関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

2020年度(令和2年度) 声明

新型コロナウイルス感染症の影響で帰国困難となった外国人に対する公的支援を直ちに実施することを求める理事長声明

  1.   新型コロナウイルス感染症の感染は拡大を続けており,2021年1月7日には,2回目の緊急事態宣言が発出されるに至った。また,2020年11月に一旦緩和された渡航制限も,2021年1月13日に再度厳しく制限されることが決定された。
     こうした制限によって,我が国には,本国に帰国したくてもできない外国人が多数発生している。
  2.   出入国在留管理庁は,コロナ対策として,帰国困難となった外国人に対し,在留期間経過後も本邦での在留継続を可能としたうえ,従前と同一の業務での就労や週28時間のアルバイトを認める措置を採っている。
     それでも,コロナ不況の影響で雇用先が見つからない外国人が多く,また,そもそも被仮放免許可者等の在留資格のない者は就労が認められていない。そして,生活保護等のセーフティーネットは,従前から,永住者等の入管法別表第2の在留資格を有していなければ支給されない取扱いとなっている。
     そのため,帰ることも働くこともできず,住むところも毎日の食事にも事欠く外国人が多数発生している。
     そうした外国人が支援団体を頼って日々の生活を維持しているとの報道が相次いでいる。しかし,財政的基盤が安定していない民間団体による支援には限界がある。多額の食糧支援費を民間の寄付を募って賄っている支援団体も存するが,支援の継続性には困難を伴うという。
  3.   困窮している外国人の中には留学生や外国人技能実習生も多いが,彼・彼女らは,制度の形式的な目的,すなわち教育を受けることや技能移転を通じた国際貢献とは異なり,実態としては日本の低賃金かつ非熟練労働の需要を支えてきた。このことは,2020年11月に「ビジネス往来」再開を掲げて渡航制限が緩和された後に来日したのが,中国・ベトナム・インドネシアからの入国が約7割,そのうち留学生や技能実習の在留資格を有する者が8割であったとの報道からも裏付けられる。我が国の産業を支えるために来日した彼・彼女らが困窮した際,我が国が公的支援を差し伸べないとすれば人道にも反すると言うべきである。
  4.   したがって,当連合会は,日本政府及び地方自治体に対し,在留資格の有無や種類にかかわらず,新型コロナウイルス感染症の影響で帰国困難となった外国人に対し,帰国までの間は就労可能とするとともに,最低限の生活水準を維持できるだけの経済的な公的支援を直ちに実施することを求める。
  5.   併せて,当連合会が,2020年4月24日に発出した「新型コロナウイルス対策にあたり外国人の権利を擁護し差別を禁止する取組みの強化を求める理事長声明」で述べた通り,2回目の緊急事態宣言発出という事態に鑑み,国及び地方自治体に対し,国籍や在留資格の有無を問わず,日本に在留する全ての外国人の権利を擁護し差別を禁止する取組みを強化するよう求める。

 2021年(令和3)1月27日

関東弁護士会連合会 
 理事長 伊藤 茂昭

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