関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

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今冬廃止予定の,また配線図シリーズの最後に取材した駅でもあるJR北海道留萌本線増毛駅にて

鉄道アナリスト
川島 令三さん

とき
平成28年9月24日
ところ
山梨県甲府市某所
インタビュアー
会報広報委員 委員長 井上昌幸

 今回の「関弁連がゆく」は,鉄道アナリストとして,多数の著作を発行され,また現在早稲田大学非常勤講師をなされております川島令三さんをお迎えして,お話を伺うことに致しました。また,法曹レールファンクラブ乗客(会員のことを,「乗客」と表現するとのこと)であり,山梨県弁護士会所属の中込博さんも同席頂きました。

井上 関弁連会報広報委員会の委員長をしております井上昌幸と申します。本日は,よろしくお願い致します。

川島さん  よろしくお願い致します。

井上 また,法曹レールファンクラブ乗客であり,日本国内の鉄道駅の99%以上乗降したことがある,山梨県弁護士会所属の中込博さんも同席頂いております。よろしくお願い致します。

中込さん  よろしく。

井上 まず,川島さんの経歴を伺いたいのですが,兵庫県芦屋市出身ですね。

川島さん  はい,高校生まで芦屋にいました。

井上  鉄道に興味を持ったきっかけはどのようなものなのでしょうか。

川島さん  小学生のとき,電車,具体的には阪神電鉄に興味を持ち,電車の写真を撮っているうちに,どんどん興味を深めていきました。また,中学生のころから,鉄道雑誌に写真を投稿するなどしていました。大学生になると上京し,その後,鉄道雑誌社へ就職しました。現在は退社し,執筆活動をメインに活動しております。

井上  ありがとうございます。ところで中込さんは,日本の鉄道駅のうち,沖縄の沖縄都市モノレール線,通称「ゆいレール」の駅等を含め,約30駅以外は降りられたんですよね。

中込さん  ええ,私は飛行機を乗らない主義であることから,なかなか沖縄には行く機会がなく,沖縄には行っていません。また,新駅もいくつか出来ているところ,本州にまだ行っていない駅が数駅あります。

井上 通過しただけではなく,乗降したことがあるっていうのはすごいですね・・・。一部マニアで有名な究極の秘境駅,JR北海道の小幌駅も降りられたことがあるんでしょうか。

中込さん  数回,行きましたね。ただ,あそこは本当になにもない。

井上  おっと,冒頭からかなりマニアックな話になってしまいましたが,少し話を一般的な方向へ戻しましょうか。ところで,川島さんは,鉄道事故が起こってしまった際,メディアに出演され,お話をなされていますよね。

川島さん  はい,色々お声がけ頂き,出演する機会がありますね。

井上  鉄道の事故,そしてそれを避けるための安全策について,お話頂けますでしょうか。

川島さん  鉄道は,大量輸送という利便性がありますが,事故と隣り合わせの歴史でもありました。挙げればきりがないのですが,平成に入ってからの鉄道事故といえば,たとえば平成3年5月14日信楽高原鐵道列車衝突事故(信楽高原鐵道の列車と,同鉄道に直接乗り入れていたJR西日本の列車が正面衝突をしてしまった事故)が挙げられますでしょうか。あの事故は,信号不具合,JR西日本と信楽高原鐵道の無線の周波数が異なり直接の連絡が取れなかった等,複合的な要因があると思います。

中込さん  この事故は,民事裁判も提起され,大阪地裁平成14年12月26日判決において,信楽高原鐵道の責任のみならず,JR西日本の責任もあると,認定されましたね。この判決に対する評価は,色々あると思いますが,話せば長くなってしまうので,省略します。

川島さん  記憶に新しい事故といえば,平成17年4月25日のJR福知山線脱線事故でしょうか。この事故も複合的な要因で発生してしまったのですが,この事故をきっかけとして,安全システムのさらなる構築の必要性が指摘されました。ATS*1 システムの改良も,その構築の一つではあると思いますが。

井上  不幸な事故は,是非とも教訓として,次世代の安全性を確立して欲しいと願うばかりです。次世代の「鉄道」と表現して良いのでしょうか,交通手段としては,リニアがありますが,リニアについて,お話頂けますでしょうか。

川島さん  リニアは営業運転を行うとき,その制御システムをどのようにするのか気になります。リニアは時速500キロですから,一閉塞区間 を相当な距離確保しないといけませんからね。新幹線でも閉塞区間*2 は1キロ強ですから,リニアの場合3キロとか,4キロとかになるんでしょうかね。

*1 Automatic Train Stop
*2 閉塞区間とは,その間には同時に2つ以上の列車を入れないようにし,安全を確立するシステム

中込さん  あと,車内電源の問題は?

井上  確かに,リニアは電車と異なり,電気を取り入れていないですが,車内電源はどのように確保するのでしょうか。

川島さん  最初は磁場で電気を発生させ,車内電源を確保するということを目指していたようですが,結局無理だったみたいですね。いまある実験線は,ディーゼル発電機を積んで車内電源を確保しています。営業運転をする際,このままディーゼル発電を搭載するのか,その他の手段を採るのか,興味がありますね。

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停車中のリニアの屋根から,ディーゼル発電機の排気ガスがもくもくと出ている

井上  ところで,鉄道に対する視点は,色々あると思いますが,あえてひとつ「面白い」ということを挙げると,何がありますでしょうか。

川島さん  そうですね。「配線」ですね。

井上  「廃線」ですか!?

川島さん  いや,配るほうの「配線」です。曲線,直線の配置,そしてそれの運用,鉄道の配線は,美しいですね。ぜひ,興味を持って欲しいと思っています。「全線・全駅・全配線シリーズ」として,各地の配線に関する書籍も発行しておりますので,ご興味あれば是非ご覧下さい。

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阪神本線となんば線が分岐する阪神尼崎駅はポイントが輻輳していて,
いったいどうなっているか把握しにくいが,配線図を見れば一目瞭然である。

井上  川島さんは「廃線」の方には興味ないのでしょうか。たとえば,函館市にある未完成の鉄道路線「戸井線」など,歴史を感じられる廃線も数多くあると思うのですが・・・。

川島さん  私は「廃線」にはあまり興味ないですね(笑)。ただ,計画されてるけど,未だ実現していない場所には興味ありますけど。

中込さん  たとえば,どんな場所ですか。

川島さん  山陽新幹線でいえば,北九州市八幡西区馬場山にある新駅用地。衛星写真でみると,よく分かりますよ。現場には,JR西日本の杭が多数打たれています。

中込さん  確かに,小倉・博多間はかなり距離があると思うので,一つくらい駅があってもいいように思えますね。

川島さん  あと,瀬戸大橋線の植松駅から児島駅を経て瀬戸大橋までの陸上部や瀬戸大橋そのもの,四国に渡って宇多津附近にも,新幹線用地が確保されているんですよね。

中込さん  鉄道ファンは,鉄道に対し本当色々な興味をもち,見方をするんですね。

井上  ところで現在,川島さんは,早稲田大学非常勤講師として,講座を持たれていると伺いましたが,どのような内容なのでしょうか。

川島さん  次回,秋講座として「首都圏の鉄道整備計画」として,オリンピックが開催される2020年の首都圏の鉄道網について,お話しようと思っています。10月15日から全6回,土曜日に開催します。途中参加も可能ですので,ご興味ある方は是非参加頂ければと思います。

井上  著作の話に移りますが,9月に新刊を発行されましたね。

川島さん  9月10日に「全国鉄道事情大研究」シリーズを7年ぶりに発刊しました。青函篇です。勾配や配線等の情報を取り入れており,マニアの方にはご満足頂けるかと思いますが(笑)。

中込さん  まあ,観光案内ではないので,一般のかた向けではないですよね(笑)。

井上  本日は,鉄道の魅力を様々な視点よりお話し頂き,ありがとうございました。今後もマニア心をくすぐる著作を執筆頂きたく,楽しみにしております!

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