関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

シンポジウム

平成22年度 労働と貧困 -今日の働き方と社会保障-

埼玉弁護士会副会長 飯塚肇

 9月25日,埼玉県さいたま市の浦和ロイヤルパインズホテルにおいて,平成22年度関東弁護士会連合会シンポジウムが開催され,「労働と貧困―今日の働き方と社会保障―」をテーマに,現場からの報告とパネルディスカッションが行われました。

 現場からの報告では,まず,長期間,派遣社員・期間工として勤務した会社から雇止めをされたため,訴訟を提起した非正規労働者の方から,非正規労働の実態,雇止め後の生活状況等について切実な報告がありました。

 次に,生活保護申請に関し,訴訟(新宿七夕訴訟)を提起して争っている当事者,支援者,弁護団の方から,生活保護申請に対する行政の対応の実態(「生活保護の水際作戦」)が明らかにされました。

 次に,NPO法人ほっとポット副代表宮澤進氏から,被疑者・被告人緊急一時シェルターについての報告がありました。近時,弁護士からの依頼が急増していること,釈放後の緊急一時シェルターの提供などが再犯を防ぐ大きな力となっていることが印象的でした。

 パネルディスカッションでは,都留文科大学教授後藤道夫氏が,直接の,期限の定めのない,フルタイムの雇用を促進すべきであると主張されました。独立行政法人労働政策研究・研修機構統括研究員濱口桂一郎氏は,均等待遇を徹底すること及び賃金以外のセーフティネット(社会保障)が重要であると指摘されました。首都圏青年ユニオン書記長河添誠氏は,派遣労働者が使用者に対して声を上げる機会がないこと等,非正規労働の問題点を指摘されました。NPO法人ほっとポット代表・反貧困ネットワーク埼玉代表藤田孝典氏は,失業保険のベースの長期化,離職理由による区別の撤廃等,失業保険の改善を主張されました。

 パネルディスカッションの後,シンポジウムの総括として,髙木太郎平成22年度シンポジウム委員会委員長(埼玉弁護士会)が,労働分野については,労働者派遣法の抜本的改正が必要であること,社会保障分野については,健康で文化的な最低限度の生活保障を実現できるよう,生活保護の給付水準を引き上げる必要があること等を指摘するとともに,高齢者の貧困,障害者の貧困,子どもの貧困を改善するための方策についての提言を行いました。

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