関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

シンポジウム

平成18年度 大規模災害に備える・・・援護を必要とするひとのために何をすべきか

担当常務理事 渕上 玲子(東京)

 平成18年9月22日,お台場のホテル日航東京で,東京初の関弁連シンポジウムが開催されました。テーマは,東京三弁護士会が「災害復興まちづくり支援機構」を立ち上げ,災害復興支援活動に取り組んできた関係もあり,大規模災害をテーマとすることになりました。平成18年度シンポジウム委員会は,平成17年7月の第1回委員会以後,髙井和伸委員長のもと,神戸調査団,中越調査団,合宿を含めて,多方面にわたる調査研究活動を行ってきました。被災者の人権を考えるという見地から,災害時要援護者の視点を中心とした三部会(高齢者・障がい者部会,子ども部会,外国人部会)と,大規模災害時の環境を考える公害環境部会,市民に対する情報提供を目的とした市民向け震災時Q&A部会,弁護士会の態勢作りを考える関弁連マニュアル部会という6部会で構成されています。

 シンポジウムは,高齢者・障がい者部会による要援護者支援問題を中心としたことから,それ以外の詳細な調査研究結果については,成果集に納められています。近畿弁護士会連合会でも,阪神・淡路大震災直後に取り組まれたことがありますが,その後の弁護士による災害と人権というアプローチの本格的な研究成果として,今後の指針の一つになれればと考えています。

 また,市民向け震災時Q&A部会においては,委員長の発意により,「Q&A災害時の法律ハンドブック」(新日本法規)という震災時の法律問題に関する詳細な解説書を発刊し,そのための関係者の多大なる労苦に敬意を表するものです。

 シンポジウム当日は,開会前から兵庫県弁護士会永井幸寿弁護士のご協力を得て阪神淡路大震災時のショッキングなビデオを放映し,まずは大規模災害の脅威を視覚的に訴えました。

 理事長の挨拶に続いて,各パネリストからの報告となり,はじめにNPO法人阪神高齢者・障害者支援ネットワーク理事長である黒田裕子氏から阪神・淡路大震災および新潟県中越地震における高齢者・障がい者に関する問題について,体験に基づくお話がありました。次に内閣府(防災担当)災害応急対策担当参事官補佐の諏訪五月氏より,国の取組について,続いて東京ボランティア・市民活動センター副所長の安藤雄太氏より,三宅島噴火による三宅島市民救援活動を中心とした活動をお話しいただきました。最後に東洋大学社会学部教授田中淳氏から,災害弱者が生まれる構造について,問題点を提起していただき,ディスカッションに入りました。

 公助,自助の限界を埋めるものとしての共助の重要性が確認され,共助のためには情報共有が不可欠であることが指摘されました。個人情報保護との関係から,情報共有の難しさがあり,災害時要援護者支援のための情報共有を促進する方法について,活発な議論がされました。弁護士にとって,公助,自助,共助ということば自体,初めて聞いた方もいたと思いますが,災害発生直後から復旧,復興過程で必ず議論されるものであり,被災者に対する有効な支援策を講じるうえにその連携は不可欠なものです。

 続いて共助における弁護士の役割について,日弁連の取組,兵庫県,新潟県弁護士会の各取組が紹介され,さらに共助を担う弁護士の役割についての議論となりました。各パネリストから弁護士に対する強い期待のことばを受け,決意表明ともいえる渥美利之副委員長の総括,髙井委員長のあいさつでシンポジウムを終えました。

 東京弁護士会が担当会ということで,慌ただしく準備を行って参りましたが,実行委員のみなさまのご協力に深く感謝し,報告とさせていただきます。

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