関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

キャスター・女優
麻木久仁子さん

とき
平成12年7月21日(月)
ところ
麻木久仁子事務所
インタビュアー
鈴木 周会報・広報委員会委員

 シリーズ12回目の「わたし」は,キャスター・女優として活躍されている麻木久仁子さんです。
 麻木さんは,中学生の頃から法律に興味を持ち,学習院大学法学部に進学され,その大学時代にアルバイトでモデルをしていたのがきっかけとなり芸能界に入りました。その後の活躍は皆さんご存知のとおりですが,ドラマや映画等で女優業をこなすかたわら,キャスターとして「サンデー・ジャングル」(テレビ朝日日曜夜)や「驚きももの木20世紀」(テレビ朝日金曜夜)などで司会を務め,ジャーナリストや芸能人と丁々発止のやりとりを見せています。
 また現在2歳の女の子のお母さんとして,子育て奮闘中です。

麻木さんはお仕事柄弁護士と会われることも多いと思いますが,どのような印象をお持ちですか。

麻木さん 弁護士さんは子供の頃から「社会正義を守る人」として憧れていた職業でした。ですから,弁護士に関係する本やテレビ番組を見たりするのが好きで,中学生ぐらいの時から法律の入門書も読んでいました。それで大学進学の時も法学部を選んだくらいです。
 またこの仕事についてからは,弁護士さんの中にもくだけたお話の得意な方など,いろいろな方がいらっしゃることがわかり,そういう意味でも弁護士という職業にはとても良い印象を抱いています。

今年の10月から弁護士業の広告が自由化されますが,利用する立場から見るとどうでしょうか。

麻木さん いいことだと思います。悩みを抱えている人が少しでも良い弁護士に事件を依頼したいと思うのは普通のことですからね。「専門分野は○○です」とか,その弁護士の活動内容・経歴を広告によって知る事が出来れば,選択肢も広がると思います。ただ,広告の規制緩和がなされた時,それにより利益を享受するのが,資本のある一部の大事務所になってしまうのではないかという心配もありますね。

近年司法試験合格者の増員が叫ばれていますがどう思われますか。

麻木さん 合格者が増えても裁判官や検察官が増えなければ,迅速な裁判制度が実現できませんし,また弁護士さんばかり増えるということになると,弁護士さんの中でも仕事が少なくなったりするかもしれませんよね。ですから合格者を増やすのであれば,きちんとその為の予算を組んで,裁判官を増やす事と予算を増やす事がリンクしていなければならないと思います。私達が身近に利用できるように,裁判所を拡充するための司法予算を国が出して欲しいと思いますね。

弁護士経験のある人が裁判官になるという法曹一元についてはどうですか

麻木さん 物事を多面的に考えられる方が裁判官になるべきと言う点では,良いことだと思います。ただ,人権派を唱える弁護士が裁判官を希望しても,裁判所の人事権を持つ人たちがそういう人を避けると,あまり意味がなくなってしまうと思いますね。また,弁護士会の対処も難しい面があると思います。例えば,「この人にこそ!」と思う人が弁護士でいることを望み,「なぜ君が?」と思う人が裁判官になりたがった時に弁護士会はどうするのかということです。選任の基準を明確にしなければと思います。

それでは,国民の声を裁判に反映する陪審制についてどうですか

麻木さん 陪審制の場合には,話合いの結果,被告人が1人でそのリスクを負うことになりますよね。そうすると,簡単に「民主主義だから」で済む問題だとは思えないのです。一方で,裁判官と国民の世論の乖離の問題もありますから,まずは裁判官と国民を繋ぐ為の媒体が必要だと思います。裁判官が世論に振り回されるのは感心しませんが,世間の声を裁判官に届けた上でなお国民の感覚と相違してしまったら,そこで初めて陪審制を検討するのはどうでしょうか。一人の人生を左右する判断を下す陪審員の責任は重大ですから,いきなり陪審制を日本で採用することについてはあまり賛成できませんね。

最後にこれからの弁護士さんに期待することを何でもおっしゃって下さい。

麻木さん 本当に困っている弱い立場の人を助けるとか,そういう弁護士さんが金銭的なことだけではなくていろいろな意味で仕事がやり易くて,報われるような仕組みを作っていってほしいなと思いますね。本当に困っている時に「幾ら持ってるの」とか聞かれちゃったり,どこかの変わり者が拾ってくれるのを待つなんて,なんか寂しいじゃないですか。

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