関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

女優
筒井真理子さん

とき
平成26年7月20日
ところ
TMCスタジオ(東京都世田谷区)
インタビュアー
会報広報委員会委員 井上昌幸,同 關野文士

 今回の「わたし」は,女優の筒井真理子さんです。筒井さんは,山梨県甲府市で生まれ,甲府第一高等学校を卒業後,早稲田大学に進学。在学中に「第三舞台」に在席し,初舞台を踏まれました。その後,映画,テレビドラマ,CMと幅広く活躍されております。
 最近では,NHK連続テレビ小説「花子とアン」(山元タミ役)にご出演され,また8月19日から放送されるNHKドラマ10「聖女」にもご出演されます。

筒井さんは,山梨県の進学校,甲府第一高校を卒業されていますが,甲府にお住まいの時から女優業を考えられていたのでしょうか。

筒井さん いいえ,当時は,女優業ではなく,カウンセラーになりたかったんです。でも東京に来て,いろいろな舞台を見て,一種のカルチャーショックを受けたのもあって,舞台の世界に足を踏み出しました。

その女優業ですが,現在,NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」にご出演されていますね。「花子とアン」は,吉高由里子さんが演じるヒロイン「村岡花子」は甲府生まれですが,今回,筒井さんが演じられている「山元タミ」は,山梨の方ではないんですよね。

筒井さん そうなんです。九州の筑豊の方なんです。なので,話す言葉は甲州弁ではなく,筑豊弁なんです。だから,私はドラマの中では甲州弁の「こぴっとしろし」(「しっかりしなさい」の意)や,「てっ!」(「えっ!」といったような感嘆詞)は使えないんです(笑)。

我々インタビュアー2人も山梨の人間なのですが,ドラマの中で甲府出身の筒井さんから甲州弁が聞けないのはちょっと寂しい気もしています(笑)。今回,筑豊弁を話される役でしたね。

筒井さん そうなんです。

とても流暢な筑豊弁でしたが,役柄によって地方地方の言葉は勉強されるのでしょうか。

筒井さん はい,番組には方言指導専門の先生がいらっしゃって勉強をします。その方言の勉強は,台本に書いてあるセリフに限らないんです。台本中の言葉に限ってしまうと,アドリブが効かず,固いお芝居になってしまうんですよ。だから,いろいろな言葉に触れるようにして,慣れるようにしています。

今まで,ドラマ等で甲州弁を披露されたことはありますか。

筒井さん 残念ながらほとんど無いですね。山梨が舞台になる作品が意外と少ないので。

山梨にはよく戻られるんでしょうか。

筒井さん 今はプライベートより仕事で山梨に行くことの方が多いです。

山梨関連のお仕事はどのようなものがあるのでしょうか。

筒井さん ドラマや映画の撮影が多いです。他にも山梨県立図書館の朗読会でお招き頂いたり,山梨ヌーボー解禁のイベント等にお招き頂くこともあります。そこで,山梨県知事と何度かご一緒させて頂きました。

筒井さんは,いろいろな職業の役をされている印象を受けますが,今まで弁護士の役をされたことはあるんでしょうか。

筒井さん ありましたが,法廷外のシーンだけでしたので,あまり「弁護士役」というイメージは残っていませんでした(笑)。

実際の裁判をご覧になったことはありますか。

筒井さん 見学に行ったことがあります。実際の裁判って結構淡々としてるんですよね。傍聴人もほとんどいなかったり。ドラマだと,弁護士さんと検事さんの対立とかありますが,実際の,弁護士さんと検事さんってどうなんですか?

結局人によりますが,基本的には互いに仕事としてそれぞれの役割・使命を果たしているので,仕事外では普通にお話しする方が多いですよ。公式行事の懇親会等では,一緒にお酒を飲むこともありますし。もちろん,そういった方とでも,仕事となれば,お互いにしっかりと役割・使命を果たしています。

筒井さん そうなんですね。やっぱりドラマと実際のお仕事は違う点があるんですね。10年以上前の連続ドラマで陪審員の役を演じたことがありましたが,人を裁くことの難しさを痛感したのを覚えています。今,裁判員制度が導入されていますが,被害者への共感が強いのか死刑が増えていると知り,あらためてこの問題について考えることがありました。

筒井さんは,いろいろな役を演じるに当たり何か心がけていることはありますでしょうか。

筒井さん 与えられた役の人物を誰よりも愛して,しっかりと〝役を生きられたら〟と思います。そのためには,その役をできるだけ深く理解して少しでも近づくように努めています。

そのために,心理学の先生にお話を聞かれることもあると伺いました。

筒井さん はい,役を演じるとき,その時の心理状態とかを伺ってます。そのほかにも,たとえば性同一性障害の役を演じるときには,その障害を持った方にお話を伺ったりもしました。理解しないで演じることは失礼ですから。

今回,「花子とアン」の「山元タミ」役は,ちょっと意地悪な部分をお持ちの方ですよね。

筒井さん 物語の中では,仲間由紀恵さん演じる「嘉納蓮子」と対立するキャラクターとして〝立派な意地悪〟にならなければと思いました。そのために,どういう時に人は意地悪な気持ちになるか,どうしたら意地悪に見えるのか,本を読んだり,人を観察して細かな表現にも気を配りました。

我々弁護士も,利害が対立する方を相手にするため,表現の仕方には神経を使っています。

筒井さん 先ほどお話しました心理学は,弁護士さんのお仕事にとても役に立つと思いますよ。

我々の仕事の場合,痛み・苦しみを持った方が法律相談等にいらっしゃいますが,たしかに心理学は役に立ちそうですね。

筒井さん 心に辛い痛みを持った方とお話するとき,まず相手の気持ちを受け止めることが大切だと思います。最初から「あなたにも悪いところがあるんだから」などと言ってしまうと,心を閉ざしてしまいますよね。他人から見たら取るに足らない悩みでもその方にとっては,本当に辛いことですから,まずは「大変でしたね。」といって,その方の痛みを引き受けることが大切なようです。

冒頭でお話頂きましたが,当初はカウンセラーになりたかったとのことですが,その経験が生きてらっしゃるんでしょうか。

筒井さん 役を演じるとき,役を理解して共感する必要があるので,そのときに役立っているのかもしれません。

現在撮影中のドラマですが,「聖女」にご出演されるということを伺いました。どのようなドラマなのでしょうか。

筒井さん 広末涼子さん主演のドラマで,広末さんが「聖女」か「悪女」か,被告人として裁判にかけられるんです。広末さん演じる緒沢まりあが,家庭教師として中村晴樹(永山絢斗さん)と出会い,ある日突然消えてしまう。そして,10年後,二人は再会するのです。緒沢まりあ(広末さん)が連続殺人事件の容疑者,その教え子だった中村晴樹(永山さん)が弁護人として。

筒井さんは,どのような役なんでしょうか。

筒井さん 私は,中村晴樹(永山さん)の母親を演じています。「花子とアン」とはガラっと変わって,優しい愛情にあふれたお母さん役です。ちょっと天然が入っていますけど(笑)。今回のドラマは原作がなくて,完全オリジナルなんです。だから,私たち演者も台本を頂くたびに,どうなるのかどうなるのか楽しみなんです。

先ほどお話頂きましたが,「聖女」は刑事裁判,弁護士と我々業界に関係するドラマなんですね。

筒井さん ぜひ,弁護士さんにもご覧いただきたいと思います。

ありがとうございます。「聖女」楽しみにしております。ますますのご活躍を期待しております。


ドラマ10「聖女」
2014年8月19日(火)~9月30日(火)
NHK総合テレビ毎週火曜午後10時(連続7回)
作:大森美香/音楽:吉俣良/主題歌:JUJU「ラストシーン」
出演:広末涼子 永山絢斗 筒井真理子 蓮佛美沙子 青柳翔
田畑智子 田中要次 中田喜子 岸部一徳 ほか
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