関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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支部等調査報告

「支部等調査(長野県木曽地域)」のご報告

弁護士偏在問題対策委員会委員 田才 淳一(新潟県)

  1. はじめに
     弁護士偏在問題対策委員会では、関弁連管内の弁護士が少ない地域を訪問して当地の裁判所や行政機関、商工会等と意見交換を行い、地域に弁護士が少ないことによる問題点や弁護士に対するニーズを調査する支部等調査を行っています。従前は年2回程度調査を実施していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響からこの2年間は調査を中止しており、感染拡大が落ち着いた2022年11月下旬、3年ぶりに支部等調査を実施しました。
     今回は2022年11月21、22日に長野県木曽地域を訪問し、調査を行いました。木曽地域は長野家庭裁判所木曽福島出張所・木曽福島簡易裁判所の管轄であり、管内弁護士がゼロの弁護士過疎地域です。なお、木曽地域には2017年9月にも訪問しており、約5年ぶりの調査となりました。今回の調査には関弁連から若林茂雄理事長、福島正義副理事長にもご参加いただき、また、長野県弁護士会から中村威彦会長はじめ多数の会員の先生方にご参加いただき、大変充実した調査を実施することができました。改めて御礼申し上げます。
  2. 木曽町及び上松町訪問
     初日に訪問した木曽町では、木曽町役場、木曽町社会福祉協議会及び木曽地域の5商工会と意見交換を行いました。木曽町役場は2021年4月に開庁したばかりの新庁舎で、地元木曽産のヒノキをふんだんに使用した木のぬくもりを感じられる素晴らしい庁舎でした。木曽町の人口は約1万300人で、前回調査した5年前から約1500人減少しており、過疎高齢化が急速に進行しているとのことでした。
     2日目に訪問した上松町は前回の調査時には訪問しておらず、今回が初めての訪問で、上松町役場及び上松町社会福祉協議会と意見交換を行いました。上松町役場も2021年5月に開庁したばかりの新庁舎で、こちらも地元木曽産のヒノキがふんだんに使われており、ヒノキの香りに包まれた素晴らしい庁舎でした。上松町は人口約4100人で、年間約100人ずつ人口が減少しており、木曽郡の他の地域と同様高齢化が急速に進行しているとのことでした。
     高齢化の進行に伴い成年後見のニーズはあるものの、木曽郡全体で成年後見に対応している専門職が司法書士1名のみとのことで、地域における専門職の不足が極めて深刻であると感じました。また、商工会との意見交換では、商工業者の高齢化・後継者不在による廃業が増えているとのことであり、商工業者についても高齢化の影響が大きいと感じました。
  3. 長野県弁護士会との意見交換会
     木曽村をはじめとする木曽郡は全体として弁護士ゼロであり、地域には弁護士へのニーズが間違いなくあるものの、他方で地域全体の人口が減少し経済活動が縮小しているため、弁護士が独立開業するには困難な面があります。意見交換会では、このような地域にこそひまわり公設事務所が必要であるとの意見が多数上がり、私自身もその思いを強く持ちました。
  4. おわりに
     支部等調査の実施後、長野県弁護士会において、木曽地域にひまわり基金法律事務所を開設するための動きが本格化しているとの情報に接しました。木曽地域における司法アクセスの改善のためにこれまで熱意をもって活動してこられた中村会長をはじめとする長野県弁護士会の先生方の活動に敬意を表するとともに、弁護士偏在問題対策委員会としても木曽地域におけるひまわり基金法律事務所の開設を支援していきたいと思います。
写真1

上松町役場訪問

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