関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

2020年度(令和2年度) 声明

国連恣意的拘禁作業部会意見採択を受けて,日本の入管収容における全件収容主義及び無期限収容を直ちに廃止し,国際法を遵守するよう求める理事長声明

  2019年10月10日,当時,東日本入国管理センターに収容されていた,イラン国籍とトルコ国籍の2人の被収容者(以下「通報者ら」という。)が,国連恣意的拘禁作業部会(Working Group on Arbitrary Detention, 以下「WGAD」という。)に対して,自らの収容の違法性を通報したところ,2020年8月28日,WGADが,通報者らの収容を「国際法違反の恣意的拘禁に該当する」旨の意見を採択した(通報者ら代理人にはその旨が同年9月30日に通知された)。日本の入管収容について,WGADが意見を示すのは,これが初めてのことであった。

 同意見の中で,WGADは,通報者らの自由の剥奪を,世界人権宣言第2条,第3条,第8条,第9条,第14条,市民的及び政治的権利に関する国際規約第2条,第9条,第26条に違反する「恣意的な」ものであり,国際法違反であると明快に認定した。更に,WGADは,通報者らの自由が剥奪された状況等につき独立した調査が行われ,責任者に対して適切な措置が講じられること,犠牲者である通報者らに対して救済措置が講じられるよう求めた。そして,日本政府に対し,国際法上の義務を履行するために,入管法を改正するよう求めた。

 WGADは,更に以下の事項を明言している。
  • 必要性・合理性・比例性の要件を満たさない入管収容は国際法違反である。
  • 無期限の入管収容は国際法違反である。
  • 司法審査を経ない入管収容は国際法違反である。
  また,WGADは,日本政府に対し,あらゆる手段を用いて,可能な限り広くWGADの今回の意見を発信するよう求めると共に,WGADによる日本の訪問調査(カントリー・ビジット)を受け入れるよう要請した。

 ここに,日本の法務省・出入国在留管理庁が標榜してきた「全件収容主義」の違法性は白日の下に曝された。人間を収容することに,必要性も相当性も不要としてきた法務省・出入国在留管理庁の方針は,国際法違反であることが改めて明らかになったのだ。人間の身体拘束が「最後の手段」であるべきとの国際法の鉄則は,日本においてはこれまで,存在しないものであるかのように無視され続けて来たが,かような国際法無視の時代には,もはや終止符が打たれるべきである。法務省若しくは出入国在留管理庁が全件収容主義・無期限収容主義を堅持する中で,入管収容施設が,その被収容者から,これまで次々と病死者・自死者,そして餓死者まで出してきた歴史を振り返れば,国際法遵守の要請が,人間の生命と直結した喫緊の課題であることは明らかである。

 今回,多くの難民認定申請者を含む,重い事情を抱えた非正規滞在者を永年苦しめて来た無期限収容もまた,国際法違反であることが改めて明らかになった。収容期間には当然に上限を課すことが国際法上の要請であることを,WGAD意見は改めて明らかにしたのだ。

 当連合会が2020年7月27日付けで発出した意見書にあるとおり,収容・送還に関する専門部会の提言に基づいて,今秋の臨時国会若しくは来年の通常国会において,入管法改定が審議される可能性が報じられている。しかし,同提言も,また,最近一部報道された法改定案の方向性も,収容を原則とし,解放を条件を付して採られ得る例外的措置と位置付けており,更に,収容に司法審査を要件とせず,無期限収容すら可能としている点等で,今回のWGAD意見とは全く逆の立場に立つものであり,国際法に真っ向から反する内容となっている。

 この上,日本が国際法の通用しない無法地帯であり続けることは許されない。憲法98条2項を引くまでもなく,国際法を遵守しない国家は,法を無視する国家であり,その領域に暮らす誰一人幸せになることはない。当連合会は,日本の入管収容における全件収容主義及び無期限収容を直ちに廃止し,国際法を遵守するよう求めると共に,WGADによるカントリー・ビジットを速やかに受け入れるよう強く求めるものである。

以上

2020年(令和2年)10月26日
関東弁護士会連合会
理事長 伊藤 茂昭

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