関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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平成30年度 声明

平成最後の8月15日を迎えるにあたっての理事長談話

 1945年から73年目の8月15日を迎えるにあたり、平和と人権について考え、適切な公文書管理と憲法改正手続法の見直しを求めます。
 ここ数年、沖縄、広島、長崎はもとより、アジア太平洋戦争にかかる報道がなされています。例えば「戦慄の記録 インパール」、「本土空襲 全記録」、「731部隊の真実~エリート医学者と人体実験」、「樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇」、「記憶の澱」、「南京事件 兵士たちの遺言」、「南京事件Ⅱ」など、戦争は最大の人権侵害であることが改めて明らかにされました。戦争を直接に体験した人々が減るなかで、そこには、新たに開示された公文書によって真実が解明されたものがあります。
 日本国憲法、とりわけ前文と9条の平和主義は、日本人300万人余、アジア太平洋地域でもその数をはるかに超える犠牲の上に、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」、規定されました。憲法が施行されて71年を迎え、憲法9条の改正に向けた議論も始まりつつありますが、私たちは、憲法前文や9条が制定された背景をこれまで正しく理解していたでしょうか。上記の報道は、その背景の理解がまだまだ十分ではないことを明らかにしてくれました。まさに報道は、国民の知る権利に奉仕するものといえます。
 そのような中、いわゆる「森友問題」が発覚し、その過程で公文書が改ざんや違法廃棄される事態がおきました。公文書は民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源です。それにもかかわらず、誤った情報が国会や国民に提供されたまま、昨年10月には衆議院議員の解散・総選挙も行われました。政権の正統性をも揺るがしかねない異常な事態と言わなければなりません。正しい情報に基づく国会審議と国民の知る権利を保障する公文書の適切な管理が急務です。
 また、憲法改正の議論を進めるならば、その前提として、国民への公平公正な情報提供がなければ、国民は正しい判断を行うことはできません。「テレビ・ラジオ等における有料意見広告放送の公平性の確保」等について、「日本国憲法の改正手続に関する法律」、いわゆる国民投票法の見直しも必要不可欠です。
 当連合会は、来る9月28日には、市民に開かれたシンポジウム「未来への記録-自治体の公文書管理の現場から」を開催し、民主主義に適う公文書管理のあり方を提言します。また、広く生徒の皆さんに憲法についての理解を深めていただくことが今後の日本の民主主義社会の発展につながるものと考え9月3日まで第2回「こども憲法川柳」を公募しています。
 平成最後の8月15日を迎えるにあたり、心から、先の戦争の犠牲者を追悼いたしますとともに、平和と人権、さらに国民主権と民主主義のあり方を考える日となることを願います。


2018年8月15日
関東弁護士会連合会
理事長 三宅 弘

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