| 第3 イギリス |
| 1 議会制民主主義の国 イギリスは議会制民主主義の国であり、 基本的には住民投票を受け入れていない。 1981年8月に、 コベントリー市の労働党政権が、 行政サービスの充実を選ぶか、 それとも地方税の引き下げを選ぶかという住民投票を実施したが、 これは、 労働党政権が中央政府 (保守党政権) からの市の支出削減を行えという圧力に対抗するためであった。 住民の直接的な意思表示に従おうという直接民主主義的な動機による実施ではなく、 いわば党利党略で行ったにすぎない。 住民投票の結果は、 税の引き下げが選択され、 労働党政権である市当局は完敗した。 そこで、 中央政府は、 多すぎると判断した自治体支出について、 その許否を住民投票で決めさせるべきとの法律を制定しようとしたが、 自治体の強い反発で住民投票の導入はできなかった。 2 住民投票は不要な地方自治制度 イギリスの地方自治体は、 2層制もしくは1層制の自治体である。 地方圏では、 県 (カウンティ)と市町村(ディストリクト)の2層制である。 ロンドンと大都市圏では、 区 (バラー)という1種類の自治体がカウンティとディストリクトの両方の仕事をしている。 このほかに、 地方圏にはパリッシュあるいはコミュニティと呼ばれる地方自治体がある。 一般的には、 ビレッジと呼ばれる村落を基盤とする自治体で、 多くは人口が200人ないし1000人である。 このパリッシュが住民の意向を代表する機能を担い、 市町村や県は、 住民に関係のある政策、 例えば都市計画を決定したり、 何かの施設をつくる場合には、 必ずパリッシュに相談しなければならないとされ、 住民の意思が政策に反映する体制になっている。 また、 パリッシュの意思決定は議会で行われるが、 この議会には住民が出席し、 しかも発言できる。 さらに住民総会が開かれ、 ここでも住民が発言できる。 このようにイギリスの地方圏では、 パリッシュを経由して、 ときには国レベルの施策に関しても、 住民の意思が反映される仕組みになっていることから、 住民投票を要請する必要がない。 |
| 【参 考 文 献】 「世界の地方自治制度」 (竹下譲監修・著、 イマジン出版) 「議会制民主主義と住民投票ーイギリスに住民投票は必要か」 (竹下譲、 月刊自治研1997年1月号) |