平成13年度
    「地方議会と住民投票」
       〜21世紀、地方自治の前進をめざして〜




は じ め に

 21世紀は、 地方の時代、 地方分権の時代といわれている。
 いうまでもなく、 地方自治は、 戦後の日本国憲法に1章 (第8章、 92条から95条) が設けられ、 新しい歴史を歩みはじめた。 その基本は、 「地方自治の本旨」 (憲法92条) であり、 団体自治と住民自治であるが、 戦後半世紀の歩みの中で、 地方自治は相対的に肥大化した中央政府によって、 財政と人事を押さえられ、 「三割自治」 とやゆされる事態が長く続いた。
 しかし、 地方自治は、 90年代以降 「地方分権」 が進められ、 ついに2000年4月、 地方分権一括法が施行され、 大きな前進の時期を迎えた。 機関委任事務が廃止され、 中央と地方は対等平等の時代に入った。 さらに自主財政権の確立=税財源の委譲、 合併、 地方交付税制度の改革等が論議をよんでいる。
 いま、 中央政治が混迷・閉塞から改革を競いあう時代になっているが、 この地方の時代の主役であるべき、 住民、 地方自治体、 首長、 議会の役割がいま見直されてきているというべきである。
 この 「地方自治」 は、 壮大かつ重要なテーマであるが、 あるいはそれ故にか、 今までの弁護士会 (単位・連合会とも) は、 ほとんど取り組んだことがなかった。
 この地方の時代、 司法改革の時代に弁護士、 弁護士会として何ができるか何をなすべきか、 このことを考えてみるべく、 まず大きなテーマとして 「地方自治」 に取り組むことが決定された。

 地方自治の主役は住民である。
 住民参加、 総参加市町村政、 開かれた地方自治等々が標榜され、 各地の首長が活躍し注目をよんでいる。 一方、 分権の制度・改革の中で、 住民の直接の付託を受けて首長とともに二元制の一翼をになうべき議会がもうひとつぱっとしない。 分権改革の中でも議会の制度、 機能、 役割等につきふさわしい検討改革がなされていない様に思われる。 その 「弱点」 をついて、 あるいは、 補正すべく、 住民投票が注目を浴びており、 幾多の苦難奮闘の上に住民投票を成功させたところは、 当該自治体はもとより、 テーマによっては、 国政に対しても大きな影響を与えようとしている。
 そこで、 間接民主制の代表機関 (議事機関=憲法第93条) である地方議会と直接民主制の雄であるが、 現行法に規定がない住民投票をセットでとりあげ、 議会の現行法上、 制度上、 運用上の問題点を調査検討し、 議会の創造的発展の方途をさぐり、 相対立、 協力、 補完しあう住民投票とを合わせて調査検討し、 もって住民自治・地方自治の前進のための方向と提言をさぐってみたいと思う。
 そのために 「地方議会と住民投票」 というテーマが設定された。

 本書の構成は以下のとおりである。
 第1章は、 地方自治の現状、 特に地方分権一括法施行後の現状をスケッチし問題提起を行う。
 第1節で、 戦前戦後の特に地方自治の変遷、 特に地方議会の歴史を概観するものである。
 第2節においては、 地方分権一括法の施行とその基本的評価を述べる。
 第3節において、 住民自治の意思形成と反映において、 現行法における直接民主制の諸制度の概要と問題点および、 最近注目をよんでいる住民投票の意義と問題点を整理している。
 第2章は、 地方議会の現状の総点検と問題点の指摘と整理、 創造的発展に向けての具体的な提言である。 いわば本報告書のハイライトの一つである。
 その提言は、 1都10県のすべての議会へのアンケートおよび先進的議会等の現地調査に裏付けられている。
 第3章は、 住民投票の現状と問題点、 現地調査に基づく実際的課題、 法律的問題点の整理検討と、 住民投票の制度化に向けて、 現実的具体的提言を行っている。 本報告書のハイライトの一つである。
 第4章は、 提言である。 第2章と第3章の結論をあらためて整理し、 議会の創造的発展と住民投票の制度化のための抜本的方向と具体的課題を提言している。
 ご意見ご批判をお願いする次第である。
 補論は、 諸外国の住民投票の紹介である。
 最後に、 各地の住民投票条例、 住民投票法 (要綱) (案)、 文献リストが資料として付されている。