| 第7章 まとめに代えて |
| ここでは、「犯罪被害者支援と弁護士・弁護士会の役割」にかかわる基本的な問題点のいくつかについて検討すると共に、本研究を踏まえての私たちの提言と決意を述べ、まとめに代えることとする。 1.犯罪被害者の求めるものと弁護士の理解 (1)犯罪により被害を被った人々が本当に必要としていること、援助を求めていることは何なのだろうか。私たちが今般、犯罪被害者の支援について議論をするにあたってまず第一に突きつけられ、かつ最もその把握が困難であったのがまさにこの点であった。 犯罪が被害者に対して与える被害の程度・内容は、犯罪の軽重、被害者側の受け止め方などによって千差万別であって、それぞれの被害者の求める援助なども自ずと異ならざるを得ない。その意味では、すべての支援は「ケースバイケースで」というのも一つの回答である。 しかしながら、犯罪被害者支援を制度の問題として考えるとき、そして弁護士、弁護士会が具体的にどのように支援に関われるかを検討するとき、被害者の多くが本当に求めているニーズを的確に把握することなくして、有効な施策を講じることができないのは明らかである。そこで、私たちは、被害者に対するアンケートという形式で、この点の調査及び整理をすることとした。 そのアンケート結果によれば、被害者の多くが希望する支援として挙げたのは、まず@被害直後の危機的な状況下での支援、次にA捜査や裁判、処分等の刑事手続の段階における情報の提供と参加、さらにはB被害によって喪失した経済的損失の回復、の以上3点といってよい(各論については第2章参照)。 しかし、アンケートの回答を通じて切実な被害者の叫びに接し、その行間を推し量るとき、被害者の具体的な声の意味するところは、精神的経済的支援を受け、あるいは事実の真相究明をし、関連情報の提供を受けることそれ自体を最終的に求めるということではなく、被害者が自らの基本的な人権を守るため暗中模索している姿である。 すなわち、被害者が求めているものは、被害直後から直面する様々な問題に対し、被害者の声に示される具体的な要望の実現を手がかりとして、被害を受ける前の自分たちの幸福円満な家庭生活や平穏な社会生活に少しでも近づき、侵害された人権を回復したいという一点に集約されると思われる。 今、犯罪被害者支援の問題の中で問われているのは、支援を求める被害者のこのような切実な声に対して、これまで私たち弁護士や弁護士会がはたして十分な対応をしてきたのだろうかということである。 もし否とすれば、これからはどのように改善していくべきなのかを問うべきことになる。 (2)私たちは、これまでの日常の弁護士業務の中で、被害者とのかかわりがなかった訳ではない。加害者に対する損害賠償請求などの民事上の対応、被害届の提出や告訴などの刑事上の対応など実際には相当程度の関与がある。 しかし、私たちが弁護人として刑事弁護手続に関与し、検察・警察と対峙して被疑者・被告人の権利利益を擁護するために活動する場合と同じような熱意と姿勢で被害者支援の問題に取り組んできたかといえば、直ちに首肯するには躊躇がある。 振り返るべきは、これまで私たちがいろいろな場面で被害者の声に耳を傾けた際に、本当の意味で被害者側に立ち、被害者の心理状態、生活状況、社会的立場などを十分に理解したうえで接してきたのかどうかである。 私たちは、ともすれば、少しでも多い損害賠償金を加害者から獲得することを主眼とし、これを十分に達成することが、一方では弁護士の力量であり、他方ではこれが最も被害者を納得させ易く、あるいは精神的な癒しの一助になるものではないかと錯覚したり思い込んだりしていなかったであろうか。 これは、私たち弁護士が基本的に是とする明確な成果や効率を求める業務活動と被害者が真に求める援助とが必ずしも一致せず、被害者と弁護士とのせっかくの接点が生かされてこなかったことを現していると言えよう。 このような自戒と反省に立ち、真剣にこれからの被害者支援の問題を語るときに私たちがまず理解しなければならないのは、私たちの前に相談に訪れる被害者は、すべてがすべて加害者に金銭的な賠償を求め経済的な回復を図ることを第一義と考える人々ばかりではなく、すでに指摘したようにそれ以外の支援を切実に求めていることが少なくないということである。 このような理解を欠如させたまま被害者と接していると、「弁護士は賠償金のことばかりで杓子定規だ」、「被害者の本当の気持を理解してくれない。」などの被害者からの批判を甘受しなければならないばかりでなく、本来支援の力になるべき存在である弁護士が、被害者に対して少なからずの精神的被害(二次被害)を与えてしまうという結果にもなりかねない。 現在、被害者相談窓口を設置している多くの弁護士会において、相談担当弁護士に対し、被害者の心理状態など被害者相談の特性を理解するための研修が行われていることは、被害者の視点に立ち、被害者の立場を理解するという意味において特筆すべきことであり、今後さらに充実されることが望まれる。 2.支援団体と弁護士会の役割 (1)ところで、犯罪被害者の求める援助について、もう少し具体的にアンケートの結果をみてみると、弁護士会の果たすべき役割について多くの示唆を与えてくれる。 第1に、手軽に相談できる犯罪被害者相談窓口を弁護士会が設置すべきことである。 「話を聞いてくれること。普通の人には話しにくいことなので弁護士に聞いて欲しい」「被害者の考え方を十分に聞いて欲しい。その上でプロとしてのアドバイスをして欲しい」といった声は、法律専門家である弁護士による相談窓口の存在あるいは弁護士が相談に応じてくれることを犯罪被害者が求めていることを示している。 第2に、事件直後の時期にも簡便にアクセスできる犯罪被害者のための相談窓口があることが求められている。 「被害者は何をすべきか何ができるのかアドバイスが欲しい。何も知らず、又知る意欲すらないままに時間が過ぎ、後悔することが多かった」「事件直後にぼーっとしているときに適切なアドバイスが欲しい」という声は、事件直後の危機的対応の必要な時期に手軽に相談できる窓口があること、その窓口を犯罪被害者が知ることができしかもアクセスしやすい制度が求められていることを示している。 第3に、親身の相談、被害者の心情をくみ取ることのできる対応を弁護士に求めていることである。 「被害者の心情をよく理解して心までもが寄り添えるような弁護士であって欲しい」「この事件はこんなものだという思い込みは捨てて欲しい。その思い込みで被害者に接すると被害者はますます心が壊れてしまいます」というのである。 つまり弁護士の対応には、法律専門家であるがゆえに現行の裁判制度のもつ限界に囚われて結論を先取りしてしまいがちであり、ビジネス・ライクに扱いがちな傾向がある。犯罪被害者はこうした弁護士の対応に傷つき、さらに心が壊れてしまうのである。そのようなことにならないよう親身な犯罪被害者の心に寄り添う対応が求められているのである。 (2)支援団体と弁護士会の役割分担 こうした被害者の声を実現するためには、弁護士会はどのような支援をすべきなのか、どのような支援が弁護士会のなすべきことなのか。このことは、結局支援団体と弁護士会の役割をどう位置づけるべきかに帰着する。 この点についても、弁護士会に対するアンケート調査及び訪問調査が多くの示唆を与える(第4章参照)。 第1は、犯罪被害者に対する弁護士会独自の相談窓口設置の傾向である(第4章第4節1)。 これまで支援団体に弁護士が個人的に参加する形で犯罪被害者支援を進めてきた単位会でも、今後は犯罪被害者に関わる独自の委員会を設置したり弁護士会として独自の犯罪被害者相談窓口が必要だとしていることは、支援団体の設けている相談窓口とは別の弁護士会独自の相談窓口の存在が有用であることを示している。 現在11の単位会に犯罪被害者相談窓口が存在し、窓口のない単位会でも今後12会が犯罪被害者相談窓口の設置を考えている。 私たちは、この動きを押し進めていくべきである。 弁護士会の犯罪被害者相談窓口を設置することによって犯罪被害者相談の間口の拡がる効果があり、支援団体や犯罪被害者問題にかかわる各種専門家や団体をコーディネートする役割も期待できる。さらには犯罪被害者からの相談の交通整理の役割も期待できよう。 第2には、支援団体への相談と弁護士会への相談をどのように位置づけて分担するかの問題がある。 ここでは弁護士は犯罪被害者の精神的援助もよくなしうるのかという弁護士のカウンセリング能力に対する評価の問題が伏在している(第4章第4節2(1)A)。 弁護士にはカウンセリング能力が欠如し精神的援助はよくなしえず弊害の方が大きいと考えれば、犯罪被害者は支援団体によって先ずカウンセリングも含む相談を受け、その後、支援団体から法律相談が必要だと判断された相談を受けるシステムが理想だということになる。 これに対して、犯罪被害者に対する精神的援助は犯罪被害者にとって最も重要なものであるという理解から出発すると、弁護士会の相談に内容面での制限を設けることはないことになる。この様な考え方の弁護士会は、相談内容の面で弁護士会と支援団体の任務役割を分担するのではなく、弁護士のカウンセリング能力を高める研修を必須とし、その面で支援団体の力を借りようとする。 ただ実際には各地に特有な実情がある。支援団体が十分に育ち切れていない場合には弁護士会が精神的援助の面においても、当面は犯罪被害者の力にならざるを得ない。アメリカやイギリス・ドイツなどと異なり、ボランティアが十分には育ちにくい日本では、民間の支援団体が育つまでは弁護士会が主導的役割を果たさざるを得ない場合もある。 これに対し、支援団体が精神面のケアのできる専門家集団を取り込み、この種の支援をする力を蓄えている場合には、弁護士会の相談窓口は支援団体との連携を深めつつ法律面での相談に応じればよいということになろう。 第3に、法律相談以外の援助の分担である。 犯罪直後の危機対応においては、支援団体が救急車の手配や性被害の被害者の病院へのエスコートなど細やかな直接支援をなしうるだろう。弁護士会は犯罪直後の危機対応については、直接支援の面での機動力はない。せいぜい支援団体の存在を被害者に教えるというパイプ役を果たすのが精一杯である。 しかし、弁護士会の援助が有用な場合も多い。たとえば犯罪被害者のマスコミの取材攻勢からの保護、危機段階での刑事手続や捜査状況の一般的説明などは弁護士の力が発揮できる分野である。 このように法律相談以外の支援の分野では支援団体等と緊密な連携や情報交換をはかりながら、弁護士会の実践を積み重ねて行くべきである。 もちろん、捜査・刑事手続の各段階においては、支援団体の援助とともに弁護士の援助が有用な場合が多い。法廷への証人としての出頭、意見陳述の際の付添や法律家としてのアドバイス、傍聴への付添及び具体的な刑事手続の説明などは犯罪被害者からも希望されている支援活動である。この面では支援団体との有機的連携が模索されることになる。 (3)支援団体のネットワーク化の必要 犯罪被害者に対する支援はひとり弁護士会だけがなしうるのではない。民間の支援団体や専門家集団、関係諸機関とのネットワークがあって初めて力を発揮することができる。各単位会においても、精神科医や医療関係者、臨床心理士、カウンセラーなどと情報交換をし、あるいは講師に招いての研修を実施するなど例が報告されている。 今後、なお一層のネットワークのあり方が模索されるべきである。 3.弁護士業務との関係 (1)私たちが犯罪被害者支援の問題に取り組むとき、もう一つ大きな問題に直面する。それは、弁護士費用の問題であり、このことは裏を返せば、弁護士は、どこまで無償のボランティアとして活動をしなければならないのかの問題でもある。 被害者が弁護士に支援を求める場合、すべての被害者が弁護士の費用を支弁できる訳ではないからである。 実は、弁護士費用負担の問題と経済的に困窮している社会的弱者の法的援助の必要性を如何に両立させるかは、ひとり被害者支援の問題に限ることではなく、私たちは、これまでも弁護士会の多くの委員会活動などの中で、このことを経験している。 たとえば、児童虐待防止のための各種団体・機関とのネットワーク活動、ドメスティック・バイオレンスの駆け込みシェルター活動、高齢者や知的障害者の支援ネットワーク活動などである。 これらの支援活動は、全国的にみてもその分野に関心の高い弁護士有志の手弁当によるボランティア活動によって支えられながら多大な成果を上げているが、その陰では弁護士費用の支弁の問題をどのようにするのかという大きな課題が残されたままであるという事実もある。 被害者支援についても、現状の活動についてもさることながら、今後さらに長期的かつ組織的な支援が求められるような段階に至った場合には、これまでのようなボランティア精神のみでは遠からず限界に直面することは避けられない。 これは、弁護士側から見れば支援活動の業務性・採算の問題であるが、被害者側からみても、自分たちに対する支援が弁護士のボランティア活動で支えられているという前提では、必ずしも十分な支援を躊躇なく求めることができるのかという懸念にも繋がりかねない。 (2)加害者側については、被告人の国選弁護制度があり、被疑者に対しても公費による弁護人制度の必要性が強く求められ、その実現が日程にのぼっている。 現在提案されている公費による被疑者弁護制度の問題点については、ここでは取り上げないが、少なくとも、加害者側には、このような公費による弁護制度があるにも拘わらず、被害者側については何もないということは均衡を失すると言わねばならない。 将来的には、弁護士による支援を求める犯罪被害者に対しては、経済的条件など一定の適格制限はつけるにしても、公費により弁護士を付けられる制度の設置を検討すべきである。 公費による被疑者弁護制度の実現は、全国の弁護士会総力を挙げて取り組んだ当番弁護士制度の成功と定着によるところが大であるというのであれば、私たちは、被害者支援についても当番弁護士制度(派遣弁護士制度)を始めることで、その実現をめざすことを本気で検討すべきではないだろうか。 また、現行の法律扶助制度は、立替費用の償還制が原則とされているが、被害者支援については給付制を原則とし、他方で、訴訟、調停などの定型的な弁護士業務だけではなく、法廷付添、情報開示請求、マスコミとの折衝などの犯罪被害者支援業務についても扶助付与の対象を拡大するなど、法律扶助制度を改善し、犯罪被害者にとって法律扶助制度を利用しやすくすることも実現すべきである。 いずれにしろ、被疑者・被告人の人権擁護のための諸制度との均衡を図る意味からも、その対局にある犯罪被害者の支援を全うするため、公費による被害者弁護制度や法律扶助制度を確立するよう努力することが求められている。 費用支弁の制度的保障があることが、支援を求める被害者にとっても、これを支える弁護士にとっても必要であり、支援活動をより充実させ実効あらしめることになることは疑いない。 その意味においても、様々な場面で被害者と直接接している弁護士、弁護士会が、この制度の確立に向け社会的な影響力を発揮しなければならない時期に来ているものと思われる。 4.いわゆる修復的司法の手法ー和解プログラムの試み > (1)我が国の犯罪被害者は、既に述べてきたように、刑事司法において加害者とは切り離されてきた。 今回の刑事訴訟法の改正や犯罪被害者保護法の制定でも、被害者が直接加害者と関われることになったのは、公判での意見陳述、損害賠償の合意についての公判記録への記載制度などに過ぎない。 しかし、被害の回復あるいは填補は、それが完全な被害回復を意味するものではないとしても、加害者との関係において、被害者が納得を得られる形をとることが望ましい。 (2)犯罪によって破壊された被害者と加害者の関係の回復ないし修復が、刑事司法の面からも望ましい姿であると考える「修復的司法」の考え方からは、被害者と加害者の関係調整のための一つの手法として、和解プログラムを準備することが提唱されている。 我が国では、「示談」が謝罪と損害の填補のため利用されてきた実績がある。 しかし、一方でそれは捜査あるいは公判段階において、被疑者・被告人の利益になるものとして利用され、必ずしも被害者の意向とは一致しないことが多いとも指摘されているが、財産的被害の回復には一定の効果を上げていることも事実である。 今回の調査によっても、アメリカやドイツでは、被害者と加害者間の調停制度がかなり利用されていることも明らかになったが、我が国でも、岡山仲裁センターの実施した和解例が報告されている(日弁連犯罪被害回復制度等検討協議会第一次答申書)。 (3)和解プログラムについては、被害者の希望しない和解の強制につながり、加害者の利益に資するだけの制度になるのではないかとして、被害者側から強い疑問が投げかけられている。また、被害者側は加害者との関係修復など望んではいないという意見もある。 しかし、被害者側に、加害者と対面しあるいは自分の思いを直接伝えたいという希望がある場合、現状ではそのような機会が設けられる制度はない。 また、加害者の立場からも、被害者や遺族の心情に接して、それを理解することは更生に役立つものであって社会的にも有益であるし、ときには損害賠償による被害の填補が期待できることもある。 そうだとすると、このようなプログラムに親しみやすい種類の犯罪について、被害者が求める場合に限って、被害者と加害者が直接対面する機会を設ける制度は有益なものではなかろうか。 (4)このようなプログラムの実施時期や方法については、特に慎重な準備が必要であり、弁護士だけでなく、ケースワーカー、臨床心理士などの専門家、そして、鑑別所や刑務所などの関係機関との連携が必要であり、被害者に対するサポートが十分になされなければならない。 当面は軽微な財産犯や少年事件などについて、その機会を作り、プログラムの実施方法について十分な調査検討をすることが必要であるが、私たちはこのような手法が犯罪よる被害の回復に、一定の役割を果たすことができるようになることを期待したい。 5.私達の提言と決意 私たちは、本問題について今回調査・検討した結果を踏まえ、国などに対し次のような提案をし、また弁護士・弁護士会としては、次のような努力をするべきものと考える。 (1)国・地方公共団体は、次の立法と施策を実行すべきである。 @犯罪被害者の権利保障の基本理念を定めて、犯罪被害者の法的地位を明らかにし、被害者支援の諸施策の基本方針を定める犯罪被害者基本法を制定する。 Aそして、当面次の施策を実施すべきである。 ア.犯罪被害者に対する経済的補償については、一定の故意犯による死亡と重傷害のみを対象とし高度の後遺症だけが補償範囲とされ、しかも給付金額が十分なものではないなど問題点が指摘されている現行の犯罪被害者等給付金支給法の改正にとどまらず、新たに犯罪被害者補償法を制定し、公的な被害者補償制度を確立する。 イ.被害を受けた直後の犯罪被害者に対する物心両面の支援の必要性を十分に理解し、これを速やかに且つ的確に実行できる人的・物的体制をもつ緊急支援制度を設置し運営する。 ウ.経済的な理由で弁護士を依頼できない犯罪被害者に対し、公費による援助制度を設ける。 法律扶助制度の適用を弁護士の犯罪被害者支援業務に拡充することが現実化しつつあるが、同制度に対する予算措置を大幅に拡大することも一つの方法である。 B加害者の行刑に関するものも含め被害者に必要な情報を提供するなど、被疑者・被告人の権利を不当に制限しないよう慎重に配慮しつつ、刑事司法における被害者の地位の確保をさらに検討する。 C民間の犯罪被害者支援団体に対して、財政的な援助を行い、これら団体に対する民間からの寄付についての免税措置を設ける。 (2)私たち弁護士・弁護士会は、次のことを実行するよう努力するべきである。 @犯罪被害者の「弁護士に対する距離」は、私たちの考える以上に遠いものがある。 このような弁護士に対するアクセス障害を解消する意味で、既に相当数の弁護士会では、犯罪被害者相談窓口を設置しているが、これを全国的規模で展開するとともに、相談業務の充実をはかる。 また、迅速な対応を実現するためには、犯罪被害者当番弁護士制度の設置・運用も検討すべきである。 A犯罪被害者への効果的な支援については、警察・検察はもとより、精神科医・カウンセラー、福祉その他の専門家によってなされる部分が多く、弁護士を含むこれら専門家の協働・連携があって初めて十分な被害者支援が可能になる。 このようなことから、弁護士会としては、これら各種専門家あるいはその団体と協力して支援活動にあたれる体制を構築する。 B加害者側の弁護人として、あるいは被害者から相談を受け、さらに被害者の代理人としてであっても、私たち弁護士の言動・行為により被害者に二次・三次被害の発生する可能性があることを十分に認識し、被害者に対し、適切な対応ができるよう研修を実施する。 C刑事司法手続における被害者の地位のあり方については、被害者に当事者またはそれに近い地位を認めようとする考え方や、訴追側と被告人という二当事者対立構造の基本的な枠組の中で被害者に一定の権利を認めていこうという立場など議論の分かれるところであるが、今回の犯罪被害者保護法の制定や刑訴法の改正により、わが国の刑事裁判手続においても、被害者に一定の関与が認められるに至ったことはまちがいない。 私たちは、重罰化や適正手続の軽視につながるような被害者の関与には賛成できないが、被害者の地位が、刑事手続においてもさらに尊重されるべきことに異論はない。 刑事司法における被害者の地位のあり方については、今後更に検討すべきものとしても、一定の種類の犯罪について、しかも当事者が同意した場合に限り、加害者と被害者が面接するなどして関係の修復をはかり、ときには被害弁償についての合意形成などしてみる「和解プログラム」などのいわゆる「修復的司法」の手法についても、関係各機関にも働きかけ、実現のために努力する。 |