関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

2020年度(令和2年度) 声明

入管法改定案(政府提出)の内容に強く反対し,「廃案」を求める理事長声明

 政府は,2021年2月19日に,「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」(以下「入管法改定案」という。)を開会中の通常国会に提出した。
 しかし,入管法改定案は,以下述べる通り,国際法に反する内容を含んでいるうえ,問題が多発している入管収容の現実を是正することは期待できないというべきである。

  1. 1  まず,入管法改定案は,現行の入管収容制度の是正のための方策を規定していない。
     現行制度は,①行政官による決定(収容令書,退去強制令書)によって司法審査を経ないままで,②退去強制令書による場合は無期限の収容を認め,かつ,③収容の可否の判断にあたって必要性・相当性等の要件を要しない(原則収容主義)とする制度である。国連恣意的拘禁作業部会が,2020年,日本の現行制度が国際人権法に違反していると認定した通り,現行制度は,人身の自由を,入管当局という行政官の恣意によって制限することを認める点で,まさに「恣意的拘禁」を認める制度であり,原則と例外が逆転している制度であるというほかない。
     現行制度においては,直近でも,2021年2月から3月にかけて,東京出入国在留管理局に収容されている被収容者のうち58名が新型コロナウイルス感染症に感染したことが判明し(同月16日時点),更に,同月6日には,名古屋出入国在留管理局に収容されていた30代のスリランカ人女性が死亡している。このような悲劇は,現行の入管収容制度を維持する入管法改定案のもとでは再発を防ぐことができない。
  2. 2  次に,入管法改定案は,監理措置制度の創設を規定する(44条の2,52条の2)。
     その内容は,①入管当局が選定権・取消権を有する監理人を付して,②入管当局が相当と認めるときのみ収容からの解放を許すが,③監理人には被監理者を監視する制裁つきの法的義務を課し,④退去強制令書を受けている人たちについては就労を許さず,⑤これに反して就労した場合等に刑事罰を課すなどというものであり,解放された者と同人を支援する者への締め付けをより厳しくする点で問題が大きい。また,そもそも,監理措置制度は,収容からの解放を入管当局の恣意に委ねている点で,原則と例外の逆転という現行の入管収容制度の弊害のうえに立脚する制度である。
  3. 3  さらに,入管法改定案は,難民認定申請者が3回目の難民認定申請を行った場合等に,例外的な事例を除いて,強制送還を可能としている(61条の2の9第4項1号)が,ノン・ルフールマン原則(生命や自由が脅かされかねない場所への送還を禁止する国際法上の原則)に従い,難民認定申請に送還停止の効力を認めている現行の制度を改悪するものである。多数回の難民認定申請に及ぶ人が多い根底には,まるで「難民不認定制度」として機能しているといえるような,難民認定率が0.4%(2019年)にとどまる現行の日本の難民認定制度の不全がある。しかし,入管法改定案は,難民認定制度の是正のための方策をなんら規定していない。
     なお,補完的保護の創設(2条3号の2)については,難民条約の「難民」該当性要件のうち「迫害」を受けるおそれがある理由を,難民条約に定められた5つの理由に限定することなく保護するとの新しい枠組みであるが,現行の日本の難民認定制度の不全を放置したままでは,「補完的保護」対象者についても,現行の難民認定基準と同様極めて狭小な範囲しか保護対象にならない可能性が強いとの懸念を抱かざるを得ない。
  4. 4  また,入管法改定案は,退去命令拒否罪を創設する(55条の2第1項,72条8号)。
     どうしても帰国できない事情を抱えた難民認定申請者や在留資格のないままに日本に生まれ育った若者たちなどにも刑事罰を課すものであり,また,支援者も共犯処罰の対象とし得るものであるが,退去強制令書を受けた人たちのうち95%以上の人が国外退去している現状に鑑みれば,立法事実に乏しいと言わざるを得ない。
     刑事罰の創設以外にも,入管法改定案では,在留特別許可において1年を超える実刑の刑事処分を受けた者等を原則不許可とすること(50条1項)や,一般面会の録音録画制度の新設(55条の56)など,全体として外国人や被収容者の権利を制限する方向での措置が導入されている。

 当連合会は,2021年1月27日付け理事長声明などによって,入管法改正の目指すべき方向を提示してきた。今回の入管法の改定で定められるべきだったのは,来日した難民を適正に保護する難民認定制度への改変であり,子どもの最善利益・家族結合権の保障など国際人権法を遵守する在留資格制度への改変であり,人身の自由を保障し,国際人権法に合致する入管収容制度への抜本的改変である。
 しかし,入管法改定案は,これまで国際社会から繰り返し批判され,また,国際法違反と認定されてきた「入管収容制度」「難民不認定制度」を改善することなく,却って難民認定申請者をはじめとする当事者と支援者らに刑事罰若しくは制裁を含む負担と圧力を掛けることで,最終的に当事者が日本に絶望して自ら国外に退去せざるを得なくなる措置が導入されており,国際人権法に対する遵法精神と問題の本質への理解が欠如している。
 したがって,当連合会は,入管法改定案を廃案とすることを求めるものである。

2021年(令和3年)3月30日

関東弁護士会連合会   
理事長 伊 藤 茂 昭

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