関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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2021年度(令和3年度) 談話

ロシア連邦によるウクライナへの侵攻について抗議し,即時の撤退を求める理事長談話

 2022年2月24日,ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻が始まった。ロシア軍による侵攻は,ウクライナの市民に子どもたちを含む多数の死傷者を出しており,生命の危機にさらされた多くの市民は,安全を確保しようとシェルターとなっている地下鉄の駅構内などの地下での避難生活を続けたり,また,百万人を超える女性,子ども,高齢者が,ポーランドなどの隣国に避難したりしていると報じられている。いつ攻撃されるかと恐怖にさらされている人々,人間らしい生活が奪われている人々の苦境は想像するに余りあるところである。
 日本国憲法前文は,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認」している。この平和的生存権は,基本的人権と社会正義の実現を任務とする私たち法律家が支持してきた権利である。そして,日本国憲法9条は,「国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する」と定めている。何らかの紛争があったとしても,その解決手段として,戦争や武力による威嚇や武力の行使を許さないというこの原則は,二つの大戦の惨禍を経た現在の国際法の根本となる大原則でもある。
 すなわち,国際連合憲章2条3項においては,「すべての加盟国は,その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」と定められ,同条4項において,「すべての加盟国は,その国際関係において,武力による威嚇又は武力の行使を,いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも,また,国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と定められている。
 さらに,2022年3月2日に開催された国際連合総会の緊急特別会合においても,「ロシア連邦が,ウクライナで軍事作戦を行うと宣言したことや,核戦力の準備体制を強化するとした決定を非難し,ロシア連邦に対して完全かつ無条件での軍の即時撤退などを求める決議」が賛成多数で採択されている。

 いうまでもなく,戦争は最大の基本的人権の侵害であり,今般のロシア軍によるウクライナ侵攻は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士として到底容認することができないものである。
 当連合会は,ロシア軍の武力による威嚇や武力の行使に強く抗議し,即時撤退を求めるとともに,日本政府に対し,この問題解決に向けて引き続きさらなる外交的努力をすることを求める。

2022年3月4日   
関東弁護士会連合会   
理事長 海老原 夕 美

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