関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

法教育法教育

基本的人権の尊重と公共の福祉

 平成30年9月11日(火)に開催された法教育勉強会のテーマ②においては,「基本的人権の尊重と公共の福祉」を取り上げた。
 同テーマは,『法教育教材 わたしたちの社会と法』(書籍購入を希望される場合は,【法教育】『法教育教材 わたしたちの社会と法』発刊のお知らせ(PDF)をご覧ください。)の「第9 基本的人権の尊重と公共の福祉」(同書110~119頁)でも取り上げているものであるが,日本国憲法を学ぶ上で,「基本的人権の尊重」という概念を習得できても,基本的人権を尊重しなければならない理由について考える機会はなかなか無い(同書110頁)。
 また,最大限尊重しなければならない基本的人権であっても,他の人権と互いに衝突することがあり,その調整を図るのが「公共の福祉」であって,「公共の福祉」とは,個人の基本的人権と対立する実体的な多数者や全体の利益を意味するのではなく,各個人の基本的人権の保障を確保するためのものである(同書110頁参照)。
 本勉強会では,上記憲法学の基礎的概念について解説した上で,現行の学習指導要領や指導解説上では上記基礎的概念が明確になっていないことなどを説明した。
 高速道路建設のための土地収用により土地の所有権という財産権の利用が制限される例のように,「公共の福祉」を,「個人の基本的人権と対立する実体的な多数者や全体の利益」と捉えるのが生徒には理解させやすいという率直な意見があがった。
 これに対し,財産権が制限されるといっても土地収用が正当化されるのは正当な補償がなされることが前提となっていて基本的人権の制限が許されるのはあくまで最低限度の制約にとどまる必要があること,「公共の福祉」の名のもとに基本的人権が制限されることが多いのは上記の例のように対象となる基本的人権が財産権であるからであり,精神的自由の場合にはこのような政策的制約原理に基づく基本的人権の制限が許されていないこと等について説明がなされた。
 このように,参加された教員に憲法学的理解を深めてもらうだけでなく,弁護士・教員間の活発な意見交換もなされ,有意義なものとなった。

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