関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

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サッカー解説者
セルジオ越後さん

とき
平成25年12月9日
ところ
株式会社フロムワン(東京都中央区)
インタビュアー
会報広報委員会委員長 西岡毅

 今回の「わたしと司法」は,サッカー解説者のセルジオ越後さんです。セルジオさんは,1945年にブラジルのサンパウロで生まれて,祖国ブラジルでサッカーのプロ選手として名門コリンチャンスに所属,その後,1972年,27歳のときに日本へいらっしゃいました。現在は,サッカー解説者としてご活躍されています。2014年に開催されるブラジルサッカーW杯の予選組み合わせも決まり,W杯の動向について色々と語っていただくとともに,合わせて,スポーツ文化やマスメディアのあり方等についても語っていただきました。

セルジオさんは,日本とブラジルでそれぞれサッカーに携わられたわけですが,両国の違いはどこにあるでしょうか。

セルジオさん 一番大きな違いは環境ですね。宗教,生活,スポーツ文化,これら全てが違います。例えば,ブラジルはカトリック国家なので,日曜日は皆が休むんです。その受け皿として生活の中にスポーツがあります。日本では,日曜日の受け皿はショッピング等の商業なんです。

日本では,日曜日に皆でスポーツをやるというのはそれほど一般的ではないですね。

セルジオさん 日本の公園ではスポーツが禁止されているところも多いでしょ。日本では,学校以外のスポーツ文化がないんですね。日本のスポーツというと学校体育の授業と部活動が中心です。体育の背景には,軍事訓練的な厳しさがあります。今,問題になっている体罰も,そこに原因があるんじゃないでしょうか。

体罰の問題は,弁護士としても真剣に取り組まなければならない問題です。

セルジオさん アマチュアスポーツはエンジョイするためのもので,スパルタ教育を受ける場ではないと思うんです。スポーツは人をつなぐためのものなのに,日本ではそうなっていないのは残念ですね。

ブラジルと日本ではスポーツの考え方が違うんですね。さて,ブラジルでスポーツと言えば,やはりサッカーの人気が凄まじいと思います。2014年,セルジオさんの祖国でもあるブラジルでW杯が開催されます。つい先日,ブラジルW杯の組み合わせが発表されました。日本の場合,試合開催地への移動が大変だと言われています。

セルジオさん アジア予選の方が移動距離は長いですから,それほど影響はないと思いますよ。まさか,試合の合間に日本に帰ってきたりはしないでしょう (笑) ?

日本が予選を突破する確率はいかがでしょうか。

セルジオさん 現時点ではフィフティ・フィフティでしょうね。とは言っても,全てのチームがそうですが(笑)。まずは,予選突破のためには,初戦でしっかり勝つことが重要です。W杯は期間も短いですから,崩れたら修正がききません。アフリカW杯では,守って守ってカウンターという形で予選を突破しましたが,今回はどうでしょうかね。

本田選手は優勝を目指すと公言していますが,日本代表の最終結果予想はいかがでしょうか。

セルジオさん 言うだけはただですが,本音だとしたら生意気ですね(笑)。実際には,ベスト4まで行けばヒーローでしょう。世界からすれば,アジアのチームはチャレンジャーの立場です。2013年の6月のコンフェデレーションカップでも,ブラジル,イタリア,メキシコに3連敗したでしょう。あれが今の日本の実力なんです。

その後,2013年11月の欧州遠征のテストマッチでは,強豪オランダに引き分け,ベルギーには逆転勝ちしました。

セルジオさん このテストマッチの結果で浮かれてる余裕はありません。テストマッチと公式試合は全然違いますよ。例えば,テストマッチの交代枠は6人で,公式試合の交代枠は3人。公式試合の場合,怪我等の不測の事態のために1人の枠は残しておくのが通常ですから,交代枠は実質2名ということです。交替枠が違えばペース配分が大きく違います。これは,例えて言えば,駅伝とマラソンのような違いがあるんです。

日本では,よく決定力不足と言われますが,その原因はフォワードの選手にあるんでしょうか。

セルジオさん フォワードだけの問題ではないですね。日本での決定力不足というのは,単なる実力不足なんですよ。その証拠に,アジアのチームとの対戦では点を取れています。強いチームとあたったときに点がとれない,それは単なる実力不足なんです。

日本代表は,1998年から4大会連続してW杯に出場しており,実力を付けたように感じます。今の日本代表と,W杯に初めて出た1998年ころの日本代表が試合すると仮定すると,力の差はありますか。

セルジオさん 力の差はそれほどないでしょうね。例えて言えば,前の日本代表は天然もので,今の日本代表は養殖ものです。昔の選手は,多少,形は悪くても強かった(笑)。4大会連続出場と言っても,以前より出場枠が増やされましたし,2002年のW杯は日韓共催のために予選が免除されたという事情もありますよね。

現在では,海外で活躍している選手も増えています。

セルジオさん 海外にいても試合に出られないのであれば,それは活躍とは言えないでしょうね。マンチェスターユナイテッドの香川選手も出場機会は限られています。ロシアリーグでは本田選手が,ブンデスリーガでは多くの選手が試合に出ていますが,世界レベルで見ると,ロシアリーグやブンデスリーガのレベルはトップクラスとは言えません。トップリーグでコンスタントに試合に出られているのはインテルの長友選手くらいですよ。

今お名前が出た本田選手はACミランへ移籍すると言われています。

セルジオさん 移籍料なしですので,それは移籍とは言えないんじゃないですかね。それが今の本田選手への評価ということですよ。ただ,2014年に,インテル対ACミランのミラノダービーで日本人対決が実現すれば,商業的には盛り上がるでしょうけどね(笑)。

国内のJリーグの状況についてはいかがでしょうか。

セルジオさん 現在のJ1リーグには,18チームが所属しています。そこから4チームくらい減らせば,良いリーグになるんじゃないですか。減らされたチームの選手が他のチームに行けばレベルが高くなる。今のJリーグでは所属チーム数が多すぎて,関東の濃い口スープが関西風の薄口スープになっています。以前と違って,海外の著名な選手も来なくなってしまいました。チーム間の移籍も国内でぐるぐる回っているだけで,回転寿しのような状態。しかもネタが古くなっている(笑)。

なるほど(笑)。セルジオさんは,世間では辛口評論家と言われていますが。

セルジオさん 僕なんてブラジルでは甘口ですよ(笑)。今のマスコミは,実力がない選手をルックスが良いからという理由で実力があるように採り上げたりします。それを本音で話すと辛口と言われる。日本では黙って順番を待っていれば,上にあがっていけますが,ブラジルのような多民族国家では,しっかり自分を主張していく必要があるんですよ。

プロのスポーツ選手にとっても,マスコミの影響は大きいでしょうか。

セルジオさん もちろん大きいですよ。活躍している選手は評価され,そうでない選手は厳しく意見される。そういった環境に置かれる事で,選手もしっかり事実と向き合って力が付いていく訳です。馴れ合いの環境では選手が育ちません。

サッカーでもマスメディアは重要な存在なんですね。

セルジオさん スポーツに限らず,メディアが真実を伝えるようにならなければいけません。日本人は,上から与えられたものをそのまま信じてしまう傾向が強いですが,それでは国民が自分の頭でものを考えるということができず,国民の力が弱くなってしまいます。そうなると,隣国が敏感に察知して,日本を脅かします。日本を守るのは自衛隊ではなくて国民各々ですので,日本人は,その辺りの意識をもっと強く持った方が良いと思いますね。

サッカーの話に戻りますが,現在の日本代表は,2010年より,セリエAのクラブチームで実績を残したザッケローニ監督が率いています。

セルジオさん クラブチームでの実績は大分前のことですからね。ところで,日本では,代表チームに,ザック・ジャパンというように監督名を付けますが,世界では,国の代表のチーム名に監督の名前を付けることはありません。監督なんて,いつ首になって交替するかも分からないんですから。日本の監督の場合は,結果が残せなくても4年間は安泰ですが。

セルジオさんご自身は監督にはご興味ないでしょうか。

セルジオさん ないですね。S級ライセンスを持ったたくさんの人が監督の順番が来るのを待っていますし,ライセンス取得には何百万円もかかってしまうとなると,監督をやりたいとは思わないですね。それに,皆さんが監督をやりたいがために黙ってることでも,僕は評論家だから自由にものが言えますからね。

例えば,皆さんが黙ってることというのは何ですか(笑)。

セルジオさん サッカー協会の問題点とかですね(笑)。協会内に選挙がなく民主主義になっていないことや,理事の報酬の問題とか。本来は,こういった分野にもっと弁護士の方が進出されるといいんじゃないですかね?

頑張りたいと思います。さて,それでは最後の質問です。ブラジルW杯で,日本とブラジルが対戦した場合,どちらを応援なさいますか。

セルジオさん もちろん僕は日本を応援しますよ。日本代表が勝つほど,僕の仕事も増えますから(笑)。でも,日本とブラジルがあたるのは準決勝以上でしょうから,それはなかなか実現しないでしょうね。

今から2014年のW杯が楽しみです。本日は本当にありがとうございました。


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