、人種ハラスメントも多く、人種差別に基づく言葉の暴力、落書き、建物への投石などの被害があり、極端な場合には暴行や殺人に及ぶこともある。人種ハラスメントの連絡などは月10〜 20件ある。かかる場合に、人種ハラスメント対応職員が警察と被害者の間に入りサポートしながら警察にも協力することになる。特に被害者の母国において警察が全くあてにならない場合には、被害者が警察を信用していないため被害届を出さないことも多い。かかる場合に、被害者をサポートしつつ被害届を出すよう援助することが必要となる。

 また、この地区はドメスティック・バイオレンス、児童虐待なども多く、事件直後に被害者の知り合いなどからのコンタクトが多い。警察に被害届を出さない被害者が多いため、警察の専門担当官に連絡するなど警察と協力して支援活動を行っている。特に被害者が子供の場合、ボランティアが被害者と1対1で話合いを行い、裁判の証人になる場合には事前の裁判所見学や出廷に付き添うなど一貫した手続全体に対し支援活動を行う。

 C全体の感想  
 ローカルVSは、草の根的に発生したものが多く、本部による統合は、ボランティアの研修やサポートの均一化を目的とするものであるが、地域の特性を生かした活動まで否定するものでなく、本部による補完としてとらえ活動しているようであり、まだまだ地域によりローカルVSの評価はまちまちである。十分に機能しているローカルVSは、地域からも地元警察からも信頼されている。特にイズリントンのVSは、地元警察との信頼関係の厚いものが認められ、よりよい支援活動が行われていることが感じられた。

2.裁判における問題

(1)証人に対する支援
 被害者が証人として出廷する必要があるときは、警察を通じて被害者に連絡される。被害者の日程を聞いて、可能な限り都合のつく日を準備する。
 証言にあたっては、警察・検察・裁判所職員は、裁判の情報を可能な限り被害者に提供する(但し、事件の証拠や事件内容については言及できない)。

 被害者には、公判の場所と期日が文書で通知されるが、「法廷での証人」というリーフレットと裁判所の施設内容についての説明書が送付される。また、検察と証人サービス(WS)からは証言法廷の場所が通知され、検察からは当日の時間的予定なども通知される。
 証言当日は、警察やVSに伴われもしくは自ら裁判所を訪れると、希望者には証言サービスの担当者が待合室に案内し、裁判の様子やリラックスするための援助を受けることができる(なお、事前に裁判所の下見を希望する証人には、証人サービスが対応する)。

(2)WS(ウィットネス・サービス)
ウィットネス・サービスすなわち証人サービスは1989年に試行開始され、1996年にはイングランド・ウェールズの全刑事裁判所に設置された。
 元々は、VSが証人サービスとして行ってきたことであるが、犯罪被害者支援という名称では、被告人がすでに犯罪者というイメージを与えることから、裁判所内での活動は、証人サービスとして別名称をつけて行うようにしたもので、裁判所や検察とは独立し、裁判所からその存在を認められ慈善団体として活動しているものである。

 裁判所内にはオフィス兼待合室が設置され、常勤の職員とボランティア2名位が配置されている。
 裁判所内の証人専用待合室には、ソファーが置かれ、スナックや飲み物が用意されていて人目にさらされることなく証言まで待つことができ、証言後も気持をリラックスさせて帰ることができる。
 裁判期日が決定され、証人尋問が予定された場合、リエゾン・オフィサー(連絡担当の警察官)は、裁判期日の2、3週間前に証人リストを警察に連絡する。また、リエゾン・オフィサーは、裁判期日の前日の夕方に、もう1度翌日の証人尋問予定を警察に連絡する。

 警察は、WSとの取り決めにより、証人予定者をWSに連絡する。
 WSは、証人予定者と連絡を取り、警察が作成した「WITNESS IN COURT」という小冊子を渡し、希望により(但し、子供の場合は必ず)、事前に法廷の下見を実施する。
 当日は、裁判所までは本人自ら、警察もしくはVSが伴ってくる。証人が裁判所に到着すると、WSのスタッフが入り口まで迎えに行き(証人は緊張し、不安を抱えているので必ず入り口まで迎えに行く)、証人待合室まで案内する。
実用的活動

 まず、情報提供がある。希 望する証人には、事前に裁判所内を案内し、裁判所や法廷内の説明を行う。また当日も、証言までの時間、法廷施設の状況や裁判における基本用語、専門用語の説明、証言に当たっての不安を解消すべくアドバイスを行う。但し、WSのスタッフは、証言の具体的内容にわたるアドバイスをしてはならない。
 証言後は、他機関への紹介なども行う。

 子供の証人の場合  
 子供の証人予定者が法廷の下見に来た場合、WSのスタッフは、実際に子供を 法廷に連れて行き、法廷の様子を説明する。そして、子供がWSの説明を本当に理解したかを確認するため、「子供虐待防止協会(NSPCC)」が作ったポップアップ絵本(裁判官などの絵を切り抜いて法廷の絵に張り付けるもの)などを用いて、法廷内の様子を質問して子供の理解度を確かめる。

 感情的援助   
 証人は、はじめての裁判への関与で次のような不安を抱えている。
 a.何をするのか  
 b.証言内容を信じてもらえるのか
 c.加害者などに会うのではないか
 d.事件当日のことを思い出してしまう
 これらのことから証人は精神的にとても不安定である。
 そこで、証言前には、待合室で心構えをアドバイスをするとともに、話し相手になることで不安を解消できるよう努め、必要があれば、一緒に法廷内に入る。但し、WSのスタッフは、傍聴席に座り証人を見守るだけであり、目を合わせたり、証人に話しかけることはできない。
 証言終了後は、少なからず緊張していることから、感情を和らげるよう話し相手となる。

 ボランティアの養成  
 a.7日間の研修を受け、その後面接試験を受け、仮採用される。
 b.3ヶ月間は研修として働き、その後正式採用される。問題があれば採用さ れないこともあるし、研修期間が延長されることもある。
 c.研修は、正式に採用された後も定期的に行われる。とりわけ法律の改正に 伴う研修は不可欠である。
 証人サービスであることから、待合室は、被害者だけでなく、加害者側の証人が現れた場合にも利用できることになる。

(3)一定の証人に対する特別な支援  
 @児童証人
 性犯罪・暴力犯罪又は虐待に関する事案で児童が証人となる場合には、警察は、当該児童ならびに親権者などに対し「児童証人」と言う情報パックを提供する。
 裁判ではビデオリンクシステムを採用することができ、裁判所は児童証人係官を配置し支援を行う。

 A犯罪のおそれが認められる場合  
 証言の結果、攻撃を受けるおそれが感じられた場合には、警察にその旨申し立てると、警察が何ができるかを通知し、検察官に対し裁判所が保釈の判断を行う際にその旨考慮の対象とするよう通知する。
 被告人が保釈される際には、警察は、その事実並びに保釈条件・保釈条件違反の場合に被害者がなし得ることを通知する。
 また、証言にあたり、被害者の氏名住所が法廷で読み上げられないよう、衝立の設置などを裁判所が行うことができる。

 B性犯罪  
 強姦や性暴力の被害者の氏名などは法廷で明らかにされないだけでなく、被 害者を特定できるような情報を曝露することは犯罪とされている。

(4)法廷の審理において  
 証人は法廷内に1名の付添を求めることができる(友人や支援者・WS)。
 但し、前述のとおり、WSのスタッフは、傍聴席に着席しているのみであって、特別な場所を提供されるわけではない。
 証言後は、希望により審理を傍聴することもできるが、退席できるかどうかが 通知される。

(5)裁判後  
 被害者が不安を覚える場合には、警察は身を守るための助言を提供し、実際的な支援も行う。
 判決後は、量刑が不当に軽いと思われる場合には、被害者は検察官と協議することができる。犯罪者が服役中は、被害者より刑務所長あての被害者専用電話にて、連絡を取り、犯人の釈放の情報や、犯人から被害者への連絡を禁止してもらうよう頼むことができる。
 特に犯人の釈放については、保護観察所は終身刑及びその他の重大犯罪ないし暴力犯罪については、判決後2ヶ月以内に被害者に連絡をとり、受刑者の釈放計画に関する説明を希望するかどうかを確認するとともに、刑の執行中に起こること・犯人の釈放の判断方法などにつき説明する。

(6)SOUTHWARK CROWN COURTの証人サービス(WS)
 @裁判所の施設の概要  
 この裁判所は、ロンドン市街地にある刑事裁判所である。
 裁判所に着き、受付を済ませると有給のコーディネーターのうちの1名(Ms. Denise^Sorhaindo)がやって来て、私たちを裁判所内に案内してくれた。WSの事務局は、裁判所の2階の1室にあり、その隣に証人待合室と子供用の証人待合室が並んでいた。

 一般の証人待合室の広さは10畳程度、法廷について説明する証人用のクリアファイルが置いてあり、証人が待ち時間にこれを見ることができるようになっている(私たちが別室で説明を受けている際、証人が実際にこの待合室で証言時間を待っていたが、ソファに寝そべり、とてもリラックスしていた)。
 子供用の証人待合室は、一般の証人待合室より若干狭く、子供のためにおもちゃなどが置いてあり、子供が退屈しないような配慮が行き届いていた。

 この刑事裁判所には、法廷が15あるとのことであり、私たちが見学した法廷は、それほど大きくなかった。法廷の一方の隅の壇上が裁判官席、もう一方の隅に裁判官席と向かい合う形でドックと呼ばれる被告人席があった(別の法廷で実際に裁判を傍聴した際、被告人にも水が用意され、ドック内で非常にリラックスしていたのが印象的であった)。被告人用のドックの前に検察官と弁護人の席があり、裁判官席から向かって右側に陪審員席、向かって左側に証人の証言台(証人は、陪審員を正面にして証言することになる)があった。傍聴席は、裁判官から向かって左側の出口付近に配列されていた。

 ビデオリンク室は、法廷から離れたところにあり、証人はモニターに向かって話すようになっていた。証人を写すカメラはモニターの上に1台(証人の顔を正面から写すためのもの)と部屋の角の天井に1台(証人の様子を写すためのもの)が設置されていた。

 Aボランティアの活動について
 私たちは、上記刑事裁判所で実際にボランティアをしているシルヴィアさんから話を聞くことができた。
 シルヴィアさんは、1週間に1〜2回程度、午前9時から午後5時まで裁判所で証人のためにボランティアとして活動しているとのことであった。
 また、ボランティアは、マスコミの注目を集めるような事件の場合、証人がマスコミの目に触れないように配慮することも行う。また、証言終了後も証人をサポートし続けることもあるとのことであった。
シルヴィアさんは、WSのボランティアは非常にやりがいのある活動であることを強調していた。

(7)HALLOW CROWN COURTの証人サービス(WS)
 この裁判所は、ロンドン郊外にある1992年2月26日にオープンした比較的新しい刑事裁判所である。
 この裁判所の子供用の証人待合室は、法廷が集中しているフロアの1角に設置 されていたが、待合室にはトイレが設置されており、証人が待合室の外に出て加害者と会うことがないように配慮されていた。
法廷の配置が非常に変わっており、フロアが三角形で法廷もそれに併せて配置されていた。8法廷が設置されていた。

 私たちは、まず、保護更生協会の女性スタッフの話を聞く。
 1996年に制定された被害者憲章により、保護更生員が被害者に対し、加害者の情報を提供しなければならないことになった。保護更生員は、被害者の希望により、判決に関する情報(懲役何年とか)や刑務所から出所する時期などに関する情報を提供しているとのこと。そして、加害者が出所した場合、必要があれば、裁判所に対し、加害者が犯行現場に近づいてはならないといった内容の命令を求めることができるとのことであった。

 次に、リエゾン・オフィサーの話を聞くことができた。
彼の仕事は、裁判期日が決定され、証人尋問が行われることになると、裁判期日の2〜3週間前に証人リストを警察に連絡すること、裁判期日の前日の夕方にさらに翌日の証人尋問予定を警察に連絡すること、及び証人予定者が希望する場合、法廷の下見の予定を作成することであるとのこと。彼は、仕事を進めるに当たり、WSとも連絡を取り合い、協力しているとのことであった。

 さらに、バリスターの話を聞くことができた。
 彼は、比較的若く、身長2メートルもあろうかという大男であった。
 彼は、検察側、弁護側双方できる資格を有しているとのことであった。仕事柄検察官としても法廷に立つため、ウイットネス・サービスをとても評価していると話していた。
 ただ、弁護士会の活動として、犯罪被害者のサポートはしていないとのことであった。
 最後に、ウイットネス・サービスのスタッフのご厚意により、法廷で実際にビデオリンクによる疑似証人尋問を体験した。カメラやモニターの角度が被告人の顔を不用意に写さないように設定されており、証人に不当な圧力がかかることがないように配慮されていたのが印象的であった。

(8)感想  
 イギリスでは、、刑事裁判において、調書が証拠とされず、目撃者や被害者の証人尋問が必ず実施される。また、証人が裁判官に向かってではなく陪審員に向かって証言するように証言台が設置されているので、証人が証言する際の圧迫感は、イギリスの方が日本より大きいと感じられた。イギリスにおいて、ウィットネス・サービスが必要不可欠なものとして短期間の間に普及した理由は、この辺りにあるものと思われる。

 したがって、今後、日本において、どの程度証人サービスの需要があるのか明らかではないが、一般市民が証人として裁判所で証言することは一生に1度あるかないかのことであり、証言するときの緊張感は日本においてもそれほど変わりないはずであるので、証人サービスは、日本においても必要な制度であると考える。
 また、警察、裁判所及びWSの相互信頼関係は、極めて良好であることがとても印象的であった。

3.経済的支援  

(1)損害賠償命令
 加害者が有罪判決を受けた場合に、裁判所は被害者の損失、損害や損傷がある場合に、被告人に対し損害賠償命令の言い渡しができる(損害があるにもかかわらずかかる命令の言渡しがない場合は、その理由を開示しなければならない)。
かかる命令が言い渡された場合には、被告人は罰金に優先して支払う義務がある。
 なお、賠償額は被告人が支払い可能な限度に制限され分割支払も行われる。

(2)犯罪被害補償制度  
 暴力犯罪の被害者で、損傷を負ったものが対象とされている。

(3)生活保護

4.不服申立制度

 被害者は、各機関のサービスに対し不服がある場合には、それぞれの機関に対し不服申立ができる。

5.自助グループによる支援活動

 既に述べてきたように、イギリスにおいては、被害者憲章に基づき(一部は、その制定以前から)、警察、VS、WSなどの組織による被害者支援の態勢ができあがっている。これらと別個に、しかし、相互に補完的な活動を行なう民間の自助グループが多数存在する。

(1)SAMM  
 @発足    
 SAMM(SUPPORT AFTER MURDER & MANSLAUGHTER)は、元々は、「同情的な友人達」(子供を亡くした親たちの国際的な機関)の一部として活動していたジューン・パティエントとアン・ロビンソンが、1980年代の初めに、「子供を殺された親の会」(POMC)として、主として殺人などの犯罪により子供を亡くした親たちの支援に乗り出したのがはじまりである。その後、この組織は、1988年初めには、独立した組織となり、現在の名称に変更された。

 A活動   
 SAMMは、現在、VS本部の借りている事務所に2部屋を与えられ、そこで活動している。同じ場所にあるといっても、独立した存在である。ただ、VSとの協力関係はあり、VSからの紹介で被害者がSAMMに来ることもあるし、SAMMのメンバーがVSでカウンセリングの教育を受けることもある。

 事務を行なっている常勤の職員3名も含め、自らが犯罪によって子供をなくした経験のある親たちによって組織されている。これらのボランティアは、一方で、自らの経験をもとに被害直後の被害者に適切な援助を行なうとともに、自身も同じ境遇にある多くの人々との交流を通じて、自らの立ち直りにも役立てている。

 2000年現在、16の「グループ」が存在し、各支部は3〜4名のメンバーで支援活動を行っている。会員はいずれも遺族であり、約1000人の会員登録が行われている。16支部中、1支部を除いて、メンバーの自宅などを活動の拠点としている。

 年間活動費はホームオフィスより10万ポンドの支援を受け、有給職員3名により運営されている。各支部の活動費はZITAトラストという資金援助団体に申請し補助を受けたり会員などによるカンパで賄われている。

 活動の具体的な方法は、VSの紹介、広報活動、その他でSAMMの存在を知った被害者に対し、電話、面接、会合などで接触し(時にはメンバーの家に被害者が訪ねてくることもある)、まずは、同じ境遇であるという共通点から話をすることで心の癒しを行なっていく。状況に応じ、1対1のミーティングや集団ミーティングが行われる。被害者が接触を求めてくる時期も千差万別であり、被害直後に接触してくる人もいれば、何年も悩んだ後に接触してくる人もいる。ともあれ、こういう被害者に、同じような仲間がいることを示すことが最大の活動になっている。

 警察によるサポートも認められ、ホームオフィスパックと称されるシステムにより、警察はファミリー・リエゾン・オフィサーという殺人など遺族担当警察官を配置し、事件ごとの遺族担当警察官により情報や緊急のサポートなどを行う事になっており、かかる担当警察官がSAMMの存在を遺族に伝え、精神的サポートを受けるよう指導している。

 また、SAMMは他の自助グループとも連携し活動を行っており、ロードピース(交通事故被害者遺族の会)などと連携している。
 SAMMとしては、現状には満足しておらず、警察や弁護士に対し次のような希望をもっている。

 被害者遺族に対し敬意をもって接し、被害者の権利を重視してほしい。特に、一定期間内に葬式を出せるように配慮してほしい(これは、裁判などの手続が終了するまで、遺体は証拠として保管されるため、遺族が管理することも葬儀を行うこともできないという事情があるためである)、また刑事裁判においては、被害者の気持を判決に反映できるようしてほしいことと、裁判などの経過をもっと詳しく伝達してほしいとのことである。

 さらに、弁護士に対しては、特に刑事手続などにおいて、犯罪者が正当に処罰されるよう諸手続を監視してほしいとのことであった。
 なお、イギリスでは、弁護士は組織だって被害者支援活動を行っていないこともあり、被害者遺族は弁護士会などに対し多くの期待をもっていない様子であった。(これは、刑事裁判担当の弁護士が、刑事専門で検察官役をも担当することから、公正さを疑われないためにも裁判手続以外に被害者と接触することをさけていることに起因するものである)

(2)全体の感想   
 私たちの訪問に対し、対応した職員は有給職員3名中の1名であり、当然に遺族であった。その話しぶりは大変落ち着いたものであり、かえってその落ち着きぶりが私たちを感銘させた(通訳が、話を聞いて、泣き出してしまうというハプニングもあった)。全体として大変重い視察となった。
 個人的感想であるが、担当者はかなりトラウマから立ち直っているが、かかる活動をすることによって自己並びに亡くなった被害者の存在意義を確認し、被害者に対する黙祷を続けているのだと感じた。