関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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平成27年 意見書

連鎖販売取引に関する法規制強化を求める意見書

2015年(平成27年)5月15日
関東弁護士会連合会

本意見書の趣旨

  1. 1 開示義務の範囲拡大
     特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)第37条を改正して,連鎖販売取引の概要書面(同条第1項)及び契約書面(同条第2項)につき,次のものを記載事項として追加すべきである。
    1. ① 直近の会計年度における入会者数・退会者数・期末の会員数
    2. ② 直近の会計年度において,連鎖販売加入者(連鎖販売取引を店舗その他これに類似する設備によらずに行う個人に限る。以下同じ。)が支払った特定負担及び収受した特定利益の各平均額
    3. ③ 直近の会計年度における階層(連鎖販売加入者を区分し,区分ごとに取引条件の差異がある場合のその区分)数,各階層ごとの連鎖販売加入者数及び各階層ごとの連鎖販売加入者が支払った特定負担及び収受した特定利益の各平均額
    4. ④ 直近の会計年度における,連鎖販売加入者又は連鎖販売加入者であった者との間での係属中の訴訟件数並びに相談窓口が存在する場合の相談件数及び情報提供件数
    5. ⑤ 直近の会計年度における統括者の売上に占める連鎖販売加入者に支払った特定利益の金額の割合
  2. 2 特定利益の制限
     特商法を改正して,特定利益に関して,一定の制限を設けるべきである。中国では,特定利益を小売総額の30%以内,韓国では35%以内に設定しており,少なくとも,同程度の制限を設けるべきである。
  3. 3 勧誘目的隠匿誘引行為の禁止
     勧誘目的を隠匿して公衆の出入りする場所に誘引する行為についても禁止し,その違反行為に行政処分を課すように,特商法を改正すべきである。
  4. 4 借入金・クレジットを利用する連鎖販売取引の勧誘の禁止
     特商法第34条の禁止行為規定を改正し,特定負担の支払いのために債務を負担する契約を締結することを勧誘ないしは教示する行為を禁止すべきである。
     とりわけ,特定負担の支払いのため,収入や借入目的等に関し,借入先に虚偽の事実を告げることを唆し,あるいは教示し,債務を負担する契約を締結することを勧誘ないしは教示した場合には,より重い刑事罰を規定して禁止すべきである。
  5. 5 後出しマルチに対する規制の明確化
     いわゆる後出しマルチについての規制を明確化するため,
    1. ① 特商法第33条に,勧誘者(以下,特に断りのない限り,連鎖販売取引への加入を誘引する,統括者,同法第33条の2の「勧誘者」又は一般連鎖販売業者をいう。)が被勧誘者を連鎖販売取引に加入させるに際し,被勧誘者との間の商品販売契約又は役務提供契約締結後に被勧誘者に対して特定利益の告知を行った場合もまた連鎖販売取引にあたる旨の規定を追加し,もって当該契約が連鎖販売取引に該当することを明文で規定すべきである。
    2. ② 特商法施行規則第3条及び第4条に,訪問販売業者の顧客が知人等を当該業者に紹介し,又は自ら当該業者の代理店となって第三者に対して同種の契約を成立させた場合に,紹介料その他の名目の報酬を当該顧客に支払うことが予定されているときには,その事実及び報酬額の算出方法を追加すべきである。
  6. 6 金融商品取引,商品預託取引に関する連鎖販売取引規制の明確化
     特商法第33条第1項の定義規定を改正して,連鎖販売取引規制の対象となる事業を「物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下同じ。)の販売(そのあっせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあっせんを含む。),その他全ての有償取引」と規定すべきである。
  7. 7 中途解約に伴う商品販売契約解除の要件の緩和
     連鎖販売取引における中途解約権行使に伴う商品販売契約の解除を,当該連鎖販売契約を締結した日から1年に限定する規定(特商法第40条の2第2項柱書)及び当該商品の引渡しを受けた日から起算して90日以内に限定する規定(同項第1号)を撤廃し,商品販売契約解除の要件を緩和すべきである。
  8. 8 クーリング・オフの際の使用利益の返還請求の禁止
     クーリング・オフを主張した場合,その効果として,引渡された商品や権利の使用利益の返還を拒むことができる,また,提供済み役務の対価の請求を拒むことができるように特商法を改正すべきである。
  9. 9 クーリング・オフ等の場合における統括者の連帯責任の新設
     連鎖販売契約のクーリング・オフ又は契約の申込み若しくは承諾の意思表示の取消しによって生ずる当該商品の販売を行った者の債務の弁済について,中途解約の場合(特商法第40条の2第5項)と同様に,統括者の連帯責任の規定を設けるよう,特商法を改正すべきである。
  10. 10 善意の契約当事者に対する不実告知等に基づく意思表示の取消しを制限する規定の削除
      特商法第40条の3第1項但書の規定を削除すべきである。
  11. 11 無限連鎖講の防止に関する法律の改正
      無限連鎖講の防止に関する法律(以下「無限連鎖講防止法」という。)の規定を改正し,金品の出えんに対し,物品の販売や有償の役務の提供がある場合でも,「物品等の価値が著しく低い場合等,物品等の販売が形骸化している場合」には同法による処罰の対象とすることを明確にし,これによりいわゆるピラミッド型連鎖販売組織に対する規制を強化すべきである。

以上

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