関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

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東京家族ラボ・心理研究所 主宰
池内ひろ美さん

とき
平成17年2月4日(金)
ところ
東京家族ラボ・心理研究所
インタビュアー
会報広報委員会副委員長 鶴間洋平

 今回のゲストは、池内ひろ美さんです。池内さんは、離婚をはじめとする家族問題について、幅広い活動をされています(ホームページURL http://ikeuchi.com)。本日は、我々も扱うことが多い離婚問題を中心にお聞きしました。我々とは違う角度から見た離婚問題に関するお話は、我々の事件処理にあたっても参考になることが多いと思います。

どのようなお仕事をされているのか教えて下さい。

池内さん 著作、取材、テレビ・ラジオ出演、講演、ワークショップなどを行い、個別の離婚相談も受けています。相談者は、男性4割、女性6割です。私の場合は、女性の擁護という視点ではなく離婚という事がら自体を好きで行っていますので、男女問わずお受けしています。もちろん、離婚を勧めることも止めることもしませんし、ご自身が決断するためのアドバイスに徹していますし、弁護士法に違反することのないよう顧問の先生から厳しく指導を受けています(笑)。
 離婚相談を始めたきっかけは、自分の離婚体験を本に書いたことからです。読者さんからお便りをいただき、お返事を書くうちに、インターネットを利用した情報発信も始めました。現在、毎月約80件の個別相談に応じています。
 離婚問題は、その方の人間性すべてが出ます。そこが好きで関わらせていただいています。

お知り合いの弁護士との関係についてお聞かせ下さい。

池内さん 故遠藤誠先生に顧問をお願いしていましたが、東京家族ラボを育てていくにあたって大変お世話になりました。現在の顧問の先生には、主に法人としての東京家族ラボに関わる面をお願いしています。
 全国からご相談来所されるため、アドバイザー弁護士も全国各地でお願いしており現在81名です。ホームページにはご了解いただいた先生のみお名前を掲載しています。
 先生方には、法律的な解決が必要な相談者をご紹介しています。ご紹介した後はノータッチで、紹介料も当然受取っていません。
 個々の事件に関わるだけではありませんので、弁護士の先生方だけでなく、裁判官や検察官の方々から教えていただくこともあります。それぞれの相談者が抱える問題によって、精神科医や心理カウンセラー、女性センター、児童相談所などと連携を取ることもあります。

離婚問題に直面している方の特徴的な心理状態というのはあるんでしょうか。

池内さん 離婚問題は、多くの方にとって「初めての挫折」です。そのため混乱しています。家制度崩壊から60年経ちますが、最初の30年は過去のシステムをなぞってきました。その後の30年は個人主義となり自由に生きることができるようになりました。選択肢が広がり自由度が高くなるのは素晴らしいことですが、一方で、自由に伴う自己責任の教育はなされていません。
 被害者意識に囚われ過ぎるために、孤立し、不幸せな気持ちに固まる方もあります。

弁護士の離婚事件の扱い方について、感想やご意見はお持ちでしょうか。

池内さん 相談者は混乱し不安な状態ですし、裁判にはじめてかかわる方がほとんどですから、不安を解消するために、手続きなどを丁寧に説明していただければありがたく思います。不安がなくなることで信頼関係が構築でき、仮に不利な状況で事件を終えたとしても弁護士への満足度も上がります。
 たとえば、調停前に交互面接の説明をしていただけるだけでも相談者は安定した心理状態で調停に臨むことができます。私の場合は法律相談ができませんので(笑)、「離婚の学校」講座では、ホワイトボードに家裁のフロアの俯瞰図を描いて説明します。廊下があり、申立人の待合室があり、相手方の待合室は廊下を曲がった先にあるから、直接顔を会わせることはありません。あるいは、調停委員はさまざまなので、調停委員個人に過剰な期待をするのではなく、安全な場である調停でプレゼンテーションをしましょうね、と1時間かけてお伝えします。弁護士の先生には当然のことであっても当事者にはその程度のことでも不安材料です。
 法務省に、家事調停のビデオを作って家裁ロビーで流してほしいと提案しましたが、なかなか作成してくれません。弁護士会でビデオを作っていただけませんか(笑)。
 また、弁護士の先生方は、依頼者の不安や不満を引き受けてしまわないほうがいいと思います。たとえば、依存が問題となっている方の場合、依存あるいは共依存関係を解消し自立することが必要なのに、依存先が配偶者から弁護士に移るということも起こります。すると、初めは感謝されても、後で大きな怒りに転換しかねません。カウンセラーは、緊急の場合いつでも連絡できるよう相談者に携帯電話の番号を伝えることもありますが、弁護士の先生は教えませんでしょう。それぞれ役割が違うはずですから、役割を超えないことが大切だと思います。東京家族ラボのシステムでは、一度弁護士の先生をご紹介した後に、途中から精神的に混乱し整理が必要になり、私のところへ戻ってきた場合は、心理カウンセラーかセラピスト、精神科医に渡すこともあります。弁護士の先生はカウンセラーを訪ねなさいとは言いづらいでしょうけれど(笑)。
 私自身は、「メディエーター」のイメージで仕事をしていますが、そういった交通整理的な役割が必要だと思います。これは公的機関で行うべき仕事だとも感じていますし、アメリカには似たシステムがあります。

本日は、どうもありがとうございました。

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