| 第6章 法制度と問題点 第1節 犯罪被害者の手続参加 |
| 1.調査と被害者 (1)はじめに 犯罪が発生した場合、いわゆる「被害者なき犯罪」以外の犯罪においては、ず被害者が発生する。 被害者による犯罪の通報・被害届の提出・告訴などは、捜査の端緒となるものであり、被疑者の特定などに資する重要な証拠の提出は、当該犯罪の被害者によりなされる場合が大半である。かかる点からか、従来、被害者は「捜査への協力者」的な意味付けが専らなされてきた。 しかし、犯罪の被害者になるということは、重大な人権を侵害されたということを意味する。そして、被害者の被害は直接被害(一次被害)のみならず、マスコミ・近隣・捜査機関などによる二次被害、さらにはPTSD(心的外傷後ストレス障害)といった三次被害にまで及ぶものである。 そもそも、どのような社会制度であるにせよ、犯罪発生が必然であることを考えるならば、被害者の救済は社会全体の共同責任とすべきものであり、被害者の救済は国の責務と言わなくてはならない。 かかる見地より、被害者は被害発生後から単に「捜査への協力者・参考人」としてではなく、国・社会が共同して救済すべき存在として扱われる必要がある。 以下、この点を念頭において、捜査段階での被害者の手続参加の問題を検討する。 (2)捜査の開始と被害者―被害者の申告を親切かつ充分に聴取し、適切な処置をする必要 上記のような見地から考えた場合、まず、被害者による捜査機関への申告に対しては、捜査機関が親切かつ充分に聴取し、これに適正に対処することが要請される。 被害者・遺族からの申告にもかかわらず、捜査機関がこれを軽視して適正に捜査しなかった場合、結果として人の生命、身体の侵害と言う重大な犯罪の発生を許すことになってしまうことは、オウム真理教関連事件における坂本弁護士拉致事件、桶川の女子大生ストーカー殺人事件、栃木のリンチ殺害事件などを見るまでもなく明らかである。 生命・身体の安全という最も基本的な人権が侵害されることのないよう、犯罪 を未然に防止することは国の責務であり、また、国家が私人より刑罰権を奪ったにもかかわらず適切な刑罰権の発動が妨げられるならば、司法に対する国民の信頼を失わせることにもなる(資料22「被害者対策要綱」)。 犯人が特定されず、正式な被害届、告訴・告発の形式をとれない場合、警察は往々にして、被害の申告を軽視しがちである。しかし、犯人が未だ明白になっていなくとも、被害者への攻撃が続いている場合、もしくは続く危険性が大きい場 合には、捜査機関は被害者の身の安全を図る必要があるし、犯人検挙への具体的な手立て(テレビカメラの設置など)を講じるべきである。警察庁が平成8年に定めた被害者対策要綱には、「個人の権利と自由の保護」が警察の設置目的であるとの記載があるが、その言葉を待つまでもなく、犯罪によって個人の利益が侵害されるようとしているとき、捜査権限を発動し、適正な処置とることは警察の当然の責務なのである。 (3)告訴・告発の適正な受理 同様に告訴・告発の受理(刑訴法230条以下)についても、適正になされることが要請される。 本来、告訴の要件は、@告訴権を有する者によりなされること、A犯罪事実の申告であること、B司法警察員もしくは検察官に対する犯人処罰を求める意思表示であること、であり、書面又は口頭によりなされれば足りるものである。また、かかる要件を具備していれば、告訴を受理しなければならず、受理しないという 裁量は認められていない。 それにもかかわらず、「告訴状を提出したのに、いつまでも受理してくれない」という声をよく耳にする。確かに、告訴とはいっても犯罪事実の特定などに問題がある場合も考えられる。しかし、そもそも、国家訴追主義により私人訴追が認められていない以上、告訴は被害者に認められた唯一ともいうべき権限である。そうであるならば、警察・検察が、告訴状の提出を受けた場合には、直ちに犯罪事実の特定性といった要件の有無を検討し、問題がある場合には早期に補充させるなどして、受理に向けた措置を講じるべきであり、かつ、受理した場合には、できるだけ早期に捜査に着手すべきである。 (4)捜査機関の不作為についての不服申立制度などの確立 捜査機関に、被害者らの告訴告発を含む被害申告があったにもかかわらず、これが無視されて適正な捜査すらなされなかった場合の不服申立手段は、現行法上、ほとんどない。 捜査機関は、被害者対策要綱などを制定して、これを適正に処置するよう努力しているが、1996年の被害者対策要綱制定後に、前記桶川の女子大生ストーカー殺人事件、栃木のリンチ殺害事件などの凶悪・重大な事件が発生していることは、内部指針などの運用によってこれを改善することには一定の限界があることを証明している。 これでは警察など捜査機関に対する信頼は失われてしまう。起訴、不起訴の判断などにおいては、被害者の意向以外にも、国家刑罰権の行使という観点が入り、被害者の意思と別の判断がなされることはあり得る。 しかし、生命、身体に対する侵害がまさに発生し、若しくは発生しようとしている時、これを防止するのが捜査機関の義務、存在根拠なのであって、これ以外の観点など入る筈がないのである。極論すれば、人が殺害されようとしているとき、捜査機関がこれを助けず、放置しておいても良いなどとの理屈はどこにもない、のである。 従って、少なくとも、生命、身体などに関する重大な犯罪に関する被害申告に ついて、警察など捜査機関に適正な処置をしないという不作為があった場合、これに対する不服申立制度、チェック体制を確立する必要があると考える。 例えば生命、身体などの重大な犯罪についての被害申告があったにもかかわらず、直ちに適正な捜査が開始されなかった場合は、監察官室などが異議の申立を受け付け、速やかに調査、指導をしてこれを被害申告者に報告する制度を整備するとか、あるいは弁護士会内部でのオンブズマン的制度を設け、告訴を受理した場合には捜査機関に半年ごとの報告を義務付け、また、告訴がいつまでも受理されない場合には代わりこれを受理し、捜査機関に捜査を義務付けるなどの制度を設けることが考えられる。 (5)捜査進行過程と被害者、情報の開示 捜査の端緒だけでなく、捜査の過程においても、被害者は適切な扱いを受ける必要がある。捜査において、被害者の協力が必要なのはいうまでもないが、その場合、捜査機関による二次被害が発生することのないように、被害者に対しては、同情と敬意の念をもって扱われなくてはならない。また捜査の経過について適宜被害者に説明し、被害者の事実経過の再説明希望などにも留意する必要がある。 事件によっては、被害者には捜査の経過が全く知らされず、被害者は報道によってこれを知ることがある。被害者は、このことに大きな衝撃を受けることが多い。被害者に情報を提供することは、被害者の被害回復と心情の充足のために不可欠である。すなわち、被害者・遺族(特に不慮の犯罪被害の場合)は事件の全容を知らないことが多く、なぜ、自己・家族が犯罪の対象になったのか、自己に落ち度があったのかなど、事件について煩悶し続けることとなり、これが被害者の立ち直り を遅らせ、場合によっては二次的・三次的被害の原因となる。また、被害者が事件や手続について知識を有していなければ、それは時として、真実発見に影響を与える可能性もあるし、損害賠償請求においても悪影響を及ぼす危険性まである。 もっとも、被害者への情報提供においては、刑事司法の目的や第三者の利益保護の見地から内在的制約を受けることは否定できない。しかしながら、これまで被害者にかかる権利がほとんど制度的に認めてこられなかったことを考えるならば、かかる制約を過大に強調することは妥当ではない。被害者の情報提供を受ける権利は捜査・公判の各過程において、細かくその制約の限界を検討されるべきである。 この点、制約する根拠に最も乏しく、被害者に最大限認められるべきものは、刑事手続の概要や被害者の法的地位に関する一般情報の提供であろう。かかる情報の提供に関しては、弁護士は積極的に関与すべきであるといわなくてはならない。この意味で弁護士会に被害者(当番)弁護士制度を設けることは急務であろう。 これに対し、捜査段階・公判段階における個別的情報提供に関しては、捜査の目的(捜査の密行性)や公判における制度的限界は否定できない。 このような制約を考えた時、近年ようやく実施されている警察による被害者連絡制度、検察による被害者通知制度(資料21)は一定の成果をあげているということはできる。とはいえ、これらの制度はあくまでも「通達」に基づくものであり、法的権利として確立されたものではない。何よりも、権利性の確立は急務であろう。 加えて、警察による連絡制度においては対象事件が限定されていること、検察による通知制度においては通知する内容など検察官の裁量に委ねられているものが多いことは問題であろう。連絡制度の対象を更に拡大するとともに、通知制度における検察官の裁量の範囲を限定すべきである。 すなわち、検察の通知制度では、公訴事実の要旨、不起訴裁定の主文、不起訴裁定理由の骨子、勾留及び保釈などの状況、公判過程など通知出来ることとなっているが、実際にどこまで通知するかは、現在裁量に委ねられている。この点、刑事記録の閲覧が改正刑事訴訟法において広く認められるようになったとはいえ、公訴事実の要旨さえ、第一回公判前には被害者が知り得ないということはいかがなものであろうか。被害者の公判傍聴席の確保がなされたとしても、何の資料もなしに意味を理解するのは困難である。最低限、傍聴時までには起訴状の公訴事実部分について開示を認めるべきである。 (6)事情聴取への弁護士の立ち会い 被害者としては、思い出すのも辛い事実を何回も聞かれるのは苦痛以外のなにものでもないし、生活・仕事への支障も生じる。加えて、被害を受けた精神的痛手による記憶の欠如・混乱もありうる。記憶の齟齬は時として、刑事訴訟においてだけではなく後の損害賠償請求に悪影響を及ぼす危険性もある。従って、このような二次被害防止と円滑な捜査のため、被害者の事情聴取に弁護士が立ち会うことが必要になる場合もある。 現在、事案によっては捜査機関から弁護士の立ち会いを求められることもあるが、立会については弁護士からの積極的な働きかけを行なうべきである。また、立会のみならず、弁護士としては被害者の生活・仕事に支障がないように事情聴取の日時を考慮するように申し入れたり、被害者の事実整理・記憶喚起に協力したり、精神的不安定な状況に置かれている被害者の心理に配慮し、録取書の作成を行なうなどして、被害者に対する支援的活動を積極的に行なっていくべきである。 (7)不起訴に対する不服申立―検察審査会制度の問題点 捜査機関が所用の捜査をなした後の処分、起訴・不起訴については全て検察官がその権限を独占し、検察官の裁量に委ねられている(刑訴法247条、248条)。かかる起訴独占主義・起訴便宜主義に対し、近時、交通事故被害者の遺族などにより疑問が投げかけられている。現行制度のもとで認められる不起訴処分に対する救済制度は、 @検察審査会に対する審査申立、A上級官庁に対する不服申立、B付審判請求の3つである。 このうち、Aは、上司の指揮監督権(検察庁法7条乃至10条)を根拠に検事正などに指揮監督権の発動を求める上申をすることであり、実例として、ひき逃げ交通事故の不起訴裁定の取消を求め、起訴に持ち込んだものがあるようであり、事案によっては有効であろう。但し、あくまでも指揮監督権限の発動を求める上申に過ぎず、その上司に、これに応える法的義務があるわけではない。 Bの付審判請求(刑訴法262条以下)は、その対象となる事件が公務員の職権濫用罪などに限られるなど制約が多く、一般的に利用できるものではない。 そうすると不服申立としての一般的手続は、@の検察審査会に対する審査申立となる。検察審査会の審査では、審査申立人や証人の尋問など(検察審査会法 37条)一定の調査をすることが出来る。しかし、捜査記録が開示されないため、審査申立人の立証活動に限界がある。またその議決に法的な拘束力がないため (同法41条)、起訴相当の議決がなされた事案であっても、起訴される比率は必ずしも高くないという問題点が指摘されている。制度を空洞化させないためにも、検察審査会の議決が検事正を拘束するよう改める必要があると考える。 (8)ストーカー行為などの規制などに関する法律 2000年5月、ストーカー行為などの規制などに関する法律が制定された (資料24)。この法律は、「つきまといなど」のストーカー行為を禁止し(同法3条)、これがあった場合、警察本部長や警察署長などはこれらの行為をしてはならない旨警告し(同法4条)、この警告に従わなかった場合は、公安委員会が当該行為の禁止などを命じることが出来ることとし(同法5条、但し同法6条により、緊急の場合は警察本部長などは仮の命令をだすことが出来る。)、ストーカー行為をした場合には6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、禁止命令に違反して更にストーカー行為をした場合には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとした他(同法13条、14条)、警察本部長などによる援助(同法7条)や国、地方公共団体などによる支援(同法8条)について定めている。 ストーカー行為については、これを正面から規制する法律がなかったこともあって、被害申告を受けた警察などにおいて適切な捜査がなされず、そのためこれ がエスカレートして殺害事件などの凶悪な事件に至った例が少くないことは前記の通りであり、その対策として、上記法律が制定されたものである。 この法律が適切に運用されるなら、同種事件の再発防止に役立ち、警察などに対する信頼も確保されよう。 2.公判手続と被害者 (1)はじめに 我が国の司法制度においては、民事と刑事の分離が厳格に規定されており、被疑者の起訴権限は検察官が独占し(刑訴法247条、例外は同法262条以下の付審判手続のみである。)、その後の訴訟進行も、裁判所、検察官、被告人、弁護人のみが当事者として関与し、被害者は当事者ではない。したがって、被害者の公判手続関与を定めた規定は殆どない。 僅かに、被害者が公訴提起後の手続に関与するのは、証人として証言する場合か、今回の改正法による意見陳述を希望して実施する場合(改正後の刑訴法292条の2)、法廷傍聴への配慮(犯罪被害者保護法2条)程度しかない。 被害者は、公判段階においては、審理の状況が分からない、審理されている内容も分からない、事実関係や被害感情について、自分の意見が反映されないなどについて不満、不信を抱くようである。被害者は、公判段階になれば、真実が明らかにされ、正義が回復されると期待しているが、実際にはその被害者が脇に置かれ、被害者が理解できないところで手続が専門的に進行してゆく。ここに衝撃を受けるのである。これでは被害者が立ち直るのにも悪影響を与えるし、司法制度への信頼も揺らぐことになる。 したがって、真実発見、適正な国家刑罰権の発動などとの刑事訴訟法の基本原則と調和させながらも、被害者の地位を検討する必要がある。 (2)法廷傍聴など 被害者が法廷傍聴を希望する場合には、検察の被害者通知制度などによって、裁判の日時などの連絡を受けることが出来るようになった。また犯罪被害者保護法によって、被害者が法廷傍聴できるように配慮されることとなった(同法2条)。しかし、現在の裁判では、書面審理が中心であり、出来るだけ証人尋問などを避けるように運用、訴訟指揮されているうえ、書証の取調も簡略化された要旨の告知によってなされているため、傍聴していても、どのような事実が審理されているのか、詳細を知ることは困難である。 また刑事訴訟手続は極めて専門的、複雑であるため、被害者が傍聴しているだけでは、その審理の状況、手続の意味すら分からない。したがって、前記被害者通知制度を活用して、最低でも法廷傍聴時に被害者が公訴事実の要旨を手元で参照できるよう資料を交付する必要があろう。また公判手続について(希望する)被害者に説明、援助する制度も必要である。 この点検察庁において、1999年10月から、被害者に刑事手続を説明したり、種々の相談に乗る、被害者支援員制度が始まっており、その成果が注目される。このような活動は、各地の弁護士会においても検討されているところであり、その実施が望まれる。なお、要旨の告知だけでは分からない部分を知るためには、公判廷に提出された訴訟記録を閲覧謄写する必要がある。 今回の犯罪被害者保護法によれば、損害賠償請求などの正当な理由があれば、公判手続中にも訴訟記録の閲覧、謄写が認められることとなった(同法3条)。 被害者の事実関係を知るという理由がこの正当な理由にあたると判断されるのか否か、現段階では不透明と言うほかないが、この制度の柔軟な運用を望みたい。 (3)事実関係についての反論 事実関係に対する反論については、犯罪被害者の証人尋問が実施されれば、その機会が与えられる事にはなる。しかし実際の手続では、前記の通り、書面中心の審理であって、被害者の証人尋問が実施されるのはまれである。被害者の捜査段階での事情聴取では、必ずしも被告人の主張の詳細を聞かされているわけではない。従って、公判段階においてこれが明らかになり、被害者にとってこれに反論する必要が生じることがあるが、証人尋問の申立がなされるか否は、通常、検察官の裁量に委ねられているのである。 犯罪に関しては、被害者が当事者なのであり、真実発見のためには被害者から事情を詳細に聞く必要がある。またこれが被害者の立ち直りを助け、二次被害発生を防ぐ手立てともなる。更には被害者の関与を認めることで、刑事訴訟手続の目的の一つは、「国家としての正義回復」であることを関係当事者に再認識させ、司法制度に対する信頼の醸成にも役立つのである。 しかし、この事実関係に関する被害者の反論を権利として認めることは、刑事訴訟の運営において被害者を当事者から除外している現行制度のもとでは立法論的に困難な問題がある。とすれば、何故被害者が当事者から除外されなければならないのか、刑事司法の制度趣旨から再度真剣に検討すべきであろう。 しかし、被害者の反論権を尊重することが、真実発見や被害者の立ち直り、ひいては司法に対する信頼確立のため必要なことは前記の通りであるから、立法論的解決にまで至らなくとも、取り敢えずは運用によって改善すべきであり、被害者の希望がある場合は、検察官は、被害者の事実に関する反論についても、これに真摯に対応する必要がある。 またこのような被害者には、その主張整理についての助言を受ける必要があり、当面、前記の検察庁の被害者支援員制度や弁護士会、弁護士のボランテイア的活動で対処することが望まれる。 (4)量刑などに対する意見 被害者の心情その他の意見の陳述は、今回の改正で条文に明記された(刑訴法292条の2)。しかし、この陳述はあくまで心情その他の意見についてであって(公訴事実に関する詳細な供述は制限される。)、これを犯罪事実の認定のための証拠とすることは出来ない(同条9項)。この制度の問題点は、今後の運用の積み重ねによって明らかにされることとなろうが、被害者の心情と被告人の防御権行使とに配慮した訴訟当事者間の節度ある対応が望まれる(参考文献、『ジュリスト』、2000年4月15日号28頁以下)。 (5)控訴についての意見 被害者の控訴に関する意見表明については、現行法上何の規定もない。これを制度化することは、前記の通り、現行司法制度の根幹に触れることであり、現状では困難であろう。しかし、これについての被害者の意見は、前記の被害者の事実関係についての反論と同様に扱われるべきであって、検察官は申出があればこれを真摯に聞くべきである。 3.受刑段階と被害者 (1)受刑段階における、犯罪被害者対策に関する規定は殆どない。僅かに監獄 法施行規則に、被害者に対する賠償などの必要がある場合は、受刑中でもその作業賞与金を支給することが出来るとの規定があるだけである。被害者が、受刑者の処遇について関与することを可能にする規定は全くない。 そのため、被害者には、受刑者の受刑場所、出所予定日、出所事由、出所後の帰住先などの情報が、全く知らされていない(この弊害などについては、第2節犯罪情報へのアクセスで触れる)。 (2)なお、仮釈放、仮出獄の審査にあたり、被害者を死亡させたような事案、重度 の障害を与えた事案などでは、保護観察官又は保護司が直接被害者などのもとを訪れ、被害者の状況及び感情の調査をすることになっているが、これは受刑者の環境調査の一環であり、被害者の意思を仮釈放などの審理に反映させるためのものではなく(宮澤浩一他監修『犯罪被害者対策の現状』328頁)、もちろん被害者に対する情報開示のためのものではない。 (3)受刑者の更生のためには、受刑者自身が自己の犯罪行為について真摯に反省しなければならないが、ときとして、被害者の心情を受刑者に伝えることがこれに役立つ場合がある。いわゆる修復的司法に関連する問題であり、これについては別に論じられるが、この問題についても真剣に検討する時期が来ている。 |