従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが,このたび司法の枠にとらわれず,様々な分野で活躍される方の人となり,お考え等を伺うために,会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。
料理コラムニスト
山本 ゆりさん
今月号の「関弁連がゆく」では、料理コラムニストの山本ゆりさんにご登場いただきます。山本さんは、ブログやレシピ本で広く知られ、特に「syunkonカフェごはん」シリーズは累計780万部を突破する大ヒットを記録しています。最近は「DAIGOも台所」(テレビ朝日系列午後1時半~)の金曜日のレギュラーとしてもおなじみです。今回は、そんな山本さんに、料理への深い情熱、日々のレシピ開発の裏側、そして弁護士に対する率直な印象まで、多岐にわたるお話をうかがいました。
― 子供のころから、料理のレシピを考えるのが好きだったのですか?
山本さん 好きでした。まずレシピ本を読むのがすごく好きで、旅行にでも行かない限り365日読んでいました。そこから自分でも作るようになったのですが、本の通りに作れることってなかなかなくて(そもそも難しい材料が載っているものが多かったのと、祖母の台所には調味料がほとんどなかったので)、少しずつ自分で作れるレシピに変えていったという感じです。料理を始めたのは低学年の頃で、母に目玉焼きや焼き飯、インスタントラーメンなどを教えてもらいました。土日の昼ご飯は小学校3年生くらいから自分で作るようになり、高校生の頃にはもう夜ご飯は全部私が担当していました。
― 子供のころはどのような子供だったのですか?
山本さん 運動神経が悪く、「気にしい」(関西弁で周りの人を気にすることの意)ではあったけど、総じて活発ではあったと思います。口から生まれてきたんかというくらいおしゃべりでした(笑)。幼少期のみ賢くて、2歳ぐらいから絵本はペラペラでしたし、小学校の夏休みは図書室で限界まで借りるぐらい本が好きでした。
― 大学卒業後は、求人広告の広告代理店に就職されたとのことですが、今の料理コラムニストとしての仕事をしようと思ったのはいつですか?
山本さん
今の仕事をしたいと思ったのは大学3年生で就職活動をしている時です。料理も好きで、文章を書くのも好きでした。料理人やパティシエは、細かい作業が苦手で不器用な自分には向いていないと感じ、じゃあ、どちらもできるレシピ本が作りたいなと思いました。
どんなレシピ本かを考えた時に、この世に星の数ほどレシピ本があっても、ふざけたレシピ本がないことに気づいて。当時はmixi全盛期、ブログが流行り出した頃で、友達といつも文章でボケて突っ込んでと遊んでいたので、笑いの要素が入ったレシピ本があったら面白いんじゃないか、そういう本を出してみたいなと思いました。それで出版社への就職も考えたんですけど、どれも東京勤務だったりで、そこまでの熱意はなく(笑)。
自分で作れる方法はないか調べた時に、「レシピブログ」という存在を知って。レシピブログランキング上位のブログからレシピ本が出版されていくようになった最初の頃だったので、これを毎日書いていたら、いつか出版社さんから声をかけてもらえるかもしれないと思って始めました。
でも、まずは普通に就職しようと。内定が出てからブログを始めて、実際就職するまでに芽が出れば辞退しようぐらいに思っていました。求人広告の広告代理店への就職は今考えてもすごく良かったと思います。飛び込み営業だったので耐性もついたし、上司も熱く、先輩もみんな良い人で、日々あらゆる職業の色んなお客さんに出会えたので、ここでの2年間が本当に今の仕事にも役に立っているなと思います。
ただ、就職する前に一度だけ雑誌の仕事をいただけたのもあり、ブログもそのまま続けていて。就職後1年ぐらいしたころに宝島社さんから出版の声がかかって、働きながら本も書いていて、二足のわらじでやるのも大変で。そのタイミングで結婚も妊娠も重なったので、2年で退職して、4月に1冊目の本を出版し、ありがたいことに少しずつお仕事も頂けるようになり、そこからはずっと今の仕事1本でやっています。
― 本やブログのタイトルにもなっている「syunkon」というのはどういう意味なのですか?
山本さん 「春魂」と書いて、高校時代のバスケ部の部旗やTシャツに書いてあったスローガンです。高校名に「春」がついていたので、「根性」みたいな意味だと思います。ブログを始めたのが大学時代で、毎月バスケ部で集まっていたりと青春を引きずっていたので、ブログ名にそのままつけました。
― 今や日本で最も有名なレシピ作家のひとりだと思いますが、ここまでの人気を持つにいたったきっかけは何でしょうか?
山本さん いや全然そんなことないです、恐縮です!!知らない人がほとんどです。ただ、何か1つのきっかけがあってバーンというよりは、少しずつブログで知ってもらったという感じだと思います。あとは宝島社さんから本を出版させてもらえて、それが売れたというのが一番の理由です。営業さんのお陰です。「私(山本ゆりさん)は知らないけど本は知ってる」と言う人が今も大半ですから。「情熱大陸」に出させてもらったのも大きかったですが、それも、本が売れてからだったので。
― これまで考えてきたレシピの総数はどれくらいあるのですか?
山本さん 数えたことないです。ブログだけでも2500くらいあるし、本とか雑誌掲載とか色々足すと最低3000以上はあります。
― それだけたくさんのレシピをどのように管理しているのですか?
山本さん 管理してないです(笑)。ブログにだいたい全部ある、という感じで、自分でもブログで検索して使っています。そこにないものは、忘れてしまってます(笑)。同じレシピをまた作ってしまうことは滅多にありませんが、本に載せる際に、ライターさんに「これ、前のと似てます」と指摘されることはあります(笑)。
― それだけたくさんの数のレシピってどうやって考えているのですか?
山本さん
常に考えています。食材から考える時もあれば、これを使って何か新しいものがないかなと考える時もあります。ざっくりと調理法から、例えば炊飯器を使ったレシピはないかなと考える時もあります。
今はレシピ本を読むときも、レシピの詳細は極力見ないようにしています。他の人のレシピと被ったら怖いので。この仕事に就いてから他のレシピ本を楽しんで見られなくなってしまいました。なので、旅雑誌や料理に関する雑誌(お店の紹介など、レシピが載っていないもの)を見て、具材の組み合わせや盛り付け、雰囲気からヒントを得たりしています。あとはデパ地下やスーパー、コンビニに行って、新しいメニューを見て、同じようなものが作れないかなとヒントを得ることもありますね。
試作はものによって、1回でできるものもあれば30回ぐらいするものもあります。特にお菓子やレンジを使ったレシピは試作回数が多くなります。レンジを使ったレシピは入れて完成するまで分からないので、何度もやり直すことになりますね。
― レシピには著作権がないとは思うのですが、真似されたりとか気にしたりすることはありますか?また真似されないように工夫していることがあったりしますか?
山本さん 全然気にしないです!!って言いたいけど、少しだけあります(笑)。炒め物とかレンジ料理とかはかぶるのは当たり前なので気にしないですが、誰もやってなくてめちゃくちゃ試作した調理法とかは、ちょっとガーンてなる時も(笑)。でもたまたま同じものを思いついたんだと思うようにしてますし、真似やとしたら、真似したいと思うぐらい良いものを作れたのはいいことだと。自分も最初はどこかの誰かの肉じゃがを作らせてもらってるわけやし、真似されないような工夫というよりは、真似されるのはしょうがないから、真似しないように、どんどん新しいもの、誰もやってないことを考えていくしかないと思ってます。(最近では冷凍肉をそのまま使って作る調理法を考えましたが、これももう、どこかでやってるんだろうなと思います笑)
― 簡単なレシピを重視されていると思うのですが、そもそもなぜ簡単なレシピを発信しようと思われたのですか?
山本さん
自分が不器用で簡単なものしか作れないからですね。あえてというよりは、必然的にそうなりました(笑)。またこれまでのレシピ本が難しいものばかりだったので、そうじゃないモノばかりのレシピ本を作りたかったのもあります。
簡単なレシピを重視していますが、一番は「味」を絶対に妥協しないことです。時短のために抜ける工程はできるだけ抜くのですが、大事な部分は抜かないようにしています。例えば、卵を使わないカップケーキなど、バズるためだけに材料を減らしてしまうと、食べたときに「美味しい」とならないので、その点は味の部分にこだわっています。
― 山本さんにとって理想的なレシピってどういうレシピですか?
山本さん 色々ありますが、簡単でおいしく、できるだけ安くて、間違いなく美味しいレシピです。何度も作りたくなるレシピ。あとは、誰も知らない、見たことない、やったことないレシピを思いついた時もすごく嬉しいですね。
― エッセイ本も多数出版されていて、ブログも人気です。文章を書くときに気を付けているポイントなどありますか?
山本さん
文章だと表情や雰囲気が伝わらないので、できるだけ柔らかく感じるように書くこと、上から目線になってないかとか、勘違いしていないか、決めつけていないか、母集団を大きくしていないか、という部分は特に気を付けています。
例えば、「何々しましょう」とは言わず、「私はこうしています」という言い方に変えたり。台所事情は人それぞれで、時間やお金の感覚も人によって違うので、決めつけないようにしています。
あとは、1対1だと思って書くようにしています。例えば、「皆さんありがとうございます」ではなく、「読んでくださっている方、ありがとうございます」というように、一人ひとりに向かって書くようにしています。
― そこまで忙しく生活されているのにもかかわらず、3人のお子さんのお母さんということで、どのように時間を捻出しているのですか?
山本さん 全然うまく捻出できてなくて、日々バタバタでなんとかまわっている、まわってないけどどうにか過ごしている感じです(笑)。空いてる時間はすべて仕事に当ててます!(笑)切り替えないと、明日からはちゃんと整えよう、この山が終わったら、この山が終わったら…を15年ほど繰り返しています。でも子どもも生まれた時からこんな感じなので、そういうもんだと思ってくれてはいます。あとは何より夫と母の協力がめちゃくちゃ大きいですね。
― 出演や出版などで契約を締結されたりすることもあると思いますが、弁護士とかかわりがあることはありますか?
山本さん それが全然ないんです。契約書もちゃんと読んでなかったりします(笑)。
― これまで生活されたなかで弁護士とかかわったりすることはありますか?
山本さん 最近ちょっとした事情で、お話する機会というか相談する機会があったのですが、本当に聞き上手で、心強くて。結局お願いはしませんでしたが、カウンセラーじゃないですけど、話を聞いてもらえるだけで、何かあったら頼れると思うだけですごくラクになるんだなと感じました。
― 何かこの記事を読んでいる弁護士に、ひとつおすすめのレシピを教えてもらえませんか?
山本さん 個人的に大好きな「スープは5分で!担々うどん」をおすすめします。
【スープは5分で!担々うどん】
材料(1人分)
・ゴマ油…小さじ1
・合い挽き肉…60g
・チューブにんにく、チューブしょうが…各2㎝
・豆板醤…小さじ1〜(好みの量)
A 顆粒鶏ガラスープの素…大さじ1/2
A 白すりゴマ…大さじ2
A みそ(合わせみそ)…大さじ1
A 水…200ml
・冷凍うどん…1玉
・牛乳か豆乳(選べるなら無調整)…50ml
・ラー油、白すりごま、あればぜひ山椒…各適量
①フライパンにゴマ油を熱してひき肉、にんにく、しょうが、豆板醤をよーく炒め、色が変わったらAを加えて煮立てる。
②冷凍うどんを入れ、ほぐれたら牛乳を加えて煮る。
③器に盛り、ラー油、すりゴマ、あれば山椒をかける。以上です!!