関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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平成28年度 大会決議

性的少数者の基本的人権の擁護に関する決議-多様な性を尊重する社会の実現を目指して-

 同性愛者,両性愛者や性同一性障害者を含むいわゆる性的少数者は,これまで日本社会の中で見えない存在とされ,偏見や無理解から生じるいわれのない差別,中傷,侮蔑や揶揄に耐え忍んできた。性的少数者が社会生活を営むうえで直面する困難は,教育,就労,住宅供給,医療における自己決定,行政・民間のサービス,社会保障,メディアでの扱い等に至るまで多岐にわたっている。
 日本は,平成20年に,国際連合から自由権規約に基づき性的少数者の人権状況を改善する措置を講じるように勧告されたが,現時点に至るもその対応は甚だ不十分であると言わざるをえない。
 個人がいかなる性的指向や性自認を有するかは,個人の基本的人権の根幹にかかわるものであり,これを理由とする差別は,個人の尊重と幸福追求権を規定した憲法第13条及び法の下の平等を規定した同第14条に反することは明らかである。長きにわたり看過されてきた性的少数者の権利に対する意識を啓発し,多様な性のあり方を認めて性的少数者に対する差別を解消することは,まさに憲法が保障する少数者の人権保障の理念に沿うものである。
 当連合会は,性的少数者が差別を受けることなく自らの性的指向及び性自認を自由に表現できる多様な性を尊重する社会を実現するため,性的指向及び性自認に基づく偏見や差別を解消し,教育,就労,住宅供給,医療における自己決定,行政・民間のサービス,社会保障,メディアでの扱い等々,性的少数者が社会生活を営むうえで直面する困難を克服していく必要があるとの考えのもとで,国及び地方公共団体が中心となって,
 (1)周知啓発活動
 (2)差別禁止法の制定に向けた活動
 (3)既存法制度の合理性の検証及び改定
 (4)相談体制・法的サービスの整備
 などの諸施策に取り組むべきことを提言する。
 以上,決議する。

2016年(平成28年)9月9日
関東弁護士会連合会

提案理由

第1 はじめに
 同性愛者,両性愛者や性同一性障害者を含むいわゆる性的少数者の割合は全体の7.6%に該当するとの調査結果が出されている(平成27年4月電通ダイバーシティ・ラボによるインターネット調査)。しかし,日本においては,「性」を生物学的に「男」と「女」の2つに区分したうえ,生物学的な性と性自認は一致し,異性に性的関心を有するという性的指向が正常であるという考え方が支配的である。そして,これに該当しない性的少数者をごく一部の特異な者とみなして無関心であるか,ともすれば社会から排除する風潮が未だ根強い。このような風潮により,性的少数者は,自らの性自認や性的指向を明らかにすることに強い心理的圧力を感じ,周囲に知られないよう振る舞わざるをえないのが実情である。その結果,性的少数者の存在が顕在化しないこととなり,無意識のうちに性的少数者を嘲笑,侮辱,嫌悪の対象とするという差別的な対応をするか,または無関心であり続けるという悪循環が続いていたといえる。
 日本では,平成15年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立したものの,その後は政府及び民間企業ともにさしたる取組みを行っていなかった。平成13年に同性婚を法制化したオランダや性的少数者の権利保障の施策を整備している他の先進諸国と比較し,性的少数者に対する権利保障や差別禁止を目的とする国としての施策は整備されておらず,性的少数者を社会で受け入れ,その権利を擁護するという点において,日本は著しく遅れていたと言わざるをえない。
 しかしながら,昨年6月にアメリカの連邦最高裁判決により同性婚禁止の州法が違憲とされるなど,昨今世界中において性的少数者の権利と平等に対する関心が高まる中,日本においても,性的少数者の権利を擁護し性の多様性を尊重するため,同性カップルに対しパートナーシップの証明書を発行する自治体や性的少数者を対象とするサービスを提供する企業などの新たな取組みが次々と開始された。昨年3月17日には,超党派議連「性的少数者問題を考える国会議員連盟」が結成されたことを皮切りとして,今年に入り,性的指向や性自認に関する課題に関し,各党が相次いで考え方を発表している。
 このように,日本においても自治体や関係諸機関による取組みがなされつつあるものの,性的少数者に対する無理解や偏見は未だ根強く,性的少数者は,日常生活を送るに際し,教育,就労,住宅供給,医療における自己決定,行政・民間のサービス,社会保障,メディアでの扱い等様々な困難に直面している。
 性的少数者に対する偏見や差別を解消し,性的少数者が差別を受けることなく自らの性的指向及び性自認を自由に表現できる多様な性を尊重する社会を実現することは,憲法が保障する少数者の人権保障の理念に沿うものである。
 以下,これらの点について,詳論する。

第2 性的少数者に関する日本における立法や施策等

  1. 1 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の成立
     平成15年に,議員立法により性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「性同一性障害特例法」という。)が成立し,一定の要件を満たせば,家庭裁判所の許可を得ることにより,法令上の性別の取扱いと戸籍上の性別記載を変更できるようになった。しかしながら,生殖能力の除去及び性器形成のための性適合手術が必要であるという点で,人権的観点から大きな問題があると考えられる。また,健康保険の適用がないことから,数百万円もの高額な手術費用の負担を強いる点で利用しづらいとの批判がある(さらに手術をしていたとしても,結婚している場合や20歳未満の子どもがいる場合には要件を充たさないこととなる)。なお,世界保健機関(WHO)等複数の国連機関は,平成26年5月に,トランスジェンダーやインターセックスの人々への不妊手術の強制を非難する報告書(‘Eliminating forced, coercive and otherwise involuntary sterilization - An interagency statement')を発表している。
  2. 2 関係各省庁の取組み
    (1)「子ども・若者ビジョン」
     文部科学省は,子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)第8条第1項の規定に基づき,子ども・若者育成支援施策の推進を図るための大綱として,「子ども・若者ビジョン」を定めた。「子ども・若者ビジョン」では,「性同一性障害者や性的指向を理由として困難な状況に置かれている者等特に配慮が必要な子ども・若者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動を実施します」とされている。
    (2)「第3次男女共同参画基本計画」
     平成22年に閣議決定された「第3次男女共同参画基本計画」において,内閣府,法務省,文部科学省,関係府省を担当府省とし,性的指向や性同一性障害を理由として困難な状況におかれている場合等について実態把握に努め,人権教育・啓発や人権侵害の被害者の救済を進めるとされた。また,法務省を担当府省として,性的指向や性同一性障害を理由とする差別や偏見の解消を目指して,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組むとされた。
    (3)「自殺総合対策要綱」
     平成24年8月,内閣府は,自殺対策の指針となる「自殺総合対策要綱」を閣議決定し,同要綱において初めて性的少数者の自殺対策について言及した。同要綱では,「自殺総合対策の基本的考え方」の「関係者の連携による包括的な生きる支援を強化する」との項目の中で,「自殺の要因となりうる生活困窮,児童虐待,性暴力被害,ひきこもり,性的マイノリティ等,関連の分野においても同様の連携の取組が展開されている」とされ,具体的な対策としては「国民一人ひとりの気づきと見守りを促す」という項目の中で「性的マイノリティについて,無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて,理解促進の取組を推進する。」,また「早期対応の中心的役割を果たす人材を養成する」という項目の中で「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて,無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて,教職員の理解を促進する。」とされた。
  3. 3 文部科学省の調査及び通知
     文部科学省は,平成25年に「学校における性同一性障害に係る対応に関する状況調査」を行い,全国の学校における対応の実例を調査した。その結果,身体的な性別に違和感を持ち,学校に相談した児童生徒が全国に少なくとも606人在籍しており,不登校やいじめにつながるケースもあることが判明した(なお,そのうち約6割の児童生徒が他の児童生徒や保護者に秘匿して,学校生活を送っていることが判明した)。上記調査結果を受けて,文部科学省は,昨年4月,「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」(平成27年4月30日児童生徒課長通知)と題する通知を出し,全国の国公私立の小中高校に対し,性同一性障害を含む性的少数者の児童に対するきめ細かな配慮を求めた。これは,障害者差別解消法第7条2項,8条2項に定める障がいに対する合理的配慮であり,これを提供する義務を定めたものといえる。
     具体的には,学校内外でサポートチームを作り,複数の教職員や教育委員会,医療機関と連携して対応を進めること,教職員が性的少数者についての心ない言動を慎むこと,子どもの服装や髪形について否定したり,からかったりしないこと,相談しやすい体制を整えることなどを求めた。性同一性障害の子どもについて,「自認する性別の制服を認める」,「着替えの際は保健室の利用を認める」,「修学旅行で入浴時間をずらす」などの支援策も打ち出した。
     なお,文部科学省は,教職員の理解を促進すべく,教職員向けに上記通知に関する手引書を作成しており,当該手引書には,性同一性障害に加えて,「同性愛」「両性愛」も明記されている。
  4. 4 セクハラ指針の改正及び労働政策審議会雇用均等分科会における答弁
     平成25年に,厚生労働省の労働政策審議会で男女雇用機会均等法の見直しが議論され,いわゆるセクハラ指針において,同性間のセクハラもセクハラであると明記されることとなった。また,成田雇用均等政策課長は,第139回労働政策審議会雇用均等分科会にて,「性的マイノリティの方に対する言動や行動であっても,均等法11条やセクハラ指針に該当するものであれば,職場におけるセクシュアルハラスメントになると考えております」との答弁を行い,性的少数者に対する言葉や行動がセクハラに含まれることを認めた。
     続いて,セクハラ指針の改定案が発表され,被害を受けた者の性的指向または性自認にかかわらず,当該者に対する職場におけるハラスメントも当該指針の対象となることが明記され,来年1月の施行が予定されている。
  5. 5 自治体の動き
     昨年以降,自治体において同性カップルの権利を保障する条例や要綱を制定する動きが広がっている。なお,NHKが昨年10月に行った「LGBT当事者アンケート調査」では,全都道府県において,合計2600名の性的少数者当事者から回答を受けたが,渋谷区や世田谷区のようなパートナーシップの証明書の制度を利用したいとの回答が8割以上を占めた。
    (1)渋谷区
     渋谷区は,昨年3月に,同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行する旨の「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を制定し,同年4月から施行している。
    (2)世田谷区
     世田谷区は,昨年9月に,同性カップルであることを証明する「パートナーシップ宣誓書受領証」を発行する旨の「世田谷区パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」を制定し,同年11月から施行している。
    (3)兵庫県宝塚市
     兵庫県宝塚市は,世田谷区と同様に,同性カップルであることを証明する「パートナーシップ宣誓書受領証」を発行する旨の「宝塚市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」を制定し,今年6月から施行している。
    (4)三重県伊賀市
     三重県伊賀市は,世田谷区と同様に,同性カップルであることを証明する「パートナーシップ宣誓書受領証」を発行する旨の「伊賀市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」を制定し,今年4月から施行している。
    (5)沖縄県那覇市
     沖縄県那覇市は,昨年7月に「性の多様性を尊重する都市・なは」を宣言し,同性カップルに「パートナーシップ登録証明書」を交付する旨の「那覇市パートナーシップ登録の取扱いに関する要綱」を制定し,今年7月から施行している。
  6. 6 性的少数者の学生,従業員や顧客に対応する企業の取り組み例
  7.  (1)同性カップルを対象とする就業規則の改定
     日本マイクロソフト株式会社は,就業規則を改定し,同性婚を申請した同性カップルに結婚祝い金や休暇制度を適用している。日本アイ・ビー・エム株式会社も同性カップルへの祝い金の支給を実施しているが,さらに,同性パートナーを配偶者と同等に定義し,弔慰金や介護休暇などを適用できるようにするための登録制度を新設することを発表した。
     また,パナソニック株式会社は社内ルールを変更し,今年4月から同性カップルを結婚に相当する関係と認める方針を発表した。
  8.  (2)同性パートナーに対する保険金
     第一生命保険株式会社,日本生命保険相互会社などの生命保険会社が渋谷区の「パートナーシップ証明書」を提出すれば,同性パートナーを保険金の受取人とすることができることを発表した。
  9.  (3)同性パートナーの通信料金の家族割引
     ソフトバンクモバイル株式会社,KDDI株式会社,株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモは,同性パートナーの通信料金に家族割引を適用している。
  10.  (4)性的少数者の学生を対象とした会社説明会
     ゴールドマン・サックス証券株式会社は,性的少数者の学生を対象とする会社説明会を開催し,性的少数者である役職員と学生が直接交流し,話をする機会を設けている。
  11. 7 政党の動き
     昨年3月17日に,超党派議連「性的少数者問題を考える国会議員連盟」が結成され,今年1月27日に立法検討ワーキングチームを設置した。この立法検討ワーキングチームでは,今年1月19日に旧民主党が発表した「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案(仮称)骨子(案)(たたき台)」について議論が行われている。
     一方で,自民党は,今年4月27日に「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」及び「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案概要」を発表し,続けて「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案要綱」も発表している。
     また,今年5月27日に,民進党,日本共産党,社会民主党,生活の党と山本太郎となかまたちは,「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」を国会に提出した。
     さらに,今年7月10日の参議院議員選挙における公約として,自民党,民進党,公明党,共産党,社民党が性的少数者の権利擁護を挙げており,自民党及び公明党が性的少数者への理解を促すための支援法を今秋の臨時国会に提出するとの報道がなされている。

第3 性的少数者の権利保障に関する各国及び国際人権機関の動き

  1. 1 同性カップルの権利保障
     平成13年にオランダが同性婚を法制化したことを皮切りとし,現在,同性婚及び登録パートナーシップなどの同性カップルの権利を保障する制度を有する国や地域は,世界の約20%に及んでいる(NPO法人EMA日本ホームページ)。
     平成25年にイギリスで同性婚が法制化されたことに続き,昨年6月には,アメリカ連邦最高裁判所において,同性婚を憲法上の権利であるとし,同性婚を禁止する州法が違憲と判断されたことから,アメリカ全土において同性婚が容認されることとなった。キリスト教徒による反発が強いイタリアにおいても,今年2月に,上院が同性カップルに結婚に準じた権利を認めるシビルユニオン法を可決し,同年5月に下院でも可決された。
  2. 2 国際連合による是正勧告及び決議
     国際連合の自由権規約委員会は,平成20年に,日本政府に対し,自由権規約に基づき性的少数者の人権状況を改善する措置を講じるように勧告した。具体的には,「委員会は,レズビアン,ゲイ,バイセクシュアル,トランスジェンダー(性転換)の雇用,住宅供給,社会保障,健康,教育,その他法により定められた分野(例えば公営住宅法第23条1項が婚姻または婚姻関係にない異性のカップルのみを対象としているため,婚姻していない同性カップルが公営住宅を借りられない例や,配偶者暴力防止法が同性のパートナーによる暴力からの保護を排除している例にあるように)における差別に懸念を有する。」とし,「締約国は,規約第26条に関する委員会の解釈に則り,差別を禁止する事由に性的指向が含まれるよう法律を改正することを検討し,未婚の異性の同棲カップルと同性の同棲カップルが平等に扱われることを確保すべきである」(外務省仮訳)とした。
     さらに,平成23年には,国連人権理事会は,「人権と性的指向と性別自認」に関する初の決議を採択し,性的指向及び性同一性を理由として個人に対しなされる暴力と差別のすべての行為に重大な懸念を表明し,日本政府もこれに賛同している。

第4 日弁連及び各単位会における性的少数者の権利保障に関する活動

  1.  1 日弁連の活動
  2.  (1) 人権救済申立における勧告及び警告
     日弁連では,性同一性障害を有する受刑者からの人権救済申立事件において,平成21年に黒羽刑務所長宛てに,平成22年に東京拘置所長宛てに,被収容者の性自認を尊重した処遇を行うよう勧告した。また,石原慎太郎氏が東京都知事在任中に行った性的少数者に対する差別的発言に関する人権救済申立事件において,同氏に対し差別発言を繰り返さないよう強く反省を求め,警告した。
     なお,昨年7月に,日弁連に対し同性婚を認めないことは人権侵害であるとの人権救済の申立てがなされている。
  3.  (2) 両性の平等に関する委員会における活動
     日弁連における両性の平等に関する委員会では,性同一性障害特例法の検討を目的とするプロジェクトチーム及び性的少数者の権利擁護を目的とするプロジェクトチームを設立し,性同一性障害特例法の改善に向けた政策提言の検討,性的少数者に対する理解を深める特集記事の掲載,毎年開催している女性の権利電話相談のテーマに性的少数者からの相談も含めるなどの活動を行っている。
  4.  2 単位会の活動
  5.  東京弁護士会は,平成26年から性的少数者を対象とする電話法律相談を月1回実施し,今年4月からは月2回実施しているほか,大阪弁護士会及び札幌弁護士会においても,単発的に電話法律相談を実施する取組みを行っている。
     また,福岡県弁護士会は,今年5月25日,「男女平等及び性の多様性の尊重を実現する宣言」を発表した。

第5 性的少数者が直面する困難及びその解消のための施策

  1.  1 性的少数者が直面する様々な困難
     これまで述べたとおり,上記立法及び施策を前提として,関係諸機関が諸々の取組みをしているが,性的少数者に対する無理解や偏見が未だ社会に根強く残っている。そのため,性的少数者は,日常生活を送るに際し,様々な困難に直面している(「性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会」作成の「性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第2版)」参照)。
     すなわち,メディア,教育機関や勤務先における差別的言動,勤務先での不利益な取扱い(就業規則の規定が同性パートナーに適用されないなど),性的少数者の性自認に応じた配慮の不足,相談体制の不備による困難に加えて,同性パートナーとの入居住宅の確保の困難,異性カップルであれば受けられる公共及び民間のサービスが受けられない,同性パートナーが入院した際の看護・面接権,医療上の同意権がないなどの困難が挙げられる。
     また,青少年,若年層の性的少数者が直面する困難は一層甚大である。すなわち,「LGBTの学校生活に関する実態調査」(平成25年度東京都地域自殺対策緊急強化補助事業による平成25年における「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン調査」)によれば,自らの性自認や性的指向を自覚するのは,小学生時代が22%,中学生時代が39%とのことであり,性的少数者の半数以上が義務教育を受ける期間に自らの性自認や性的指向を自覚することとなる。しかしながら,学校では,制服,トイレ,部活動,健康診断,修学旅行の部屋割りなど男女別に区分されており,そのような区分の中で,いじめやからかいにあい,不登校や自殺につながることも多い。青少年,若年層の性的少数者にとって,日々甚大な精神的苦痛を感じながら学校生活を送らざるをえないのが現状である。
  2.  2 困難解消のための施策
     以上述べた性的少数者が直面している困難を解消するための施策として,以下が挙げられる。
  3.  (1)周知啓発活動
     性的少数者が直面する困難を解消するには,性的指向及び性自認に関する適切な理解を促進し,性的指向及び性自認に基づく偏見や差別を解消するとともに,多様な性のあり方を尊重することが社会全体の発展につながるという認識を推進する必要があり,教育機関,公官庁,民間企業に対する周知啓発活動,研修の徹底及び規定の整備が求められる。
     メディア等による差別的表現に断固として抗議することも有用である。
  4.  (2)差別禁止法の制定に向けた活動
     行政機関及び事業者を対象とした,性的指向及び性自認に基づく差別を解消するための包括的かつ横断的な差別禁止法の制定が必要である。政党が発表ないし提出した法律案に対する提言や対案の提出などの差別禁止法の制定に向けた活動が求められる。
  5.  (3)既存法制度の合理性の検証及び改定
     性同一性障害特例法の要件の緩和に向けた活動,同性カップルが異性カップルと同様の法的保障を受けられるよう,同性カップルが排除されている法制度の合理性を検証し,差別的取扱いであればこれを改めるよう提言するなどの差別解消に向けた活動が求められる。
  6.  (4)相談体制・法的サービスの整備
     国,自治体,民間団体等と連携し,性的少数者がためらいなく相談できる垣根の低い相談体制の整備や法的サービスの拡充が求められる。

第6 まとめ
 当連合会は,上記問題意識に基づき,今般,標記の決議を行うものである。

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