関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

Office WaDa代表
和田浩子さん

とき
平成18年11月17日
ところ
目黒区中目黒 ALAYA INC.応接室
インタビュアー
金田賢太郎委員 窪木登志子 会員

 今回の「わたし」は,日本人初の米国P&G社ヴァイスプレジデントとなり,その後はダイソン日本支社の社長,日本トイザらスの社長を歴任された,華々しいご経歴をお持ちの和田浩子さんです。現在は,これまでに培った経験をもとに,マーケティングやマネージメント分野でのコンサルタント業をされているそうです。

大学卒業と同時にP&G社の日本法人に入社されたそうですが,そのいきさつを教えてください。

和田さん 将来英語を使う仕事に就こうと心に決めたのは,小学校3年生のときです。そのきっかけを与えてくれたのは,テレビで見た通訳の仕事でした。その夢を叶えるために,小学生のころから英語塾に通い,大学は大阪外国語大学英語学科,大学在学中には1年間のイギリス留学も経験しました。
 P&G社には,バイリンガルセクレタリーの募集に対して願書を出したのですが,それは不採用に終わりました。ところが,不採用の連絡に際して,「マーケティング部門で日本人女性の採用を考えているので,そちらを受けてみては?」との思いがけない誘いが。そして,その誘いに応じて,改めてP&G社の面接試験を受けてみたところ,採用が決まったのです。ご存知のとおり,P&G社は外資系企業であり,社内では何をするにしても英語が使われますので,「英語を使う仕事に就く」という子供時代からの私の夢がついに実現することになったわけです。
 なお,これは余談ですが,採用が決まるやいなや,私は,P&G社から今すぐ働いてほしいと言われました。とはいえ,私はまだ学生でしたので,そうするわけにもいきません。そこで,会社と協議した結果,入社するまでの間,役員セクレタリーとしてアルバイトをすることに決まりました。皮肉な話ですが,一度は不採用となったセクレタリーとして,私とP&G社との関係が始まることになったのです。

P&G社時代に扱われた商品で,思い出深いものはありますか。

和田さん 生理用ナプキンの「ウィスパー」ですね。今ではこれを知らない方は少ないと思います。しかし,私がこのブランドを担当するようになった当時,日本の生理用ナプキン市場には既存の優秀な他社製品が君臨し,P&G社はその市場に参入すらしていませんでした。そこで,いかにして「ウィスパー」という製品を日本で成功させるかが,ブランドマネジャー(担当する製品に携わるチームの社長的立場)という立場にあった私に課せられた使命でした。私は,製品開発の段階から「ウィスパー」を担当し,いわばゼロからのスタートだったのですが,この製品は何を売りにすべきか,またキャッチコピー・パッケージ・広告をどうすべきか等について,様々な戦略を練った上で世に送り出した結果,見事爆発的なヒットを収め,「ウィスパー」は現在の地位を獲得するに至りました。この「ウィスパー」という新規ブランドの立ち上げを通じて,私は,マーケティングに関して多くのことを学び,貴重な経験を積むことができたと思います。

ブランドという言葉を多用されていますが,和田さんにとって,ブランドとは何ですか。

和田さん トップオブマインド,つまり,あるカテゴリーの中で,消費者の心にまず最初に思い浮かぶようなものがブランドです。同じカテゴリーの中で,少なくともトップ5に入らなくてはならないでしょうね。たとえば,バッグというカテゴリーで,誰もがまず思い浮かべるのはルイヴィトンやエルメスといったように。

和田さんはマーケティングだけでなく経営のプロでもあるとうかがっています。会社と同じように法律事務所も1つの組織ですが,良き経営者となるためのアドバイスをいただけますか。

和田さん 良きリーダーであるためには,肩書きにこだわるのではなく,周囲からリーダーと認められるようなビヘイビア(行動)を取らなければなりません。そのビヘイビアの1つ目は,エンヴィジョン(Envision),つまり,目標を示すことです。その目標は,言動をもって示さなくてはなりません。額縁に入れて飾っておくだけではダメです。また,目標を達成するために必要な戦略を立てることも,このエンヴィジョンには含まれます。次に,ビヘイビアの2つ目は,エナジャイズ(Energize),すなわち,相手に活力を与えることです。具体的には,各人の役割・責任を明確化すること,十分なコミュニケーションを図ること,相手に対して常に気にかけているという態度を示すこと等が必要です。ビヘイビアのもう1つは,エネイブル(Enable),つまり,能力の付与です。能力の開発,人材育成の他,リーダー自らが率先して物事を学び,それを良いこととして相手に勧めること等が具体例です。
 以上について達成できた点が多ければ多いほど,周囲が「この人についていこう」と考える確率は上がると思います。

貴重なお話ですね。大変勉強になりました。最後になりますが,今後の目標をお聞かせください。

和田さん 日本人女性として初めてP&G社のマーケティング部門に採用され,日本人初の米国P&G社のヴァイスプレジデントに就任する等,私は,P&G社に在籍している当時から「自分はパイオニア」との意識をもち,誰も成し遂げていない新しい分野に常に挑戦してきました。これまでと同じように,今後も次々と新しいことに挑んでいきたいですね。

ますますのご活躍を期待しています。本日は,お忙しい中ご協力いただき,ありがとうございました。

参考文献:和田浩子著「すべては消費者のために。P&Gのマーケティングで学んだこと。」(トランスワールドジャパン株式会社)

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