平成14年度
    「子どものための法教育」
       〜21世紀を生きる子ども達のために〜」


あらまし刊行に寄せてはじめに目次総論書籍紹介

はじめに
 わが国においては,これまでも憲法や消費者保護についての個別の法律についての教育は,社会科などの教科書やさまざまな団体による小冊子を用いてなされてきている。しかし,そのような教育の実施にもかかわらず,現在の社会状況としては,青少年における規範(ルール)遵守意識の低下に根ざすと思われる問題が増加し,悪質な業者による消費者被害の問題も後を絶たない。
 また,司法の場面においては,司法制度について根本的な改革が進められ,司法制度改革審議会の意見書にも「国民的基盤の確立」のため「学校教育等における司法に関する学習機会の充実」が掲げられ,他方,教育の場面においては,「総合的な学習の時間」が設けられ,学習指導要領においても公民としての基礎的教養の育成と民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎の育成を掲げられているなど,司法の場面においても,教育の場面においても,法に関する教育のあり方について大きな変化が求められている。
 このような状況のなか,私たちは平成14年度関東弁護士会連合会のシンポジウム(2002年9月27日)のテーマとして「子どものための法教育」を掲げ,本書を執筆監修して出版することとなった。
 ところで,「法教育」という用語は,その先進国アメリカにおけるLaw Related Education (LRE)の訳語であり「法律専門家でない人々を対象に,法,法(形成)過程,法制度,これらを基礎づける基本原則と価値に関する知識と技術を身につけさせる教育」と定義されている。
 この定義からも窺えるとおり,私たちが提言し,目標とする「法教育」とは,これまでわが国において行われてきた憲法や消費者保護などの個別の法的知識の提供にとどまるものではない。それは,「読み,書き,ソロバン」と同様に,21世紀を生きる子どもたちにとって,法に関連する知識・技術・意欲が生活の中での素養となり,ひとりひとりがわが国の立憲民主主義を築き支える一員となっていくことをめざす教育である。
 そして,私たちは,「子どものための法教育」というテーマの選定をしてから,わが国における現在の教育制度と教科書,生徒の意識,諸団体の活動などを調査分析するとともに,他方において法教育先進国アメリカでのシステムなどを研究し,その成果をこの本にまとめたのである。時間的にも人員数的にも限られたなかでの研究作業であり,本書での内容にも不十分な点が多々存することをあらかじめ謝するところではあるが,なぜ私たちが今あえて「法教育」の必要性を提言しているのかということを皆様に感受していただくことができ,この研究成果がわが国における法教育の展開の重要な一歩をしるすところとなれれば,今回シンポジウム委員として研究と執筆に携わった者全員の喜びである。
平成14年度シンポジウム委員会
委員長 水口二良